frower2000年  10月のフィールドノートから
10月4日(水)晴 名瀬市古見方
 9月の後半は東京とオーストラリアに行っており、留守にしていたために久しぶりの奄美大島である。
アカハラダカの渡りを十分に見ることができずに終わってしまい残念に思っていると、すでにサシバが
渡ってきている。もう10月だもんなあ。
 小湊のつきあたりのガジュマルの木が賑わっている。葉陰に隠れてなかなか正体がわからないが、出
てきた出てきた! コムクドリの群れだ。100羽はいるだろう。秋の渡りの最中、ひとときの休養。
 大川の堤防を車を走らせていると、川の中にバンの幼鳥を発見。それを観察していると、背後に動く
ものが! リュウキュウヨシゴイではないか。メスのようだ。いつもは人の気配に敏感な鳥なのに、
今日はこちらに気づいてないようだ。ビデオを回しながら観察。


10月10日(火)晴 龍郷町浦
 先日秋名でコアオアシシギを観察していると、地元のおじさんが近づいてきて話しかけられた。
「お兄ちゃん、シラサギ見るんだったら、もっといい場所があるよ」とのこと。内心では(コサギでは
なくてコアオアシシギを見てるんだけど)と思いながらも話を聞いていると、龍南中学校から反対方向
に入ったあたりに池があって、サギが朝そこに集まるらしい。なんと親切なことに地図まで描いてくれ
たのだ。
 ひとさまの好意を無駄にするのも悪かろうと、今朝やってきたのだが、どこにもサギなんていやしな
い。ガセネタかと思いながら周りを見ると、モズのメスやエゾビタキを発見。このところ毎日のように
エゾビタキに出会っている。ヒタキの仲間はとても好きだ。奄美では夏、オオルリやコサメビタキがい
ないので、ヒタキ禁断症に陥りつつあったボクとしてはしごく満足である。
 と、池の向こうのリュウキュウマツの木陰に動く影が。双眼鏡でのぞくと、なんとアカガシラサギで
はないか。冬羽でしかも2羽。瓢箪から駒というか、棚から牡丹餅というか…、ともあれ親切なおじさ
んに感謝。

▲リュウキュウマツの木陰で休むアカガシラサギ



10月20日(金)晴 中央林道(三太郎峠から金作原)
 夜の林道は楽しい。アマミノクロウサギなんか何度見ても飽きない。悔しいのは、いつもひとりで入
るので、なかなかビデオ撮影ができないこと。発見して、車を止めて、カメラを構えて…なんてことを
してるうちに、相当のろまなクロウサギでも脇の茂みに逃げてしまうのだ。
 今晩こそは何とか撮影したいと気合を入れて臨んだが、こういうときはかえって出てこない。でも、
オスのリュウキュウイノシシや美しいアカマタも見れたし、ぼちぼち帰ろうかと荒れた林道を走らせて
いると、ようやくクロウサギのお出まし。しかも道路の真中に立ちすくんだまま、ぴくりとも動こうと
しない。願ってもないチャンス到来。おずおずとビデオカメラを構え、わずかな時間ながら撮影成功で
ある。バンザイ!
 帰路を意気揚揚と引き上げていると、今度は道を横切る長い影。ハブだ。こいつも撮影してなかった
ので、急いで車を降り、近づいて再びカメラを構える。しっかり撮れたと喜んだのはいいが、よく考え
たらかなり無茶な行動である。 ひとり暮らしのわが身、いつの夜か人知れず林道の露と散らん。それ
もまたよし。

▲ようやく撮影成功のアマミノクロウサギ



10月30日(月)曇 笠利町大瀬海岸
 大瀬海岸の入り口でハクセキレイ発見。この10日間で随分増えてきた気がする。しかしハクセキ
レイが冬鳥とは意外であった。福岡でも東京でも、年中見かける最も普通のセキレイなのだから。
そういえば、あるときデンマークから来たバードウォッチャーに「セグロセキレイはどこに行けば
見れるか?」と聞かれ、驚いたことがある。本土ではごく普通のこのセキレイ、日本特産種なので
外国人にとっては貴重な鳥らしい。そういえば、奄美でも珍鳥扱いだもんな。
 満潮と干潮の間のちょうどよい時間帯、海岸にはシギチの姿がそこらここらに見える。トウネン、
ハマシギ、キョウジョ、ソリハシ、キアシ、アオアシ、イソシギ…とフィールドスコープを動かし
ていると、ひらひら飛ぶ白い鳥が視野に入ってきた。10月も終わりというのにコアジサシとはさす
が南国。
 かなたの岩の上に小鳥のシルエットを見つけ、スコープでのぞくが、いかんせん逆光でしかも遠
い。頭を悩ましていると、くだんの鳥が飛び立った。岩の下にもいたらしく、2羽で飛んでいくその
姿はまさにタヒバリ。しかし、鳴き声が違う。タヒバリはピッピッだが、こいつはジェッジェッと
鳴きながら去っていったのだ。マミジロタヒバリ? ひょっとするとコマミジロ! と思うが後の
祭り。二度と見つからず、フィールドノートには「タヒバリSP 2」と記す。


フィールドノート トップへ