第30回オオトラツグミ一斉調査について
〜奄美中央林道で87羽、全域では210羽確認〜

 1994年から奄美野鳥の会が中心となり、島内外の多くのボランティア調査員の方々のご協力のもと進めてきたオオトラ
ツグミ一斉調査は、2023年3月で30回目(30年目)を迎えました。昨年に引き続き、奄美中央林道を中心とした一斉調査
を実施し、補足調査は主要な林道に限って実施することで、可能な限り調査精度を上げることに努めました。また、今
後生息域を広げる可能性も考えられることから、今年も引き続き北部の笠利町喜瀬地区や土浜地区などでも実施しました。
さらに今後生息域を広げる可能性も考えられる加計呂麻島の一部でもICレコーダーによる調査を実施しました。
 第30回オオトラツグミ一斉調査は、3月19日(日)に奄美中央林道全域のほか、住用ダム線、油井岳林道などで実施しま
した。調査には、一斉調査の一日だけで118名のボランティア調査員の方々の参加をいただきました。この19日の一斉調査
の結果では、オオトラツグミのさえずり個体数113羽(うち中央林道は87羽)を確認することができました。
 第30回一斉調査と補足調査(ICレコーダーにより調査を含む)を合わせたさえずり個体の総数は、第29回の252羽(のべ
調査地点数120)より42羽少ない、210羽(のべ調査地点数115)を確認しました。今年は調査地点が5地点少なかったこと
などもあって、昨年より42羽少なくなりましたが、この数値は単年度のもので、個体数の増加傾向に大きく変化をもたらす
ほどではない範囲内と思われます。
 長年にわたり継続調査している奄美中央林道でみると、今回はこれまでで最も多かった昨年の108羽より21羽少ない87羽
が記録されました。この数字は一時的な減少と思われますが、できるだけ今後とも調査を継続して、個体数を把握していく
ことが重要です。
 補足調査では、昨年5羽が確認された市理原では、今年も5地点の調査により、5羽のさえずり個体が記録され、定着傾向
がうかがえました。
 今年も、多くのみなさま方のご協力とご理解があって、無事に30回目の調査を終えることができました。ボランティア調
査員として調査に参加されたみなさま、ご支援をいただきました行政や諸団体および個人の方々、調査資金にご寄付いただ
いたみなさま方に対し、改めて心から深く感謝いたします。 ご支援、ご協力ありがとうございました。

                              特定非営利活動法人 奄美野鳥の会
                                   オオトラツグミさえずり一斉調査実行委員会


●2023年(第30回)オオトラツグミさえずり個体調査結果

調査地   115箇所
確認羽数   210羽
調査員   185人(のべ人数)


●オオトラツグミのさえずり個体のセンサス結果の推移

奄美中央林道 その他 合 計
1990 24羽 1羽 25羽
1994 40羽 14羽 54羽
1995 18羽 14羽 32羽
1996 18羽 11羽 29羽
1997 27羽 14羽 41羽
1998 21羽 17羽 38羽
1999  調査方法変更 28羽 72羽
44羽
2000 25羽 36羽 61羽
2001 40羽 34羽 74羽
2002 40羽 37羽 77羽
2003 43羽 61羽 104羽
2004 42羽 84羽 126羽
2005 68羽 103羽 171羽
2006 47羽 118羽 165羽
2007 78羽 171羽 249羽
2008 47羽 180羽 227羽
2009 51羽 225羽 276羽
2010 32羽 262羽 294羽
2011 45羽 288羽 333羽
2012 59羽  296羽  355羽 
2013 96羽  426羽 522羽 
2014 85羽 調査方法変更 
215羽 300羽 
2015 73羽 241羽 314羽
2016 106羽  230羽 346羽
2017 54羽 191羽 245羽
 2018  79羽  234羽  313羽 
2019 102羽  279羽 381羽
2020  102羽  179羽  281羽 
2021  98羽  111羽  209羽 
2022   108羽 144羽  252羽 
2023  87羽  123羽  210羽 

「奄美中央林道」は、里林道、金作原林道を含む奄美市里(始点)から宇検村大畑出口(終点)までをいい、ルートセンサスによる調査。
1998年までは数日かけて調査をおこなったが、1999年以降は同日に一度で調査を行っている。
「その他」は、1990年と1996年は任意観察のみであるが、1994年と1995年、1997年以降は定点観察も行なった。1994年、1995年、1997年
以降に比べて、1996年の観察地点はかなり少なく、見落としが多い。2014年以降、奄美中央林道と一部の林道のみにしぼって調査。
*表は、Strix vol.15.1997「.オオトラツグミのさえずり個体のセンサス結果(1996年春)奄美野鳥の会」に1997年以降の結果を加えて作成。



 奄美中央林道での調査では、昨年より21羽減って87羽となった。過去最高だった昨年の108羽より21羽少
ないが、単年度の結果であり、これまでの平均的な数値よりは多いので、個体数の増加傾向に歯止めがかかっ
たとまではいえない。全体の確認数は210羽で、昨年の252羽より42羽減っているが、昨年よりのべ調査地点
が5地点少なかったことや、一昨年の209羽と羽と同レベルであることなどから、全体としても良好な個体数を
維持しているものと思われる。また、昨年5羽のさえずりが確認された龍郷町の市理原地区では、今年も5羽が
確認され、定着傾向がうかがえた。北部地域の喜瀬・土浜・鍋比地区や南部の加計呂麻島では、今年もさえず
り個体は確認されなかった。


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