10周年目となる今年のオオトラツグミ一斉調査へは延べ124名もの方々にボ ランティアとして参加いただきれ、湯湾岳や油井岳などのほか、奄美中央林 道42kmを一挙に調査することができました。 多くの皆様方のご協力に、心より感謝致します。 一斉調査実施日:2003年3月15日(土)・16日(日)・17日(月) 世界で奄美大島にのみ生息するオオトラツグミは、個体数が非常に少なく絶滅 が危ぶまれている大変貴重な野鳥です。主に原生林の谷間付近などに生息してい るのですが、そのくわしい生態などについては不明な点が多く、保護対策も充分 なされないまま、心配な状態が続いています。 私たち奄美野鳥の会では、このオオトラツグミの繁殖個体数の増減を毎年きち んと記録しておくために、1994年から毎年3月に奄美大島で一斉調査を行ってお り、今年は10周年を迎えました。一斉調査はオオトラツグミがさえずる夜明け前 の薄暗い時間帯に林道を歩きながら、さえずりを地図に記録していくもので、短 時間に多くの人の参加を必要とするものです。 今年も、環境省や鹿児島森林管理署の協賛、大島支庁農林課や奄美博物館、調 査林道の各関係市町村の後援をいただき、広く内外の方々に調査への協力を呼び かけさせていただきました。 そして、3月16日(日)に本調査(奄美中央林道全域)、15日(土)と17日(月) に補足調査を行いました。 15日の補足調査(湯湾岳や油井岳など)には21名、16日の本調査(奄美中央林 道全域)に93名、17日の補足調査(スタルマタ線と住用ダム線)に10名の方々が ボランティア調査員として参加して下さいました。3日間の合計で延べ124名のボ ランティア調査員の方々に参加していただいたことになります。お蔭様で無事一 斉調査を終えることができました。 オオトラツグミ一斉調査に参加・ご協力いただいた多くの方々に対し、心より 感謝いたします。ありがとうございました。お疲れさまでした。
今年(2003年)のオオトラツグミ一斉調査の結果をご報告します。
2003年調査結果(さえずり個体数) 3/15・3/16・3/17(3日間)
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さえずり個体数 (調査区間長km) |
調査員数 |
奄美中央林道※1 | 43(42) | 93 |
スタルマタ村道※1 | 5(5) | 6 |
油井岳※1 | 2(6) | 6 |
湯湾岳 | 6 | 4 |
網野子・節子 | 2 | 4 |
勝浦 | 3 | 1 |
朝戸・和瀬 | 4 | 2 |
安念勝 | 1 | 2 |
小湊安木屋場 | 2 | 2 |
住用ダム線 | 3 | 4 |
合 計
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71
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124 |
役勝※2 | 6 | 7 |
丸畑林道※2 | 4 | 3 |
金川岳※3 | 7 | 8 |
戸口※3 | 1 | 1 |
参考合計※4 | 89 | 143 |
奄美中央林道とは、里林道、金作原林道を含む名瀬市里から宇検村大畑出口まで。
※1 ルートセンサス法で調査。
※2 野鳥の会メンバーによる追加調査を3月23日に実施。
※3 野鳥の会メンバーによる追加調査を3月30日に実施。
※4 参考合計は2002年調査結果(下表)と比較するために追加で行った4地点の結果を加えた。
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<参考資料>
2002年調査結果(さえずり個体数) 3/16・3/17・3/18(3日間)
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さえずり個体数 (調査区間長km) |
調査員数 |
奄美中央林道※1 | 40(42) | 86 |
スタルマタ村道※1 | 1(5) | 7 |
油井岳※1 | 2(6) | 8 |
湯湾岳 | 4 | 5 |
網野子・節子 | 2 | 2 |
勝浦※2 | 2 | 2 |
朝戸・和瀬 | 4 | 2 |
安念勝 | 1 | 2 |
戸口 | 2 | 1 |
小湊安木屋場 | 1 | 1 |
住用ダム線 | 3 | 8 |
役勝 | 6 | 4 |
丸畑林道 | 5 | 3 |
合 計
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77
|
145 |
奄美中央林道は(名瀬市里から宇検村大畑出口まで。里林道、金作原林道を含む)
※1 ルートセンサス法で調査。 ※2 今回が初めての調査
これまでの、オオトラツグミのさえずり個体のセンサス結果
表1.里・金作原地区および神屋地区のルートセンサス結果 (
)内は調査区間長(km)
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地区/年 1990 1994 1995 1996 1997
1998
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里・金作原 6( 9) 16(12) 9(14) 7( 8) 10(12)
7(18)
神 屋 18(11) 21(12) 7( 9) 11(10)
17(14) 14(26)
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地区/年 1999 2000 2001 2002 2003
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奄美中央林道(全域) 44(42) 25(42) 40(42) 40(42) 43(42)
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1990-1995は、石田ら1995から抜粋
奄美中央林道(全域)とは、名瀬市里(始点)から宇検村大畑出口(終点)までをいい、
里林道、金作原林道を含み、1999以降は全域を調査した。
表2.ルートセンサス(奄美中央林道)および定点観察・任意観察等による
オオトラツグミのさえずり個体数
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90 | 94 | 95 | 96 | 97 | 98 | 99 | 00 | 01 | 02 | 03 |
ルートセンサス (奄美中央林道) |
24 | 40 | 18 | 18 | 27 | 21 | 44 |
25
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40
|
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43 |
その他の観察 | 1 | 14 | 14 | 11 | 14 | 17 |
28
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36 | 34 | 43 | 61 |
合 計
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25 | 54 | 32 | 29 | 41 | 38 | 72 | 61 | 74 | 83 | 104 |
「その他の観察」は、1990年と1996年は任意観察のみであるが、1994年と1995年、1997年
以降は定点観察も行った。1994年、1995年、1997年以降にくらべて、1996年の観察地点は
かなり少なく、見落としが多い。(1990-1995は、石田ほか1995から抜粋)
1998年以前は奄美中央林道の里・金作原地区と神屋地区のみの調査であったが、1999年以
降は奄美中央林道全域を調査した。
※表1.表2.は、Strix vol.15.1997.オオトラツグミのさえずり個体のセンサス結果(1996年春).奄
美野鳥の会. に1997年以降の調査結果を加えて作成。