飛蚊症・光視症
Floaters,Photopsia
池田恒彦  大阪医科大学教授・眼科
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T.飛蚊症
診断のチェックポイント
 飛蚊症は硝子体腔内の混濁が網膜上に投影されるために生じる自覚症状で,一般に明るいところで自覚症状が強くなり,
眼球運動とともに像が揺れ動くのが特徴である.飛蚊症のタイプは,通常硝子体ゲルの状態と密接な関係があり,
硝子体融解のみによる飛蚊症と,後部硝子体剥離による飛蚊症とを区別する必要がある.

症候の診かた
【1】硝子体は,若年者では均一のゲル状構造であるが,加齢とともにゲル中に液化した部分と濃縮されたコラーゲン線維が増加してくる(図1)
このような軽度の硝子体混濁は病的意義に乏しく,一般に生理的飛蚊症と呼ばれている.
飛蚊症を訴える患者の大半はこの生理的飛蚊症であり
,患者は「クモの巣」,「ほこり」,「糸くず」のような物が見えると表現することが多い.
発症時期は明確でなく,どちらの眼球で自覚するかを明確に返答できない場合も多い.
【2】硝子体の液化変性が加齢とともにさらに進行し,硝子体ゲルが収縮すると後部硝子体剥離が生じる.
特に硝子体ゲル中に大きな液化部分をもつ例では,液化硝子体が後方へ移動するとともに硝子体ゲルは急激な虚脱状態に陥る.
いわゆる虚脱を伴う急性後部硝子体剥離である(図2).このような後部硝子体剥離眼では,患者は発症時期や左右眼のいずれかを明確に指摘し,
形もはっきりと表現できることが多い.

合併症・続発症の診断
 急性後部硝子体剥離眼では5〜6%に網膜裂孔形成(図3)を伴い,裂孔原性網膜剥離⇒(図4)に進行することもある.
急性後部硝子体剥離は一般に50〜60歳前後の比較的高齢者に生じることが多く,これは網膜剥離患者の年齢分布における高年者のピークに一致する.
この年齢で急激に生じる飛蚊症は,裂孔原性網膜剥離の前駆症状として重要であり,眼科医による眼底精査が必要である.

U.光視症
診断のチェックポイント
 光視症は,硝子体網膜癒着部位で硝子体が網膜を牽引することにより生じる自覚症状で,飛蚊症と同様に急性後部硝子体剥離眼でみられることが多い.
症状の特徴としては,暗所で増強する,閉瞼時にも自覚する,眼球運動によって誘発されるなどがある.
中枢性の光視症との鑑別が必要であるが,どちらの眼で自覚するかを認識でき,頭痛や意識障害,神経症状などを伴っていなければ通常末梢性と判断してよい
.逆に,左右眼の区別ができず,上述するような症状が随伴しており,症状発現の間隔が短くなってくるものは中枢性の可能性がある.
しかし,中枢性光視症の頻度は極めて少ない.

症候の診かた
 光視症の自覚する部位から,網膜硝子体牽引の状態をある程度類推することができる.一般に光視症を耳側に認める場合には,
後部硝子体剥離が鼻側にまで拡大している.視野全体に光視症を認める場合は,近い将来後部硝子体剥離が生じる状態であることが多い.
耳側以外の周辺部に光視症を認める場合は,光視と対側の部位に局所性網膜硝子体牽引があることが多い.光視症が軽快するのは,
硝子体網膜癒着が解離したか,あるいは癒着部位の網膜が蓋として遊離したことによると考えられる.
いずれにしても,本症候は裂孔原性網膜剥離の前駆症状の1つなので,眼科医による眼底検査を受けることが望ましい.

今日の診療Vol.13 (C)2003 IGAKU-SHOIN Tokyo