KUME CLINIC 産科・婦人科 久米クリニック
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● 2005年11月4日 橋本先生講演会まとめ

1.母子異室制から母子同室制へ

新生児室は、日本で作ったと言うより、戦争に負けアメリカが入ってきて、アメリカが日本の産婦人科の病院を見て「これはいけない!赤ちゃんは専門家が観なければ」という事で作らせたのです。ところが、赤ちゃんの事故や院内感染は、ほとんど産科の新生児室で出ています。
感染症等も含めて、産科の新生児室よりも赤ちゃんを母親と一緒に置いておく方が有利だという事が分かってきました。それで母子同室が始められました。残念なのは、今テレビを見ていても、赤ちゃんが生まれて「おめでとう!」という、そういう状況で出てくる風景は、まだ新生児室ですね。お母さんの横に赤ちゃんがいるというドラマは、なかなか出てこない…だから、まだ母子同室が一般的という事ではないのです。けれど、ちゃんと勉強し理解している先生の所は生まれてすぐから赤ちゃんと一緒なのです。

2.お母さんへの母性愛ホルモン(プロラクチン・オキシトシン)赤ちゃんへのカテコラミンは神様からの贈り物

カテコラミンというホルモンは赤ちゃんを目覚めさせます。神経・5感を敏感にして赤ちゃんを目覚めさせる作用があります。この作用時間は、約2時間です。この2時間は今「新生児覚醒期」と呼ばれています。この時間が、もの凄く大事だという事が生理学的に言われ始めました。
オギャ〜ッと言ったら、臍の緒が付いたままでもいいですから、お母さんに抱かせてあげます。赤ちゃんは目覚めていますから、お母さんの声、お母さんの顔、そして肌のぬくもりや匂い…これらが分かるでしょう。2時間で赤ちゃんがお母さんをインプットしていくのですね。この様な生理を神様が与えてくれていますから、出生後2時間は極めて大事な意味を持っています。それで早く抱かせましょうという風になってきているのです。昔は赤ちゃんが生まれたら、ほとんど一緒にさせていました。病院分娩が主流になり、医学的管理という事になってから新生児室が出来ていったのですが、また元に戻ってきました。やはり、そういう形(お母さんと赤ちゃんが一緒にいる)に戻していこうという風になったからです。究極の育児の原点は生後2時間です。それ位、大事な時間なのですね。
一方お母さんにとって…お母さんが乳首を吸われる(吸啜刺激…乳首への刺激)と、お母さんの脳下垂体が刺激され脳下垂体からホルモンが分泌されます。プロラクチンとオキシトシンです。
プロラクチンは「催乳ホルモン」オキシトシンは「射乳ホルモン」といいます。この2つ、実は「母性愛ホルモン」とも言うのです。脳の内側視索前野という所…ここは母性中枢です。プロラクチンとオキシトシンは、そこを刺激します。そして、この1つの生理が女性を母親に変えていっているのです。乳首を吸われるとプロラクチンとオキシトシンが分泌され、プロラクチンは、母乳をどんどん生産する。そしてオキシトシンは生産したおっぱいを乳首から押し出す(射乳する)。更に2つとも母性愛ホルモン…凄い事ですね。だから、お母さんっていうのは乳首を吸われる事により、おっぱいが出て可愛い赤ちゃんを守る…そういう意識が芽生えてくるのです。

3.自律授乳

自律授乳は赤ちゃんが欲しがる時に欲しがるだけ飲ませる…“母乳の場合”は、これが原則です。もしミルクの場合、これをそのまま当てはめたら、ほとんどの赤ちゃんは肥満になります。大人は食べ物を食べても腹8分という状態が分かりますね。けれど赤ちゃんは腹8分って分かりません。本当に赤ちゃんが欲しがるだけ飲ませていたら、それはオーバー。ガボガボ吐き出します。
ミルクは飲んで胃の中に入り、そこから出て行くのに、だいたい3時間かかります。だから3時間授乳が行われているのです。母乳は、だいたい2時間…2時間かからない位です。だから母乳の方が授乳回数が多くなるのは当たり前です。飲んだ量が少なければ、次は1時間も経たないうちに欲しがります。たくさん飲んだら3時間以上あくかも分かりません。育児書には3時間授乳と書かれていますが、これは“ミルクの場合”です。母乳は自律授乳です。だから母乳とミルクとでは、授乳の仕方や間隔が違うという事を覚えておいて下さい。

4.赤ちゃんの黄疸について

赤ちゃんの(生理的)黄疸は、だいたい2週間位でなくなっていきますが、それ以降も黄疸が続く場合を遷延性黄疸といいます。そこで黄疸の原因…感染症や、あと滅多に無い事ですが先天性胆道閉鎖等の有無が調べられます。黄疸が長引いている原因・疾患が無く、かつ母乳で育っている場合に母乳性黄疸が遷延性黄疸の中に含まれます。昔は黄疸が長引く場合、母乳を止めましょうという事が言われていましたが、母乳性黄疸であっても、ほとんど100%母乳を止める必要はありません。日本では母乳によって黄疸が出て、それにより赤ちゃんが脳障害で小児麻痺や脳性麻痺になったという報告はされていません。
母乳性黄疸であれば母乳を止めないといけない・脳障害になる等と聞き、もの凄く心配される方もおられます。それを無理に、大丈夫だから母乳を飲ませなさいと言っても、お母さんは凄く不安になります。この様な場合、1日でも構わないので休ませてあげた方が結果的に良い事があります。イライラしてストレスを抱く事により、かえって母乳が出なくなる事もあるからです。確かに1日休むと母乳性黄疸なので黄疸の値はパッと下がります。下がったところで、もう黄疸はよくなったから母乳をあげていいですよと話します。これだけでもう、お母さんは安心します。黄疸の色素は便に出て行くから、どんどん飲ませていいよーと話します。母乳性黄疸で脳障害になる事は、まず無いです。脳障害は早発黄疸(出生後、間もない時期の強い黄疸)で発症します。

5.「母乳栄養」と「母乳育児」

昔は母乳「栄養」と言われており、母乳はミルクと対比されていました。ミルクよりも免疫が入っている・安上がりだ・温度が適当だ・消化が良い…この様にミルクと比較して、ものが言われていました。今「母乳栄養」という言葉は、ほとんど使われなくなりました。母乳「栄養」ではなく母乳「育児」ですね。おっぱいは、栄養の問題ではなく育児の問題として考えられる時代に変わってきました。どういう事なのか…これも生理学的な事を理解したら分かります。
ここで哺乳という言葉と授乳という言葉の生理を、理解しておいて頂きたいのです。“哺乳”は赤ちゃんが飲む事で“授乳”は、お母さんが赤ちゃんに飲ませる(与える)事です。ただ一方的に栄養をやっている訳ではないのです。
赤ちゃんは、お腹がすくと空腹のストレスでイライラします。泣いたら、お母さんに抱かれますね。抱かれるだけで少し安心して落ち着きます。そして乳首に吸い付くのですが、哺乳瓶のゴム乳首の少なくとも2倍3倍の力を入れないと母乳は出てきません…凄く力が要るのです。吸っていると、赤ちゃんの口の中に安静ホルモン・消化ホルモン・鎮静ホルモンが分泌されます。この為、消化が良くなり、哺乳後は安らかに眠っていくのです。赤ちゃんは哺乳する事でストレスの状態から至福の状態へと変わっていっている事になりますね。
栄養だけならミルクでも構わないのです。何処がミルクと違うのかというのが、この生理なのです。この生理に関係するデータが1つ出ています。虐待の研究で出たデータです。虐待された子ども100人中、母乳で育てられた子どもは6人しかいなかったというものです。こういう生理を持ちながら0人にはならないという事は母乳だけでなく、他にも色々なストレスがあって虐待してしまうのでしょう…ですが100分の6は少ないですね。この生理に加え、授乳により赤ちゃんを可愛いと思う母性愛ホルモンが涌いてくるから、いじめよう等という気持ちになりにくい。まずは自分の産んだ子どもをおっぱいで育てましょう・乳首を吸わせましょうという事です。

6.乳児期の育児

お母さんが赤ちゃん抱いて、母乳を飲ませます。乳児期の育児は、これだけでいいのです。いわゆる母子像…お母さんが赤ちゃんに母乳をあげる…乳児期の育児は、この母子像に尽きます。お母さんは赤ちゃんの目を見て語りかけながら母乳を飲ませる。乳児期の育児は抱いて語りかけて、おっぱい…この3つだけ、しっかりやっておけばいいのです。“抱く”は英語でhug(ハグ)といいます。
“語りかける”はマザリースです。そして、おっぱい。抱いたり語りかけたりするのが、いかに重要かというのは脳生理学的に明らかにされています。Hug(ハグ)…神経を伸ばす作用があります。赤ちゃんの脳神経をグーッと伸ばしていきます。マザリースには、この伸びていく神経の間の連絡網を密に作っていく作用があります。これは専門用語で言うとシナプスとか樹状突起といいます…神経と神経の密な連絡網です。この連絡網は情緒・感性を豊かにします。感性・情緒豊かな子どもに育ちます。事件を起こす子どもは割と成績は優秀だったのに等と言われます。連絡網は伸びていても少なければキレやすい。感情豊かでなく我慢できない傾向なのが脳生理学的にも言われています。乳児期を過ぎたら悪戯したり外で遊んだり自然の中で動物と戯れたりしますが、そういう遊びを通して連絡網が形成されていきます。ですから乳児期はこの3つが非常に重要だという事です。この3つを乳児期にやってどうなるか…難しい言葉で言うと“基本的信頼関係”が出来ます。違う言葉で言うと心の故郷。その子どもにとって心の故郷が出来る…船で言ったら母港です。母港があるという事は、いつでも何があっても戻れる場所があるという事です。そういうものを抱いて語りかけて、おっぱいによって築いていく訳です。だから今の子ども達の事件を見ても、ほとんどが乳児期の育児まで辿り着いてくるんですよ。基本的信頼関係が構築されていないのがほとんどです。そういう意味で母乳「育児」というものを理解してほしいですね。もう栄養の問題じゃありませんよという事です。

7.離乳準備食

乳児期に保健所で健診がありますが、その中の3〜4か月健診では発達チェック(頸が据わったか等々)と栄養学的な指導が行われていますね。栄養学的な指導というのは離乳準備食についてです。「5か月頃から離乳食が始まりますから離乳準備食として果汁の与え方を聞いて帰って下さい」という指導が行われてきました。ですが、もう果汁はやってはいけないという風に変わってきているのです。今は必要無いものですが昔は必要だったのです。日本にミルクが入ってきて50〜60年。戦後は、お母さんの栄養不良により赤ちゃんも痩せ細って死亡率が凄く高い時でした。その時に、栄養をつける為にミルクをどんどん飲ませていました。体重は増えていくのですがミルクを飲んで育っていた赤ちゃんの中に突然、下血したり鼻血が出たりする例が出てきました。原因はビタミンC欠乏。ミルク中のビタミン不足の為に起こったのです。では、どうやってビタミンを補うかと考えた結果として始められたのが離乳準備食です。ビタミンは果汁に多く含まれているから果汁を与えましょうという訳です。でも、今のミルクにはビタミンは充分入っていますから何も必要ありません。与えたら何か悪い事があるのかという事ですが、果汁は母乳の10〜15倍位甘く薄めても甘味があります。結果的に、まず虫歯と関連してきます。そして甘いものが好きになります…生活習慣病の出発点です。もう1つ結局は育児の中で余分な手間が増える事になるのです。林檎を買ってきて皮をむき、ミキサーに入れ、濾して搾って哺乳瓶に入れ飲ませ、最後は洗わないといけない…これは凄い労力です。生まれて6か月間は母乳以外のものは何も与えなくていいのです。お風呂上がりの白湯も必要ありません。6か月位経ち、赤ちゃんが親の食べている物を見て欲しがり出して涎をたらしたり手を伸ばしてくる…そんな時に始めていけばいいのです。離乳食なんてキチッとした物を作らなくても、お母さんが食べている物を、チョット薄味にして潰す程度で構いません。初めはスプーン1杯から始めていけばいいのですから。
栄養指導では非常に小さい指導がなされている様ですが、いかにおいしく楽しく食べるかの方が大事です。母乳の分泌も、その方が良くなります。食べたくない様な物を食べていても母乳は出てきませんよ。

8.「断乳」と「卒乳」

お母さん達が1歳健診に行くと保健師さんから叱られる事がある様です。特に1歳半位の子供を持つお母さんに「まだ母乳を飲ませているの?

@甘えん坊になりますよ
A自立しませんよ
B虫歯になりますよ
C1歳の母乳なんて薄くなって栄養が無いですよ

等と言うそうです。これらは全て間違いです。
@甘えん坊になるA自立しない→完璧な間違いです。じっくり乳児期に甘えさせられて甘えの感情を満たしてもらった赤ちゃんほど後で自立していきます。基本的信頼関係が構築されている訳ですから何処に行っても何があっても、いつでも帰って来れるし自立していく。帰る所が無い子どもほどイライラして不安になって自立できません。
B母乳をやっていると虫歯になる→虫歯は母乳虫歯と哺乳瓶虫歯という2つに分けられています。断然、哺乳瓶虫歯の方が多いです。母乳とミルクを置いて虫歯菌を培養すると母乳の方は虫歯菌が減って、ミルクの方は繁殖します。いかに母乳の方が虫歯菌を抑えるかというのが分かりました。母乳の中の免疫とかラクトフェリン、蛋白に菌を抑える作用があるのです。確かに、母乳を飲んでいる赤ちゃんにも虫歯は出来ます。母乳虫歯は、ほとんど前歯の裏側に出来ます。これは添い寝をしながら乳首を吸い、そのまま眠る事で、ちょうど前歯の裏側に乳汁が溜まる為です。哺乳瓶虫歯は何処にでも出来ます。予防はどうしたらいいか…添い寝して飲むのは全く構いません。赤ちゃんを起こして、わざわざ歯ブラシで磨かなくてもガーゼを指に巻いて拭いてやるだけで効果はあります。こうしておけば母乳を飲ませていても全く問題ありません。
C栄養が薄くなる→全くの間違いで1か月の母乳と1歳の母乳のカロリーは全く同じです。成分的に1歳の子に合った母乳の成分に変わっています。母乳の止め方まで教えられる事もあります。例えば、おっぱいに「へのへのもへ」等と書いたり、あと乳首に塩を塗って嫌がらせて止めさせようとしたり…これはもう犯罪に等しいです。ここで、その子の人生を左右する可能性もあるのです。せっかく乳児期に、お母さんと赤ちゃんの基本的信頼関係・絆が出来てきたのに最後の最後で赤ちゃんを嫌がらせて離そうとする…これは最後の裏切り行為に等しく、どんでん返しです。ですから、これだけはしない様にして下さい。今は「断乳」という言葉から「自然卒乳」という呼び方に変わってきました。せっかく乳児期に出来た、お母さんと赤ちゃんとの基本的信頼関係・絆を、断乳でどんでん返しする様な事だけはしないでほしいものです。おっぱいから離れる時期は、お母さんでなく赤ちゃんが決める事です。「もう満たされたよ」という時に自分から離れていきます。そして、これが自立なのです。母乳は2歳までどうぞというのが世界的な流れです。2歳以降でも欲しがるならば、どうぞ続けて下さい。早く止めないといけないという様な言い方ではなくて赤ちゃんが、おっぱいから自然に離れるのを待ちましょう…それが自立の出発点という事です。

9.母乳を止める時

卒乳しても4歳位まで飲んでいる子供は結構います。まだ授乳をしているお母さんが妊娠したとします。まだ産科の先生の中には妊娠しているから母乳は止めなさいと言う人がいます。今は次の子を妊娠しても授乳は続けていいですよという事になっています。ただ流産の徴候のある場合は例外です。乳首を吸われるとオキシトシンが出てくると話しましたが、オキシトシンには射乳作用と“子宮収縮作用”があります。それによって流産の方向に動く事がある。ですから流産傾向が出てきた時には授乳を止めてもらう事がありますが、そういう徴候が無ければ普通に母乳を飲ませてもいい訳です。
おっぱい止めないといけないという事での問題が、いくつかあります。
風邪をひいた時に内科で風邪薬をもらいますね。この時まだ多くの先生は、風邪薬を出しましたので少し授乳は止めましょうと言いますが、その必要はありません。実は、お母さんが風邪をひいたら逆に母乳を飲ませた方がいいのです。お母さんが風邪をひいてウイルス(抗原)が体内に入ると、それに対する免疫(抗体)が出来ます。その免疫(抗体)が母乳を通して赤ちゃんに移行していきます。風邪のウイルス(抗原)に対する免疫(抗体)をもらう訳ですから風邪の予防注射になり、かかっても軽くてすみます。ですから風邪にかかっても飲ませていい訳です。
授乳を止めなければいけない薬は本当に極々わずかです。お母さんが抗癌剤を投与される時には、やはり授乳は出来なくなります。あとは抗精神剤の強い種類のものを服用している場合です。しかし抗精神剤は、授乳していても服用できる薬がほとんどですから、もし強いものなら替えてもらう事で普通に飲めます。だから薬は、ほとんど大丈夫です。抗生物質も大丈夫です。
どうしても心配なら、薬の血中濃度のピークは内服後30〜60分なので、この時期を避ければ安全です。血中濃度が上がる前=薬を飲んだ直後に授乳する事です。そうすると母乳中には全然出てきません。それか授乳後に薬を飲む事です。前後どちらかに飲めばピークの時間は避けられる訳です。

育児をしている人に頭から「それは駄目!」と言うのは止めた方がいいでしょう。お母さんは、そう思ってやっている訳ですから。突然そういう言い方をされると、お母さん達は逆にショックを受ける事があります。一言で言うと育児は冒険ですよね。マニュアルは無い、“自分の”育児です。だからチョット外れていても、お母さんが楽しく育児をしていれば、それをサポートすればいいのです。その中で正しい知識を少しずつ教えて、ゆっくり正しい道に戻れる様に援助する。これが凄く大事です。いかに優しく、お母さんがストレスを感じない様にサポートしていくか。だって今、子どもを産んでいる方の半分は赤ちゃんを抱いてあやした事の無い女性なのですから…。


Q&A 当院院長の久米浩太がみなさんの質問にわかりやすく親切にお答えします。

 

親切でわかりやすく

Q赤ちゃんがまだのみたがっている、と人工乳を足してしまうお母さんがとても多いです。

「母乳不足感」と本当の「母乳不足」の見分け方は?

A

●いくつかの思い違いと情報不足

赤ちゃんはおっぱいを飲んだら寝てくれる?
 まず母親たち、特に初めての子育ての方では、「赤ちゃんはおっぱいを飲んだら寝てくれるもの」と思い込んでいて、寝てくれない、だからおっぱいが足りない、と結びつけてしまうようです。それまでの人生で子育てやおっぱいに出会う機会が少ないため、イメージとして「赤ちゃん=泣く⇒おっぱい⇒寝る」と一直線に結びついていて、「寝ない⇒泣く⇒おっぱいが足りない」と思うのでしょうね。生まれたてでも、もちろん月齢がすすめばすすむほど、お話をしたり、遊んだりする時間が多くなっていきます。おっぱいを飲んでも寝ないからといって、母乳不足とは限りません。

赤ちゃんが泣くのはどうして?
 母乳不足ではないかと不安になる、最も多い要因に、赤ちゃんの「泣き」があります。赤ちゃんはお腹がすいた時以外に、おむつが濡れたとき、不安なとき、寂しいとき、興奮したとき、お母さんに抱かれたいときなど、必ずしも母乳不足でないときにも泣きます。こういった場合は、おむつを調べ、抱っこして、あやしているだけでも泣きやみます。もしおっぱいを少し吸って静かになったのなら、足りなかったのではなく、安心したからなのでしょう。

赤ちゃんの吸啜反射
 
このような3ヶ月までの赤ちゃんに備わっている吸啜反射も、母親たちを混乱させている要因かもしれません。この反射は原始反射の一つで、赤ちゃんにとっては大切な機能の一つなのですが、おっぱいが終わったのに、例えば、おばあちゃんが哺乳びんをくわえさせると吸う、その結果、数10cc飲めた、だから「おっぱいが足りない」「出ていないのでは?」という不安を巻き起こす原因にもなっています。あらかじめ知識として伝えておけば、たぶんこのような間違いは起こらないでしょう。

母乳と人工乳の消化速度の差
 
知識と言えば、母乳と人工乳の消化速度(胃内排出時間)の違いがあげられます。母乳は約90分で、人工乳の3時間と比べて明らかに短く、それゆえ入院中3時間ごとの人工乳授乳方式をプログラムされた母親たちが、退院後、母乳育児に挑戦するとき、この消化速度の違いによる赤ちゃんの頻回の哺乳要求、泣きは、母乳不足感をあおることにもなります。

赤ちゃんの月齢、タイプによっても
 赤ちゃんには、成長期といって、急速に体重が増加する時期(出生体重に戻った頃、生後3〜6週頃、3ヶ月頃)があり、この時期には赤ちゃんの要求量が母乳分泌量を上回り、頻繁にほしがります。泣きに合わせて、頻回に吸わせていれば、分泌量が増え、赤ちゃんはみるみる大きくなっていきます。赤ちゃんのタイプにもよります。食欲旺盛な子、1回量は少ないが頻回にほしがる子、おっぱいを楽しむ子、母親に抱かれるのが好きな子などは、母親たちに「おっぱいが足りないのでは?」と錯覚させてしまうことが多いようです。

●おっぱいは吸わせるからでる
 以前あったおっぱいの張りがなくなったので、母乳分泌が低下したと心配される場合もありますが、母乳育児の初期の段階が過ぎ、需要と供給のバランスが安定してくるとあまり張らなくなり、吸わせるたびに母乳が出るというパターンになります。
 母乳分泌のメカニズムから言えば、「出るから吸わせる」のではなく、「吸わせるから出る」のです。言い換えれば、吸うことで母乳分泌が増えていくということは、常に誰でも「母乳不足」である状態が生じているということです。生まれたての子、1ヶ月の子、3ヶ月の子の必要量に差があるにもかかわらず、もし最初から分泌が多ければ、飲み残した乳汁のため乳腺炎を起こしてしまいます。少し足りないことが自然の摂理なのです。そしてその分泌量アップのギアチェンジのきっかけとなるのが、赤ちゃんの要求、啼泣や吸啜なのです。

●体重増加がよくない場合は授乳回数を増やす
 でも実際上は、さまざまな事情のため授乳機会が少なくなり、結果的に母乳分泌不足となることがあります。こういった場合、まず授乳回数を増やしてみます。赤ちゃんがしっかりおっぱいを吸えているかどうかも確認します。お母さんの体と心の栄養も大切です。こうして2,3日もすれば、必ず母乳分泌は増加します。1日6〜8枚おむつを替えるようになれば、もう大丈夫、足りています。赤ちゃんの体重増加が1日当たり18〜30gとか、1週で100〜200gとかの数字も出されています。個人差やその日によっても差があるのですが、参考値となるでしょう。

Q赤ちゃんの皮膚についてお聞きしたいのですが、手足だけでなくお腹も薄皮がはがれるみたいにひび割れていて、見ていて痛々しいのですがほっておいても大丈夫でしょうか?心配です。おしえてください。お願いします。

A

生理的落屑(らくせつ)で心配いりません。

ご質問の内容から落屑と思われます。皮膚の新陳代謝が盛んになったためのもので、毛が抜けてはえかわるのと同じように、一皮むければ新しいきれいな皮膚があらわれますので心配要りません。慌てて薬を塗ったり、逆に無理に皮をむこうとしないように。そのまま放っておけばしだいにきれいな皮膚に変わっていきます。入浴ももちろん毎日させて、清潔にしてあげてください。(橋本武夫先生著 赤ちゃん健康110番 参照)

 
Q 分娩に主人も立合ってよろしいのでしょうか?

A

もちろんかまいません。


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