予防接種を受ける必要があるか?

 予防接種によって予防すべき病気は次の3つのグループに分類することができます.

第1:多くの人にとって致死的な,あるいは重い後遺症を残す危険性のある恐怖の感染症,たとえば痘そう,ポリオ,日本脳炎,破傷風など.

第2:感染率も高く,重症化の傾向も強く,現在の医療環境でさえまれに死亡する例もある重要な感染症,たとえば,百日咳,結核,麻疹,インフルエンザなど.

第3:通常に経過すれば,過半数の例で重症化はないが,まれに深刻な合併症などを伴うことがある病気,たとえば,風疹(妊娠中にかかった場合の胎児の先天性風疹症候群),おたふくかぜ(無菌性髄膜炎,不妊症),水痘(肺炎,脳炎,帯状疱疹),B型肝炎(劇症肝炎,肝癌)などです.

 しかし,現在の我が国の状況は,ワクチンの改良も進み,接種の機会にも恵まれているにもかかわらず,ワクチンの実施率は低迷しています.これは平成6年に予防接種法が改正され,「接種義務」が「接種努力義務(わかりやすく言うと希望者のみ)」に変更されたためです.ワクチン接種による副作用等で重大な問題が生じたとしても国としては,いっさい責任は取りたくないので自分や保護者の責任で受けるように,という意味が込められているものと思われます.

 はたしてこれで良いのでしょうか? 産科関係では,現在ほとんどの妊婦が風疹の抗体を持っています(風疹ウイルスに対する抵抗あり).しかし,平成6年に中学生への集団接種から小児への個別接種へと変更されたため,そろそろ風疹ワクチンを接種していない当時の中学生世代が出産期を迎えます.風疹の抗体を持たないまま妊娠し,妊娠中に風疹に感染する妊婦が増えることでしょう.風疹は症状がでないことがあるため感染に気付かなければ,そのまま先天性風疹症候群(目,耳,心臓の障害)の赤ちゃんを出産することになります.さて,これは風疹ワクチンの接種を受けなかった本人の責任になるのでしょうか? それとも親? 自治体? 国? ザ,ジャッジ!

もどる