妊娠中セックスは控えたほうがよいでしょうか?

 妊娠中の性行為が,実際にどの程度妊娠経過に悪影響があるのかに関して,現在まで種々の臨床的な研究がなされてきましたが,まだ明確な結論には達していません.その原因は,妊娠していない時と同様に,それぞれの夫婦間の性生活に関する情報を正確に聞き出すことが困難であること,また妊娠がそれぞれの夫婦間の性生活に与える影響がさまざまであることによるものと考えられています.

 しかしながら,性器の挿入を伴う性行為は,子宮の収縮を誘発することが知られていますし,また,精液中には早産や前期破水を誘発する物質が数多く含まれています.そして妊娠中の性行為で最も問題となることは,早産や前期破水の原因の多くの部分を占める絨毛膜羊膜炎が,性行為によってひき起こされている可能性が最も高いということです.したがって,妊娠中の性行為が胎児にとって良い環境を提供するものではないということは明らかでしょう.特に,切迫早産や頚管無力症などで,医師が安静を指示した場合は禁欲が必要です.また,乳頭刺激や性交によらないオルガズムも子宮収縮を誘発することが知られています.安静が必要と指示された場合は,これらも同様に控えましょう.

 一方,過度の禁欲がかえってストレスを生み,妊娠経過に悪影響を与えるとする報告もあります.ヒトの性行為は動物のそれと異なり,生殖の手段としてのみ存在するのではなく,夫婦間のコミュニケーションの手段としても存在するのも事実です.したがって,妊娠と判明した時点で,性行為によるコミュニケーションから,ふれあいによるコミュニケーションを夫婦間で考え実践していくべきではないでしょうか.むしろ,ふれあいによるコミュニケーションによってこそ妊婦に宿った新しい生命の成長や胎動を感じ,喜び合えることができるのではないでしょうか.

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