「おなかが小さい」と言われましたが,大丈夫でしょうか?

と心配する妊婦さんが時々来られます.

 妊娠した女性のおなかが大きいか小さいかは見た目の印象ではなかなかわかりません.着膨れしたり着やせする方がいらっしゃるように,実際は赤ちゃんもよく育っているのにおなかはあまり大きく見えない方もいらっしゃいます.一般に背の高い女性ではおなかがあまり大きく見えないものです.しかし,おなかの中の赤ちゃんの発育はよい場合が多いのです.

 妊婦健診では子宮底の長さ,つまり子宮底長を計測します.この子宮底長の計測値は子宮の大きさ,おなかの大きさを示すひとつのバロメーターになります.しかし,それをいうには同じ条件のもとで,同じ計測者が計測するのでなくては意味がありません.また1回の値のみをとりあげて,大きい,小さいの診断は出来ません.一定期間内での増加傾向をみて判断します.

 ですから,子宮底長の計測値がいつも正常より小さく,増加傾向も無いか少ない,特に妊娠30週以後に少ないというような時には胎児が少し小さいかもしれない,という疑いがもたれることがあります.実際に子宮が小さい場合は,胎児そのものが小さいか羊水が少ないかが考えられます.このような場合には,子宮底長の計測値だけでは胎児の発育の良否を診断することは出来ないので,超音波診断で胎児の大きさや体重の計測をしてもらったり,羊水量を計ってもらって胎児の発育を正確に診断してもらう必要があります.

 胎児に異常があって発育が悪いということもたまにはありますが,ほとんどは胎児に異常はなく,少し小さいという(正常で小さい)胎児です.胎盤のついている位置や大きさによっても小さい胎児になることもあります.大人でも大きい人,小さい人がいるように,生まれる時に正常でも小さい赤ちゃんもたくさんいます.おなかが小さく見えても赤ちゃんに異常が無ければそれでよいので,あまり心配しないことです.また,他の妊婦さんに「おなかが小さいですね」などと,軽率に言うのはやめましょう.

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