法律上の予防接種時期は?

 結核予防法は国民に定期健康診断を義務づけ,その中にツベルクリン検査も含まれます.BCG接種は本人あるいは保護者の接種に対する同意が必要なことは,他の予防接種と同様です.ツベルクリン検査は4歳に達するまで,さらに8歳に達する年度(小学校1年生および1年生時にBCGを接種した2年生),14歳に達する年度(中学校1年生および1年時にBCGを接種した2年生)にツベルクリン検査を行い,陰性者(発赤の長径が9mm以下,ただし1mm未満は四捨五入)に対してBCGを勧めています.表に示すように,予防接種法に定める定期接種対象の予防接種は予防接種施行令に基づいて行いますが,いずれも標準的な実施年齢が予防接種実施要項に示されています.

 予防接種は感染するよりも前に受けて意味があります.麻疹(はしか)に関しては米国では,小学校入学時に予防接種を受けた証明書が必要で,事実上義務化されたために,摂取率は95%以上になり,麻疹をほぼ押さえ込むことに成功しました.一方接種が義務化されていないわが国では,感染症サーベイランス事業で麻疹は年間少なくとも約2万人以上の麻疹患者発生が推測され,数十人の死者が発生しています.鹿児島大学で昨年6月,医学部の学生らに約60人の患者が発生したことで話題となりました.麻疹ワクチン接種率が77.1%と低いわが国では,1歳以上の子供はのんびり構えることなく早めに麻疹ワクチン接種を受けさせるべきです.しかし定期接種は自治体が実施主体なので,個々の自治体の事情により,必ずしも接種時期は一定ではないようです.その大きな理由の一つに集団接種から個別接種への移行があげられます.平成6年の予防接種法改正の注目すべき点は定期接種対象疾病の見直しでしたが,同時に従来の集団接種から個別接種への変更を促すものでもありました.ところが,地域によっては大勢の接種対象者に対して,小児科が少ないことが要因となって,集団接種を継続せざるをえない地域もあります.この場合,法律では生後3ヶ月から三種混合が受けられても,実際には集団接種で時期が決められており,希望する年齢で予防接種を受けられないこともあります.

予防接種年齢

疾病 定期予防接種の対象者 標準的な接種年齢
三種混合
(ジフテリア,百日咳,破傷風)
1)生後3ヶ月以上90ヶ月未満
2)11歳以上13歳未満
1)生後3〜12ヶ月までに3回,その1年ないし1年半後に追加
2)小学6年生
麻疹 1)生後12ヶ月以上90ヶ月未満 生後12〜24ヶ月
風疹 1)生後12ヶ月以上90ヶ月未満 生後12〜36ヶ月
日本脳炎 1)生後12ヶ月以上90ヶ月未満
2)9歳以上13歳未満
3)14歳以上16歳未満
1)3〜4歳
2)小学校4年生
3)中学校2年生

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