インフルエンザ

はじめに

 インフルエンザは毎年必ず襲来し,国民の5〜10%に健康被害をもたらす.先進各国はこのことを深く認識し,基本的な対策を着実に実行してきた.一方我が国は,診療はせずに本ばかり読んでいる一部の無能な学者により,1994年の予防接種法の対象疾患からインフルエンザが除外された.以後インフルエンザワクチンの予防接種率は激減し,逆にインフルエンザによる犠牲者は激増している.厚生省は1999年のインフルエンザシーズンに全国から集計された脳炎・脳症例についての報告書を公表した.それによれば,発症したインフルエンザ脳炎・脳症例は,0歳から60歳までの内217例を数え,58例が亡くなった.全員がインフルエンザワクチンを受けておらず,その内179例は5歳以下の小児であった.これらの事実があるにもかかわらずインフルエンザワクチンは予防接種法から除外されたままであり,国の無策ぶりには呆れるばかりである.毎年子供や老人がインフルエンザの犠牲となっており今年もそうである.いったい国は,何人の子供達を死なせたら気が済むのであろうか?

ワクチンは毎年受けたほうがよいか?

 インフルエンザウイルスは毎年少しずつ性質を変化させて流行する.これを抗原変異とよぶ.つまり昨年と今年のインフルエンザウイルスは違うのである.したがって,次のシーズンに流行するであろうと専門家が予測したウイルスで作られたワクチンは,多くの場合,前回使用されたワクチンの内容とは違っている.インフルエンザワクチンの効果は,だいたい半年ぐらいで,1年もすると抗原変異したウイルスには対応出来なくなる.そのためインフルエンザワクチンは毎年接種しなければならない.

乳幼児も受けたほうがよいか?

 家族がインフルエンザにかかると乳児も当然かかる.乳児は理論的に一度もインフルエンザシーズンを経験していないので,いかなるタイプのインフルエンザにも免疫がなく初感染となる.ただし,例外を除いて,6ヶ月未満の乳児は症状がマイルドである.しかし,家族の多い家庭や,保護者の希望が強い場合には,生後3ヶ月の乳児にもインフルエンザワクチンがいけないわけではない.
 またインフルエンザシーズンと受験シーズンは重なるため,受験生もインフルエンザワクチンは接種しておいたほうがよい.インフルエンザワクチンは毎年10月には医療施設に入ってくる.

接種間隔は?

 インフルエンザワクチンの効果は2週から4週で現われるので,接種間隔は2週から4週がよい.大人は1回接種でもかなりの効果が期待できるが子供は2回接種法が望ましい.

効果は?

 インフルエンザワクチンを接種してもインフルエンザにかかる場合もあるが,子供のインフルエンザ脳炎・脳症・死亡の抑止効果は極めて強い.重症度を軽減する効果についても効果があるとする報告が多い.

副反応は?
 インフルエンザワクチン接種による副反応が,他のワクチン接種による副反応よりも重症であったり,頻度が高いという証拠はない.平成6年の予防接種法改正以前に,小中学生を中心に学校現場で毎年集団接種されていたが,副反応が続発したとの経験は全く無い.

その他の予防対策は?

 インフルエンザは予防が重要で,中でも前述したようにインフルエンザワクチン接種が一番効果がある.その他の予防対策としては,インフルエンザウイルスが低温乾燥の環境で繁殖しやすいことから,部屋を温め加湿することである.またうがい,手洗いをしっかりする.人混みに出ない.マスクをする.ただし通常のマスクではウイルスが素通りするので,濡れたハンカチなどを鋏んだほうが効果がある.マスクは鼻と口の両方を覆うようにつける.

インフルエンザが疑われたら?

 早めに病院で診察してもらう.今,インフルエンザ検査キットがあり10分〜15分くらいで診断できる.

治療は?

 インフルエンザウイルスの特効薬(タミフル)の内服である.発症から48時間以内の治療であれば効果があり,2日ほどで症状が治まってくる.治療が遅れると効果が少ない.ただし今年に関してはタミフルが不足状態で在庫が無い施設が多い.

 また子供の場合,タミフルを内服したからといって安心は出来ない.タミフル内服後,24時間で効果が現われてくるが,その前に脳炎で死亡するケースがあったという内容が先日のNHKニュース10で放送された.

 子供に対しては,脳炎を起こすことがあり安易に解熱剤は投与しないこと.アスピリンなどサリチル酸系医薬品を配合した風邪薬や解熱剤(バファリンなど),ジシクロフェナクナトリウム(ボルタレンなど),メフェナム酸(ポンタールなど)は使用しないこと.代わりにアセトアミノフェン(カロナール,アンヒバなど)は使用してよいが医師の指示に従うこと.

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