腹帯は必要でしょうか?

 腹帯の起源は古く,最初に腹帯を使用したのは神功皇后だと伝えられています.腹帯が定着したのは平安時代で,当時の貴族社会の中で宗教的儀式として行われたそうです.江戸時代初期になって腹帯は庶民の間に広がりました.宗教的儀式以外に,難産防止や腹部の保護・保温といった理由付けがされました.当時は帝王切開などもちろん無く,妊婦は難産に陥り胎児が出てこないと苦しむだけ苦しんで,死を待つしかなかった時代ですので,安産のため胎児が育ち過ぎないようにと腹帯をできる限りきつく結んでいたそうです.

 江戸時代中期以降になって,きつく締め付けるのは良くないと戒められるようになり,腹帯は有害だという医者も出てきましたが,出産にまつわる不測の事態はあまりにも多く,腹帯を巻く習慣を簡単に止めることは出来ず,現在にまで続いているといえます.

 コルセットやガードルなど妊婦さんの腹部を支える下着は外国でも使用されていますが,信仰的意味で腹帯をする習慣は日本だけのものです.腹帯をする理由として,腹部を保温したり,衝撃から守ったり,おなかが垂れすぎないようにといったものがありますが,腹帯が必要である医学的根拠はありません.

 現在では,安産を祈願した信仰的,風習的意味合いや,母親としての自覚を持つ意味で腹帯を巻くといった妊婦さんが多いようですが,戌の日におはらいだけして実際は巻かない方もおられます.

 戌の日に腹帯をする習慣は江戸時代の終わりか,明治時代に入ってから新しく起こったものと考えられます.戌の日に腹帯をする理由は,犬が安産だからというより,子だくさんであること,古来,犬は悪霊を防ぎ狐狸から子どもを守るからというのが本来の理由と考えられています.

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