性病その3:クラミジア(男性)

はじめに

 性病の病原微生物と疾患は多数あります.しかし,現在わが国で最も流行している男性の性病はChlamydia trachomatis(以下クラミジア)による尿道炎です.

疫学

 厚生労働省感染症サーベイランス事業年報の報告では男性性病については,1993年にクラミジア性尿道炎がそれまで首位であった淋菌性尿道炎を抜き,現在まで最も流行しています.この変動の理由は1992年の全国的なエイズ予防キャンペーンによる性風俗店でのコンドーム使用頻度の増加により,性風俗店で感染機会の多かった淋菌が激減したものの,症状が軽く一般人の間で感染機会の多いクラミジアはコンドームの使用が徹底されず,それほど減少しなかったためと考えられます.

症状

 性的接触により尿道円柱上皮内に感染し,48〜72時間の長い増殖サイクルで周囲に拡散します.したがって,淋菌性尿道炎と比べて潜伏期間は長く,1〜2週間のことが多いです.発症すると軽度な排尿時尿道痛と尿道分泌物を認めますが,淋菌による膿性分泌物と異なり漿液性であることが特徴的です.治療が適正に行なわれなければ炎症は精路に波及し,前立腺炎,精嚢腺炎,精管炎,精巣上体炎などを引き起こすこともあります.

女性の咽頭からの感染機会の増加

 多くの人がオーラルセックス(フェラチオ)のみでは性病は感染しないと勘違いしているようです.とくに近年,性風俗店ではオーラルセックスのみを行なう所が多く,そこで感染する尿道炎患者が増加しています.

治療

 クラミジアと淋菌が混合感染している可能性を考慮しながら抗菌化学療法を行なう必要があります.とくに淋菌では3日間程度の短期療法で治癒しますが,クラミジアは増殖サイクルが長いために7〜14日間の治療期間が必要となります.

男性尿道炎の予防

 ピンポン感染(お互いに感染し合う)を予防するために,セックスパートナーの検査と治療を徹底する.

コンドームの使用に関しては,
 性行為中は継続して使用する.
 性交毎に新しいコンドームを使用する.
 爪や歯などで破らないように注意する.
 性器接触前に勃起状態で装着する.
 先端の空気を完全に抜く.
 射性後は勃起している間に根元を抑えて腟から抜去する.
 複数の相手との性交を避ける.
 オーラルセックス時にもコンドームを使用する.
などです.

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