女性が中・高年期を健康で若々しく過ごしていただくために

1. 女性ホルモンと女の一生

Q 女性の体は女性ホルモンと関係が深いといいます.どうしてでしょうか?

A 女性は思春期に初経を迎え,妊娠・出産が可能な成熟期となり,その後やがて閉経(月経がなくなる)を迎えます.こうした女性特有の体の働きをつかさどるのがエストロゲンという女性ホルモンなのです.

Q 女性ホルモンはどんな働きをしているのですか?

A 女性ホルモンは卵巣から分泌されるホルモンで,別名,卵胞ホルモンあるいはエストロゲンといわれます.卵巣ホルモンには,エストロゲンのほかに黄体ホルモン(プロゲステロン)があります.卵胞を破裂させ卵子を放出(排卵)し,月経を周期的に起こしたり,妊娠が持続して無事に出産できるのは,すべて女性ホルモンの働きによるものであり,女性ホルモンは女性の性機能を支える大きな役割を果たしています.

Q 女性ホルモンの分泌について説明して下さい.

A エストロゲンは初経のときに分泌が増え始め,20才から35才くらいがピークで,以後少しずつ減少し,閉経を堺に急激に減っていきます.
 45才くらいから月経の日数や周期が乱れ始め,やがて排卵が起こらなくなり,平均51才くらいで閉経を迎えます.閉経のころには,エストロゲンは卵巣からほとんど分泌されなくなります.

2. 更年期と閉経

Q 女性は何歳くらいで更年期を迎えますか?

A 更年期とは閉経をはさんだ前後5,6年の間です.閉経の時期は人によって違いますが,51歳が平均で,その前後45歳〜55歳ころまでが更年期です.卵巣機能の衰えの早い人では,30歳台後半で閉経を迎える場合もあります.

Q 卵巣機能が衰えると月経が不規則になるのはなぜですか?

A 卵巣の働きが最も活発な20歳台から30歳台は排卵と月経が規則的に繰り返されますが,40歳台に入ると卵巣は老化し始めエストロゲンの分泌が減少してきます.その結果,月経を起こす性ホルモンの働きが乱れるようになり,月経が不規則になるのです.

3. 人によって違う更年期の症状

Q 更年期の女性には,月経不順のほかにどんな症状が現われますか?

A 顔がほてる,汗をかきやすい,腰や手足が冷えやすい,息切れ,動悸がする,寝つきが悪い,または眠りが浅い,怒りやすく,すぐイライラする,くよくよしたり,憂鬱になることがある,頭痛,めまい,吐き気がよくある,疲れやすい,肩凝り,腰痛,手足の痛みがある,等です.ただし個人差が非常に大きく,症状が一定していないことが更年期症状の特徴です.

Q 更年期障害の治療法はあるのでしょうか?

A 更年期障害の原因がエストロゲンの減少によるホルモンバランスの乱れですので,不足しているエストロゲンを補うと症状が軽くなって楽になります.

4. 骨粗しょう症や心筋梗塞を防いで豊かな老後を

Q 更年期を過ぎたら問題はありませんか?

A 女性は月経のある間は,動脈硬化や心筋梗塞などにかかる率が低いのに,更年期を過ぎると急に増えて,男性と同じ発病率となります.これはエストロゲンに血液中のコレステロールや中性脂肪を減らす働きがあるためで,閉経後エストロゲンが欠乏すると,女性も一気に発病率が増加します.

Q エストロゲンの減少は,更年期障害を起こすだけではないのですか?

A エストロゲンには,骨からカルシウムが抜き取られるのを防ぐ働きがあります.そのためエストロゲンが欠乏する閉経以降の女性は骨がもろくなって骨粗しょう症にかかる率が高いのです.

 骨粗しょう症になると骨がスカスカになって骨折しやすくなります.その上非常に治りにくいので,いったん骨折すると寝たきりになることが多いというやっかいな病気です.この病気は男性に比べて,圧倒的に女性のほうが多くかかります.

Q エストロゲンを補えば,骨粗しょう症や心筋梗塞を防ぐのに効果がありますか?

A 閉経期の女性にエストロゲンを効果的に補う方法にホルモン補充療法があります.ホルモン補充療法は更年期障害の治療だけでなく,骨粗しょう症や心筋梗塞の予防にも大変有効であることがわかっています.

Q ホルモン補充療法で若さを保つことも可能ですか?

A エストロゲンはいわゆる「女らしさ」を保つのに欠かせないホルモンです.エストロゲンが失われると,細胞が老化して肌の張りやツヤがなくなり,シワが増えます.また尿道の締まりが悪くなって失禁が起こるようになったり,腟粘膜の潤いがなくなって性交痛や膣炎に悩まされるようになります.ホルモン補充療法は,こうした症状を改善する治療法でもあります.

5.ホルモン補充療法とは

Q ホルモン補充療法はどのように行うのですか?

A 減少したエストロゲンとプロゲステロンの分泌を補ってやるのが,ホルモン補充療法です.ホルモン補充療法には注射と飲み薬の二つの方法があります.飲み薬には毎日飲み続ける方法とお休みを入れながら周期的に飲む方法があります.

Q ホルモン補充療法はいつから始めたらいいですか?

A 更年期障害がひどい場合は,閉経前から始めてもかまいません.また卵巣機能不全症の人や両側の卵巣を摘出した人は,若くともホルモン補充療法の必要があります.骨粗しょう症や動脈硬化,心筋梗塞の予防が目的なら,血液中のエストロゲン量を測りながら閉経前後から始めていけばよいでしょう.

Q 老化は自然の現象ですからホルモンを使ってこれを防ぐのは不自然な気がするのですが?

A 「人間50年‥‥」の時代は閉経と同時に寿命が来ていたので,それが自然でした.ところが日本人女性の平均寿命が80歳を越えた現在,閉経後30年を病気や寝たきりで過ごすことの方が不自然です.ホルモン補充療法は運動療法と同様,閉経後30年もある人生を健康で若々しく豊かに生きるための方法の一つです.

6.副作用の心配は?

Q ホルモン剤を飲むと癌になると聞きましたが?
A 現在のホルモン補充療法はエストロゲンとプロゲステロンを併用しているため,飲まない人よりもむしろ子宮体部癌を明かに減らします.日本人の乳癌に関しては,まだ結論がでていません.

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