性病その13:A型肝炎

はじめに

 肝炎ウイルスとして,現在A,B,C,D,EおよびG型が認められています.A型肝炎ウイルスをhepatitis A virus(HAV),B型肝炎ウイルスをhepatitis B virus(HBV),以下同様にHCV,HDV,HEV,HGVと表わします.HAVおよびHEVは経口感染ですが,その他は主として血液を介した感染です.

特徴

 HAVのおもな感染経路は経口感染,すなわち感染者の糞便中に排泄されたHAVが,なんらかの媒介体を通して未感染者の口に入り感染が成立します.HAVは一般には性感染症として認められていませんが,男性同性愛者間では性行為により感染が起こることから,性感染症にも分類されています.

 A型急性肝炎の臨床的特徴は,B型,C型に比較して38℃以上の発熱をきたす率が高いことです.食欲不振,悪心,嘔吐などの消化器症状,全身倦怠感,黄疸も高頻度にみられますが,慢性化することはありません.

診断

 A型肝炎は,血液中にIgM型HA抗体を検出することで診断されます.IgM型HA抗体は,一般にA型肝炎の発症早期より血中に出現し,3〜6ヶ月間みられます.

治療

 治癒に要する期間は年齢が高くなるにつれて長くなる傾向がありますが,ほとんど3ヶ月以内に治癒します.通常は特別な治療を必要としないですが胆汁うっ滞をきたし,ステロイドの投与を必要とする例がまれにみられます.A型肝炎の劇症化の頻度はB型肝炎に比べかなり低く,その予後も他の原因による劇症肝炎より良好です.

予防

 近年,HA抗体陽性率は30歳以下では著明に減少しており,HAVに感染しやすいと考えられます.HAV感染予防に対しては,HAワクチンの接種が有効と考えられます.

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