性病その6:性器ヘルペス(女性)

 性器ヘルペスは外陰部に小水疱やびらんを形成する疾患で,単純ヘルペスウイルスherpes simplex virus(HSV)1型または2型の初感染,再感染,再発で生じます.主に性行為で感染し,性感染症の一つとなっています.女性の性器ヘルペスは,この10年間に着実に増加していて,クラミジアについで第2位を占めています.その背景として,性行動が活発化してきたこと,HSVに対する免疫をもたない女性が増えてきていること,性器ヘルペスはしばしば再発を繰り返すので感染源が増加する一方であることなどが考えられます.

急性型

 急性型は,HSVの初感染により発症し症状が強いです.性行為などの感染の機会があってから2〜7日位の潜伏期の後に突然強い外陰痛をもって発症します.外陰痛が出現する前に外陰の掻痒感や不快感などの前駆症状を伴うことがあります.この時期では,しばしば,真菌症と診断されて抗真菌薬の塗布が行なわれることもあります.疼痛は強く排尿や歩行が困難となり入院を余儀なくされることもあります.外陰部には,多発性の浅い潰瘍性病変が出現します.しばしば,皮膚面には,水疱性病変がみられます.潰瘍性病変は,直径数mmまでの円形のことが多いですが,ときにはこれらが癒合して地図状を呈することがあります.病変は左右対称のことが多いです.また,しばしば全身症状として発熱や倦怠感を伴います.発熱は37℃から39℃にも及ぶことがあります.鼡径リンパ節の腫脹と圧痛を大部分の例で認められます.

 急性期であっても,このような皮膚粘膜病変があまり多くなく,小陰唇から会陰にかけて5〜10個位の潰瘍性病変しかみられないものもあるし,無症状のこともあります.

再発型

 この型は,繰り返し再発することが特徴です.症状は比較的軽く,1週間以内に治癒することが多いです.しかし,ときに10〜14日位も治らない例もあります.病変は,小さい潰瘍性病変や小水疱です.病変のできる部位はだいたい同じですが,ときに少しずれたり,反対側にできることがあります.

 再発の契機となるのは,疲労や月経などです.再発の回数は,月に2〜3回というものから年に1〜2回という程度のものまでいろいろあります.月経になると必ず再発するという人もいます.

 再発を繰り返す例で,そのときによりかなり強い症状を呈することもあります.一般的に,再発までの期間が長いと症状は強くなり,短いとむしろ症状は軽いといわれています.年をとるにしたがって,再発の回数は減少してきて,いつの間にか再発しなくなるようです.

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