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■「共に学び高め合う生徒を育てる学級づくり」(5)

            川端 成實(鹿児島市立西陵中学校)
            k-narumi@po.synapse.ne.jp

<6つの柱 その1「班長選挙と班長による生活班の編成」(2)>

 前回、「班長選挙と班長による生活班の編成」ということで、『学級のリーダー(生活班の班長)の選出方法』についてお話しました。

1 学級の目指す姿をみんなで確認しあう
2 リーダー像を確認する
3 自主立候補と投票

 そこで、今回は、具体的な生活班の編成方法についてお話したいと思います。

1 「目指す班の姿」を班長に書かせる

 担任と班長が集まってもすぐにはメンバーを決めません。
 まずは、班長に「自分はこんな班が作りたい」という「思い」を述べさせます。これには大きな意図があります。
 どんなに優れたリーダーでも、助言やアドバイスをしないと、必ず自分との仲良しのメンバーを集めようとします。それは、ある意味ごく自然なことです。ところが、実際に班を動かしていく上で、単なる「仲良し」だけでは、活動が停滞することが多々あります。授業中の私語が増えたり、作業がいい加減になったり、活動の取りかかりが遅れたりなど班活動やグループを作らせて取り組まれたことがある先生方ならおそらくほとんどが経験しておられることでしょう。
 それは、その班がきちんとした方向性を持っていないことに起因します。「集団」が「集団」と呼べる所以は「目標」が存在することです。どんな方向性を持たせるのか?これが班長の中にあって始めて、班が機能していきます。
 そこで、わたしは、次のような手順で取り組ませています。
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 1 学級目標を振り返らせ、その実現に向けた班にすること
 2 そのために、自分はこれから作る班でどんなことを目標にする
  かを決めること
 3 それが決まったら、紙にその目標を書くこと
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 このときに、担任が「目標が目標としてふさわしいもの」になるように助言することも必要でしょう。単に「楽しい班」だけでなく、どのようなことができれば楽しくなるのか。また、単に「明るい班」でなく、具体的にどんな行動があることが「明るい」と呼べるのか。などなど。
 そうすると、「授業中集中し、掃除がしっかりできる班」とか、「授業中積極的に発表し、大きな声が出せる班」「いじめがなくみんなで声を掛け合える班」など、より行動目標的なものになっていきます。この「どんな班を作りたいか」をきちんと書かせておくことが、班編成をしていくときによりどころになるものとなり、単なる仲良し班ではなく、学級目標の実現を目指して、共に学び高めあう学級を作り上げるための班作りにつながっていくのです。

2 班員の指名を行なう

 さて、「目指す班の姿」がはっきりしてきたら、いよいよメンバーの指名です。手順は次の通りです。

(1) 副班長の指名
 まずは、その目指す班の姿を自分と共に実現してくれる「協力者」としての、副班長を指名します。この場合、男子が班長なら女子、女子が班長なら男子が副班長です。
 学級名簿を用意して、男子三名女子三名の班長に、「自分を助けて良い班を作るために、一番協力してくれるだろうと「信頼」できる人を選びなさい」といいます。このときまずは話し合いをせずに、自分の考える人を言わせます。もし、指名が重なった場合は、班長同士話し合いをさせて決めます。また、その場合に相手に譲った班長は、次の指名の時に重なったら優先的に班員を選ぶことができることも話しておきます。(これは、班員の指名の場合も同じです)
 副班長は、いざというときに自分の思いを、自分に変わって実践してくれる人。一番の協力者。そのことをしっかり理解させて指名を行なわせることが大事です。

(2) 班員の指名
 次に班員の指名です。
 次に指名する班員は、班長と同性です。副班長の時と同じように「目指す班の姿」をイメージさせながら「協力者」を選ばせます。副班長の時と同じようにドラフト形式で選んでいきます。副班長の指名の時にも話しましたが、「このメンバーだったら、自分たちの目指す学級を作っていってくれる」と「信頼」できる人を選んでいくのです。
( 以下、男女交互に班員を選んでいくことになります。)
 そこに、「みんなから信頼されて選ばれた班長(リーダー)」が、「この人ならより良い班作り、学級作りに協力してくれると信頼できる班員」を選ぶという図式が出来上がります。
 学級のみんなは、信頼できるリーダーを班長として選ぶ。班長は信頼できるメンバーを班員として選ぶ。そしてこれこそが、「生徒相互の信頼関係を柱とした生活班」ということになるわけです。

(3) 敬遠されがちな子
 ところで、順番に班員を選んでいくと、どうしても「敬遠されがちな子」が出てきます。敬遠される理由はみんなの輪を乱したり、自己中心的な行動とったり、暴力的であったりと様々です。そこで、大切なことが、そういう友達を自分の班の中に入れて高めていける班長がよりよいリーダーであるということを伝えることです。そして、「よし自分が引き受ける」という班長のやる気を引き出すのです。
 また、敬遠されがちな子を誰の班にしていくことがいいのかを6つの班全体(学級全体)を見渡して、班長同士で考えさせることが大切です。そこには班長たちの「自分たちは学級作りに参加してるのだ」という思いが生まれてくることにもつながります。
 このようみてくると、まさに「学級編制」をしているようだと思われませんか。そうです。「学級編制」をクジでやる学校はどこにもないでしょう。それは、学校が親や子どもにより良い学習の場を提供する必然性から生まれてきています。より良い環境作りから生まれてきています。ひるがえって学級内の学習環境や子どもたち同士の人間関係に配慮された学級になっているでしょうか。
 この「班長選挙と班長による生活班の編成」は、子どもたちをクジによる偶然性の教育から、教師や子どもたちの思いや目標のある意図的な教育へと変えてくれる大きな手立てでなのです。

(4) 座席の決定
 さて、班員が決まったら、班内の座席決めです。班長は学級内全体の人間関係(近くにいると私語をしてしまう等)に配慮して、自分の班員の座席を決めていきます。
 わたしの場合は、基本的に班長は、班を作った場合に、話し合いをしやすいように◎の位置に来るようにしています。その正面の●が副班長です。また、1、2、5、6の班長は班を作ったときに黒板に正対する位置にしています。(3、4班はどちらでも良いが、座席を班から崩したときに男女交互になるように工夫しています)

(班の作り方の一例:◎班長 ●副班長 ○班員)

            □□□(教卓)

      5班    3班    1班
      ○ ○   ○ ○   ○ ○
      ◎ ●   ◎ ●   ● ◎
      ○ ○   ○ ○   ○ ○
       ○           ○
      6班    4班    2班
      ○ ○   ○ ○   ○ ○
      ◎ ●   ● ◎   ● ◎
      ○ ○   ○ ○   ○ ○
       ○           ○
 このようにして学級内での人間関係に配慮したり、授業での学習環境に配慮したりした学級の座席ができあがるのです。

 もちろん座席を作っただけは、「共に高め合う生徒を育てる」ことはできません。この班編成を基にした様々な学級活動を通して、それを育てていくことになります。

 次は、生活班を基盤にして行なう具体的な活動についてお話していきたいと思います。

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■「共に学び高め合う生徒を育てる学級づくり」(6)

            川端 成實(鹿児島市立西陵中学校)
            k-narumi@po.synapse.ne.jp

<6つの柱 その2「生活班を基盤にして行なう具体的な活動」>

 前回、「班長選挙と班長による生活班の編成」ということで、具体的な生活班の編成方法についてお話しました。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
1 「目指す班の姿」を班長に書かせる
(1)学級目標を振り返らせ、その実現に向けた班にすること
(2)そのために、自分はこれから作る班でどんなことを目標にする
  かを決めること
(3)それが決まったら、紙にその目標を書くこと
2 班員の指名を行なう
(1) 副班長の指名
(2) 班員の指名
(3) 敬遠されがちな子
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 今回は、生活班を基盤にして行なう具体的な活動についてお話していきたいと思います。

 学級作りの6つの柱として、
 1 班長選挙と班長による生活班の編成
    〜生徒相互の信頼関係を柱とした生活班〜  
 2 リーダー育成の場の設定
 3 生活班を単位とした日直活動
 4 班日誌の利用
 5 生活班を単位とした・給食活動・作業活動
 6 「帰りの会」の工夫(位置づけと会順の工夫)

をあげました。今回はこの中の「3 生活班を単位とした日直活動」と「6「帰りの会」の工夫(位置づけと会順の工夫)」についてお話します。

1 生活班を単位とした日直活動

(1)日直活動を班員全員で!

 みなさんは、日直をどのように位置付けていますか。
 ほとんど、名簿順に1人から2人の生徒で、窓の開け閉め、黒板拭き、朝の会や帰りの会の司会、放課後の清掃や戸締まりなどをやっているところが多いのではないでしょうか。
 その日直の活動を、「班で」取り組ませるのです。
 また、日直活動を、先にあげたような単なる奉仕的な活動の位置付けに終わらせず、学級自治を具現化するための活動として取り組ませます。すなわち、日直班が学級の自治活動を推進していくための点検活動を取り入れるのです。
 日直班の具体的な仕事内容は次のとおりです。
 
<日直班の仕事>
 1 朝の窓の開閉
 2 朝の会の司会
 3 学習準備(チャイム着席等)の点検
 4 授業後の黒板拭き
 5 移動教室等利用時の消灯
 6 給食当番
 7 帰りの会の司会
 8 放課後の清掃、戸締まり
 9 その他必要に応じて

 この中の「3 学習準備(チャイム着席等)の点検」が、その点検活動になります。

(2)学級における「共通実践事項」の点検活動とその呼びかけ
(3)帰りの会での司会と点検項目の発表

 日直班となった班は、1週間、班員全員で、学級のみんなの学習準備(チャイム着席等)を調べます。そして、1日6時間授業なら、6回あるこの学習準備がしっかりなされたかを帰りの会で報告します。そして、もしこの報告で同じ班が連続して(わたしの場合は3回連続ですが)「一番よくなかった班」となった場合は、その班に対して、日直班から「帰りの会終了後の『班会議』」を要請します。班会議を開いて改善策を検討してもらうようにするためです。そこには、学級内の規律を自分たちの手で維持していかせる教師側の配慮があります。

 「共に学び高めあう生徒を育てる学級づくり」に必要なのは、生徒同士が互いに声を掛け合い、学級環境(生活環境や学習環境)をより良くしていくための、生徒自身の自浄作用です。生徒同士が、正義が通るよりよい環境を作りあげていくように、教師が働きかけを行なうことです。それが、この日直班の点検活動の中にはあるのです。

 まとめてみると、日直活動を班で取り組ませることは次のような意義があるといえます。

 (1) 日直の仕事を自分たちで担当や順番を決めて、日直活動が効率的でみんなのためなるよう  に、自分たちで工夫しようとする発想が生まれる。
 (2) 奉仕的な活動をみんなで協力してやろうとするようになる。
 (3) 点検活動を班員全員で協力して実施できるため、点検活動がしっかり行える。
 (4) 学級全体を見る視点を一人一人持つ事ができる。ひいては、自分を客観的にとらえる力の  育成につながる。
 (5) 班や学級への所属感や連帯感が強まり、まとまりが強くなる。
 (6) なにより、自治的なものの見方考え方がついてくる。

2 「帰りの会」の工夫(位置づけと会順の工夫)

 さて、日直活動を班で取り組ませ、その点検活動も含めて、自治的な学級の雰囲気を作り出すためには、「帰りの会」が大事になってきます。「帰りの会」は得てして、単なる連絡事項伝達の場や、教師から一方的な話(お説教)の場となりがちです。
 しかし、帰りの会は1日を振り返りと同時に明日への意欲付けをできる大切な時間。この帰りの会をどういう位置付けにするかは、学級づくりにとって大変重要です。
 わたしは、次のような考え方で、帰りの会を取り組んでいます。

(1) 生徒の主体的・自治的な活動の場
(2) 学級の連帯感・所属感を培う場としての帰りの会
(3) 自分たちの問題を解決する場、討議作りの場としての位置づけ

 そこで、これらの考え方もとに次のような会順で進めています。

<帰りの会会順>
 1 開会のあいさつ
 2 日直点検の発表
 3 日直への点検
 4 班会議
 5 班反省発表
 6 班日誌の発表
 7 各係、専門部、学級委員より
 8 先生より
 9 帰りの歌
10 閉会のあいさつ

 この会順は、それぞれの次の視点でつながっています。

(1)生徒の主体的・自治的な活動の場として
  →日直点検の発表・日直への点検・班会議
(2)学級の連帯感・所属感を培う場としての帰りの会として
  →班日誌を読む・班長より・帰りの歌
(3)自分たちの問題を解決する場、討議作りの場としての位置づけ
  →班会議・係専門部、総務より

 帰りの会で、このような視点を持って取り組ませ、自分たち一人一人の力が学級を作りあげているのだ、という実感を持たせられるようになった時、リーダーを中心によりよい学級を作ろうと、互いに声を掛け合う子供たちが育っていくのです。

 次回は、そのような活動を通した具体的な子供の姿と教師の関わりや、変容していった子供たちの姿を、「班日誌」を中心にお話したいと思います。