寂動正体療法の概要

・               寂動正体療法研究所
・               著作権者  寂動正体療法創始者 上村巖

一、はじめに
人は年を取るにつれて腰が曲がり、耳や目が不自由になり、頭が惚けてしまい、手足が叶わなくなっていくのは、生命体の極く自然な老化の過程として当り前の事と思われていました。
また、生まれながらにして病弱な人は気の毒な人あるいは運命やいろいろな霊魂の仕業として説明されて来ました。
しかしながら、人間の健康の回復に関わるものにとって、特に脊椎の矯正によって様々の難病が克服される体験を積めば積むほど、これらの姿はなんとかして克服したい課題となっていると思います
脊椎の矯正によってこれらの症状を克服しようとしてもなかなか期待するほどの成果が得られず、また完全に克服出来たと思っていたものも再発を繰返し、患者を苦しみから完全に解放出来得ない自らの技術的限界に無力感を覚えるものであります。
また、脊椎関節のズレは大きく無いにもかかわらず激しい痛みを訴える患者があるかと思えば、逆に非常に大きいズレがあるのに痛みをまったく感じないという患者があり、困惑する事が多いものです。
これらの原因が何であるか分らない時、自らの持っている脊椎矯正の理論の正当性を疑う事もあろうかと思います。
筆者もこの困惑のなかに落ち込み、患者のあらゆる病状に対応できる確信を持っている筈の脊椎矯正の技術的限界を感じ、患者を目の前にして屈辱的な日々を送った経験を持つ者であります。
その謎の原因が胸鎖関節を中心とした胸骨柄と鎖骨の周りに存在する事が明らかになりました。もっと明確に申し上げるならば、胸骨柄の接する関節の在り方が全身の症状を引き起こしている原因であり、これが2次性の脊椎関節のズレを起こす作用を伴い、脊椎関節のズレによる病気さえも軽症であるべきものを重症にしている元凶であったのです。
鎖骨および胸骨柄の引き起こす症状は脊椎関節のズレに伴う症状の様に異常関節から連続して発症しているものと異なり、一関節のズレだけで遠隔症状として全身に発症している特殊性があり、これまで脊椎の矯正に頼っていて解決しなかった症状がそれであったのです。

二、『胸骨柄のズレ』発見の経緯と『寂動正体療法』の誕生
私が1958年6月鹿児島実業高校在学中、柔道部長をしていた英語教師が『なぜか分らないが体育系の部活動をしていた者は高校を卒業して就職から3年以内、早いものは6ヵ月以内に病気になって帰って来る。運動をして鍛えているはずなのに病気になってしまうのはどうしてなのか不思議に思っている。
文化系の部活動に入っていた者は病気になったという事を聞かないからスポーツに問題があるのかもしれないと誰にも言えず心配している。』と語られた。
その休み時間に級友達に『俺がその原因を研究してみる。人生50年というが俺達の時代には人生80年にはなっているだろうから高校卒業後50年ぐらいの持ち時間があるようになっているだろう。50年もの歳月は昔の人の二つ分の人生だからなんとかなる筈だ。』と宣言したのが伏線となった。また、同じ、鹿児島実業高校の先生であった吉田老教諭が、わずか1時間だけの授業の中で、新幹線の原理を東京大学在職中に研究して、新幹線を可能にする原理として報告書を作成された、その基本の記録していた物を黒板に書かれた物を写させられたが、その日の授業が、更に重要な意義を持っていた。
同じく1958年7月28日に背中に激しい痛みを起こして苦しんでいる青年の脊椎にズレがある事を発見し、そのズレを指で押して正常位置に戻すと痛みも腫れも消え、指を離して脊椎のズレが再現すると筋肉は再び腫れて痛みだす事を確かめる偶然から研究をはじめた。
当時この事実を指摘した医学文献を探したが膨大な医学書のどこにも発見する事が出来ず、独学による解析を始めた。
 1962年12月に飼猫の脊椎のズレを確認し、その時点で構築していた矯正法を試みた。矯正する前は走る時に後足が前足の左にズレ、尻が右に揺れていたのであるが、矯正して離してみると後足は両方とも前足の間に入り、まっすぐに走るようになった事を確かめた。
 1967年に自転車で北海道まで行ったとき、札幌のNHK放送局の農事番組ディレクターの身体の体が悪いことを知って、治そうとしたが、不完全であった。
 1971年に入院していた漁船員達が、構想していた矯正法の有効性の確認をする実験体になると、熱心に申し出てくれたことから、人体で初めて試みて完全な成功を収めたことで、頼まれるままに2000人を越える治癒経験をもつに至った。
 1972年から、時々、鹿児島実業高校のグランドに行って、野球部の生徒達を治すことも多くなった。
 1982年秋、治療法の一部を農業雑誌に発表したのが橋渡しとなって、大分市の松山医院院長松山家昌先生と出合い、1983年3月から患者のX線写真を見せて頂く事が出来るようになり、松山家昌先生の検証を頂きながら患者と接する事が出来るようになった。
その結果、手探りだけでは確かめる術のなかった多種多様な脊椎関節のズレの実態が明確に掴めるようになり、それぞれのズレを正確に矯正する方法を確立してきた。

 患者自身は異常を感じて病院にいき、『異常はない。気の性だろう。』と言われて納得出来ず、病院のはしごや治療院等をさ迷っていたものが多かった。
X線写真の克明な解析を元にした矯正の積み重ねの中で、脊椎のズレと内臓の病気との因果が明確になり、X線写真をみればその人が抱えている自覚症状を正確に指摘出来るところまで発展した。
 X線写真に見いだされる微かな異常も、患者に取っては<非常な苦しみの原因である事が分り、その一つ一つについて矯正の方法を組み立ててきたので脊椎矯正法は完成したものと思った。
 ところが完壁に矯正した患者の中に、説明の付かない苦しみが生じる例がある事が分り、脊椎を克明に調べても矯正の完璧さが明確な手応えとして返ってくるだけであり、患者が訴える現象を裏づけるものを捕える事は出来なかった。そのためX線写真の克明な見直しを行った。
 実は、1985年6月にバレーボールをしている人に急性心不全死を引き起こす胸椎のズレが多い事を発見し、バレー関係者への警告の必要性を提起し、その原因追求の過程で胸椎の前落ちのメカニズムの解析を行った。
 身体の前方側に縦方向の力が発生していなければバレーの練習や試合等によって脊椎がズレていく仮説が説得力を欠いていることが明らかであったので、どこかに縦方向の筋拘縮が発生する関節というものが存在するのかも知れないと指摘していた点と、以前からギックリ腰の患者には、必ず鎖骨に異常がある事を指摘していたことから鎖骨の映像の異常に焦点を絞り検討した。
 当該患者にも、当初のX線写真検討の時、胸椎の前落ちが存在していた事、腰の痛みを訴えていた事が治療記録によって確認出来たことと併せて、X線写真上の鎖骨が推定正常位置と大きくズレていることが明確であった。
 X線写真において鎖骨の位置は写真をみられるようになった当初から標準と言えるものが無いほどバラつきが多く正常と異常の判別基準をどこに置くべきであるのか決定出来ずにいたものであった。
 当該患者にあっては極端にズレていたので、最初にX線写真をみて全身にある症状について説明する時からその事を患者に伝え、それが何を意味しているか不明であるので触れない旨を説明していたものであった。
 したがって、鎖骨のズレに原因する肩凝り、肩腕症候群は矯正で解消していたにも関わらず、その先は手付かずになっていることを患者自身が承知していたので、胸鎖関節が原因の可能性と矯正の必要に対する患者の納得はスムーズであった。
 胸鎖関節の部分を触れてみるとはっきりとした腫れと鎖骨表面の滑りがあり、患者の痛がり様は異常なほどであった。余りの痛がり様に矯正を断念しようとしたが、患者自身の熱望に促される感じで方法も定かで無い胸鎖関節の矯正は始まった。
患者は涙を流しながらも耐えた。矯正する指先には患者の激痛がただならぬものであろう事が明瞭に感じ取れ、矯正行為そのものが気の毒の感じで手の力が抜けていく状態であった。
しかし、絶対の信頼で身を委ねた患者に何とか応えたい思いで心を鬼にして目を潤ませながら矯正動作を重ねた。
明瞭な矯正の手応えに手を離して結果を聞くと、その時点まで抱えていた全ての症状は解消し、口に出していなかった様々な全身症状まで消滅していることを感激の言葉で表現した。
それからの一週間はこの胸鎖関節の矯正による症状の解消の鮮やかさに対する興奮とその適応範囲の広さに対する驚きで明け暮れた。此処で、鹿児島実業高校時代に、吉田教員が教えられた分布荷重の意味が大きな意味を持って思い出された。
そして1987年8月1日の患者で胸鎖関節のズレによる症状の激烈さの証明は頂点に達した。
患者は右半身が切り裂かれるように痛み、頭は割れるようにあり、耳は音に対してかんかんと鳴って聞こえず、目は抉り取られるように痛み、頚は動かせず、肺は息をすると張り裂ける程痛み、腹部は松山家昌先生が胆石、虫垂炎、腎臟炎を疑い、緊急手術のための移送を想定される程の激痛があり(胸鎖関節のズレである事を確認しようと腹直筋を触れた時、 衣服の皺に触れた瞬間、ギャーッと声を上げた程)、腰から足に掛けては正常歩行が不可能な程の痛みに泣きながら治療室に入って来たものであり、畳に仰向けに寝る治療姿勢を取るのにも相当の時間を要する程であった。
右胸鎖関節の矯正だけで死ぬのではないかと思ったと言う激痛は消え、腹直筋の拘縮によりズレていた仙腸関節を矯正すると違和感も完全に消えていたのである。
実はこの日は週の最終治療日であり、昼食の時、この週の発見として胸鎖関節のズレが重症である場合は、内臓病と誤診する可能性があると予想される事を報告していた。
現実に胆石、虫垂炎を疑って手術をした結果当該内臓には異常が無かった例が多数存在しているのであり、痛みの激烈さのために症状の重篤度への配慮から手術を急ぐ余りに要件となる症状の確認が足りなかった事が上げられているのであるが、胸鎖関節のズレによる症状の理解が進めばこうした誤りは防げるものが増えるであろうと報告し、識別するための症状を語っていた。
松山先生はこの患者について痛みから該当する病名に対して要件症状を欠くため、胸鎖関節のズレによるものか確認をと考えられたとの事であった。
胸鎖関節のX線写真はこの判断の正しさを裏付けていた。また、訴える激痛は全て胸鎖関節のズレによって拘縮する筋の上にあった。
いま、胸鎖関節こそ永い間人間が背負い続けてきた老化現象という言葉で表現される惚け、難聴、目の霞み、足腰の衰弱といったものの原因であるだけに止まらず、虚弱体質の引金でもあり、全身症状となっているさまざまな慢性疾患の遠因である事が判明した。
脊椎のみの矯正による治療だけでは同じ関節の症状が再発する原因にもなっているのである。
驚異的な症状を起こしている胸鎖関節に目を奪われている間にも説明できない症状の患者は次々に現れ、気を休める暇を与えてくれない。
それらは、体の老化現象や慢性疾患の原因が鎖骨にあるのではなく、胸骨柄にある事を示すものであった。
胸鎖関節だけでなく、胸骨結合も遠隔症状の関節であったのである。
すなわち、胸骨柄の関る関節が遠隔症状の起きる関節であり、下肢麻痺の起きる関節である事を示していた。 胸骨柄は人体における縦方向の筋肉の支配神経の通過点であり、脊椎を通る神経の分割支配とは別に、脳による人体の直轄支配神経の存在を示すものであった。
脊椎関節のズレによる症状は、環椎の下関節のズレによる小脳機能の低下で起きる全身症状を除けば、前後左右のいずれかに限られ、しかも拘縮と弛緩が脊椎中心を通る180度の位置で向かい合う組み合わせで対になっており、その症状の範囲は当該関節の支配下にある神経が関わる筋肉や内臓だけである。
これに対して、胸骨柄が係わる症状は拘縮のみであり、胸鎖関節のズレが右側であるか左側であるかによって身長方向半身の症状となり、また、左右の胸鎖関節がズレていれば両方に症状が起きる点で脊椎を通過する神経の症状とは対象的であることが明らかになってきた。
原因不明とされている胸郭出口症候群の原因は胸骨柄の関わる関節の症状である事が明らかになってきたのである。
殆ど全ての症状に対応する関節のズレの形が明らかになった事と、その関節の矯正方法が確立出来た事によりこの治療法を『寂動正体療法』と名付け、人類の苦しみが終わる日が来た確信を持って、治療法の全てを公開している。
『寂動正体療法』においては、胸鎖関節のズレは脊椎の矯正に先立って矯正しなければならない第一ステップと位置付けている。

三、鎖骨関節のズレおよび胸骨結合のズレによる症状
胸鎖関節のズレによる症状について一般農家の方々向けに作成した文書があるのでそれからの引用で示してみる事にする。
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1、鎖骨関節のズレによる症状 まず全てに先立って述べたいのは、極く最近になって意味の重大さがは っき りしてきた「鎖骨のズレ」と「顎の関節の狂い」があります。顎関節の狂いに 関するものは頚椎の項で述べるとして、鎖骨のズレは1984年のX線写真を 見るようになった当初から正常でないと思われるものが殆どの患者について存 在していました。
しかし、正常と異常の判別の基準が分らない事と、一人もそ の付近の痛みを言わないことから、肩凝りと上腕の障害の治療のため以上には 治療すべきテーマとして取り上げていなかったのです。
たまたま非常に酷い写 りの人があり、脊椎のズレを完全にしても痛みが消えないので、『そのズレに よって何がどこに起きているのかを確認してみたいので治す必要があるものな のかどうかを調べさせてくれないか。』と頼み、協力を得て始まったのですが 1986年1月からの治療で正確な治療方法が確立してみますと実に様々の病 気の元になっていたことが分かってきたのです。
鎖骨のズレは何時起きるかという点についてショッキングな例がありました 鹿児島の家で『生後7カ月の赤子が手を臍より上に挙げず、着替えのときなど 手を持ち挙げてやると泣くのだが何とかならないか。この子は生れるときに鎖 骨が折れて生れたのです。』と連れてきました。
スヤスヤと眠っている児の鎖 骨の胸骨との関節部の皮膚面に指先だけが付く程度にソッと触れた瞬間その児 は眠ったままで泣き声をあげました。そして、皮膚には赤い反応が現われたの です。何回やっても同じでした。
「 この児はいままでずっとここの痛みを堪え ながらいたんだねえ。眠っていてもここを触れられないように神経を尖らせて いるんだよ。」と言って、手を取ってそっと治しました。
10分ほど語ってい ると、その児は眠ったままで手を動かし始め、次第に上に挙げていき、遂に頭 を掻いたのであった。そして万歳の格好のまますやすやと寝息を立てていた。
母親の顔に赤味が広がっていくのが見えた。母も児と共に苦しんでいたのであ ろう。その苦しみから共に解かれた瞬間の感動であった。鎖骨のズレは生れる 時に既に始まっているのである。
この例からも分かるように鎖骨のズレによって手が挙らなくなるのです。
それだけではありません。病院で頚肩腕症候群とか四十肩・五十肩といわれる もの、あるいはリュウマチ等も含む吐き気を伴ったような頚の後ろから背中を 通り腰に掛る漠然としたこりや痛みまた、
親指・示指・中指の麻痺や動作の不 完全感(3本の指を軽く擦り合わせてみると薬指・小指のザラ付に比べ指紋の ざら付がなくつるつるの感じがして、細かいものを扱うと取り落とすことが多 い。)が起る元になっているのです。
また、リュウマチの患者には必ず鎖骨の 狂いが存在し、手首まで腫れたり、曲がっていた人も鎖骨の狂いを治すと完全 に治癒するのです。
そして、決定的な問題として親指の第1節の押す力が失われ、それをカバー する手の関節の変化と筋肉の動き方の変更で他の指の力が低下するため握力が 低下する事態が起る点があります。
そうなると、腕を脇腹から離したり、前に挙げて腕を伸ばしたままで物を持 つことは出来なくなり、肘を曲げて身体を歪めて物を持つようになりますし、 少しでも重いものは持ってから腕の力で肘を曲げる高さまで引き上げることが 出来ず、身体を退け反らして持ち上げる動作をする様になります。
相撲取りが 土俵際でうっちゃるときによく現われます。この動作がギックリ腰の要因とな っています。
また、箸を持ったり鉛筆を持ったりする動作が正確に出来なくなります。第 1指・第2指・第3指の内でも第1指(親指)の機能は非常に悪化してきます 内側に曲げる筋肉は硬化し動かなくなり、それを補うために指を横に動かす筋 肉が働きます。しかし、中指に向かい合うことは出来ないのです。握り拳を作 って強く握り締めると親指が中指と向かい合わず、掌に対して「くの字」に曲 がり、滑り落ちて握り締める力が出ません。
箸や鉛筆を握る指の格好が悪いといわれる人は殆ど総てこれがあり、親指が 内側に向けて押す力が足りない分を第2指(示指)を親指側にずらして持つた め力の調節が出来ず、線が波を打ち、右下がりの字になるのです。力が入るた め筆圧が高く線は太くなり、例えば卦紙1枚に字を書くと、書き初めの字に比 べ書き終わりの字は乱れ、腕が痛くなり、肩が凝ります。また、腕を伸ばして 字を書くことが出来ないため肘が曲がり姿勢を前に倒して書きます。
視力は悪 くないのに姿勢が悪い子供の原因はこれであるのです。姿勢を真直ぐすると字 を書く速度が落ちて、字も乱れるのです。早く書くことは試験責めの子供達に とって必須の能力ですから、何とかして動かない腕を動かそうとして見付けだ した姿勢である訳です。
この姿勢には大人とか子供とかの区別がある筈があり ません。
このことは農家にとって大変な苦痛の原因と同じであることが容易に分かる と思います。例えば鍬を使うときや、草を切るとき鎌を持ち激しく草を払うよ うな、道具を持って腕を連続的に振る動作は腕に火が付くような痛みを起しま す。鍬や鎌を握る手の力が落ちているので腕に無理が掛るのです。また、親指 人差指、中指が微妙な調節が出来ませんので細かい種の播種がスムーズにでき ません。
鎖骨が狂うと腕に力瘤が出来なくなるほど腕の筋肉も硬化萎縮しているので すが、これを我慢して働いていますと筋力の低下をカバーしようとする頚から 肩に掛けての筋が痛み、やがて肩鎖関節(鎖骨・肩甲骨・上 腕骨の繋ぎ目の 肩の関節)が狂ってきます。肩甲骨の位置も狂い、肩が痛くなり、腕を動かせ る範囲が次第に狭くなって手は挙がらなくなります。
また、重いものを持たねばならない農家の方々の身体は、指の力の低下が腰 椎を痛める大きな要因となっている相関性をX線写真からも確認しています。
ところが、胸鎖関節と肩鎖関節の5ケ所の狂いを正しくすると、肩凝りや 腕の痛みも消え、萎縮衰退していた腕の筋肉に血液が入り、柔らかく太くなり 断面積が大きくなって力瘤も出来るようになります。

肘が曲がったり、曲げら れなくなったりする原因も鎖骨が原因であり、肩の前側に痛みの線があり親指 の付け根に達しています。鎖骨の倒れ込みが原因なのです。これによって肘そ のものに非常に僅な狂いが起り肘関節の可動範囲が狭まるのです。肘を伸ばし たとき真直ぐ伸びず無理に伸ばそうとすると「く」の字の形になり、曲げたと きは肩を掴めなくなります。
野球選手がコントロールを失うのも実は鎖骨の狂いによるものなのです。こ の事実は鹿児島実業や鹿児島商業の野球部の選手によって確認しております。

それだけではない事が明らかになりました。
林業に働く者にとって最大の心 配は白蝋病になるのではないかということであろうと思います。この白蝋病の 原因が鎖骨に関わる5点の関節面の狂いであり、各点の狂いを正常に組戻して やると、早いものであれば、僅か1回の治療で完全に治癒するのです。白蝋病 になるかどうかは完全に予知できるし、原因である鎖骨の関節の狂いを完全に 矯正しておけば、白蝋病は他の慢性疾患がそうであるように予防できるのです。
この点については白蝋病患者の前駆疾患からも推定していたものでありました が、実際に患者の治療によって完治できることが分かったものです。さきに述 べた症状こそが白蝋病患者に必ず存在する前駆症状でもあるのです。 白蝋病に苦しむ人々が難かしい処置を必要としない治療で、完全な健康体に 回復するのは、絶望的な状態での来院であるだけに嬉しい限りです。どれだけ の治療が必要であるかもほぼ確実に推定できますし、1回1回の治療によって 患者自身も自分の状態が変化することを認識できるのです。

2、鎖骨関節に起因する全身症状について
胸鎖関節のズレによる障害の最大の課題は、全身の血管の拘縮による血液循環の障害である。
本来正常に機能している事が前提になっている血管が右の鎖骨の状態が悪ければ右だけ、左の鎖骨が悪ければ左だけ障害が発生している。
その障害は静脈側に顕著に現れる。しかも軟部組織においてその障害が顕著である。
特に深刻な事は脳血管障害として起きているものは、脳の機能障害に目が向かうため、鎖骨のズレが原因であるものが他の病気として治療されているものがあるのである。
また、 ところが、鎖骨関節の狂いが起す疾病の範囲というのはこのような肩や手に 関わる程度のものではなく、人間の病苦の殆どに関わる根源であることが明ら かになってきました。
これまでの治療の過程で鎖骨のX線写真を見た時に気付いた疑問について解 決したと考えながら、もう一つ納得いかない形で残っていた疑問が解けて見る と他の関節のズレとは比べ物にならないもっと重要な意味があったのです。
1985年6月中旬に深刻な問題につきあたりました。胸椎の前落ち現象が バレーボールをしている人に限って非常に高い頻度で発生している事が分った のです。
患者を腹這いにさせて、胸椎部分を一撫する程度でバレーをしている かどうかが判別出来る程の確率がありました。
その胸椎の前落ち(骨盤側の椎骨を基準において、頭蓋骨側の椎骨の中心が骨盤側椎骨の中心より前にあるもの)は、心臓が正常な機能を果たしていないと言う事でありますから、ハードな練習や連続する試合は選手を心臓死に追いやる可能性が高い 事を意味していたのです。
バレーボールの選手には特有の姿勢があり、その典型はかつて全日本の代表 選手であった根古田選手において顕著であったので、胃癌で倒れるはるか以前 から、試合中の姿を見るたびに「胃が痛いだろうなあ。」といって涙を流しながら見ていたのであ る。
しかし、胸椎の前落ちがアマチュアのバレーボール愛好者にも広がっている と言う事は、発生のメカニズムを解明し、関係者に警告しなければならない深 刻な問題となってきたのである。
当初、三の1で述べた事で説明しようとした のであるが原因としては、やや薄弱であった。
「何か、どこかに縦方向の力を発生させる関節がある筈ですがどこにあるの でしょうかねえ。それがないとアピール文が説得力を欠きますねえ。それでな くても、このメカニズムを信じてもらえるでしょうか。」と、松山家昌先生と 語り、アピールの時期を図っていた。
1986年2月、決定的な原因を見つける事が出来ないでいる間にダイエー のハイマン選手が心臓死したのであった。取り急ぎ、アピール文を作成してい る間にさらに2人の心臓死が起きた。
アピール文を関係者に配布したが、信じ ていただけたか不明である。
1986年7月中旬、その原因は胸鎖関節のズレである事が判明した。
鎖骨の関節のうち胸椎側の胸鎖関節のズレは「胸鎖関節は人体の十字路」で あり、「人体に埋め込まれた十字架」であると直観せしめるほどの激烈な全身 症状を発生させる関節であるのです。
胸鎖関節のズレは小脳の機能失調による 全身症状に次ぐほどの頭頂から足までの半身症状を引き起こしており、しかも その症状は激しい痛みを伴うものがあり、1986年8月1日の先にも述べた一人の患者の例は院 長がびっくりして緊急手術手配の必要を考えられたほど激しい内臓病の症状が あり、隣室で待っている間呻き続けていました。
その日、昼食の時に胸鎖関節のズレによる激烈な症状の事を発見して確認が 進んでいる事を細く説明してあったために、激痛の症状から推定しうる該当病 名に対して症状が要件を満たさないことから胸鎖関節のズレによる症状の該当 者である事に気づかれたものでした。
他の患者の例でも、最も激烈な症状は、頭痛・頚部痛・腰部 痛・内臓(胆嚢・腎臓・虫垂)の痛み・骨盤から大腿・足の裏に掛けての痛み が現われるのです。
軽症の者でもこれらの各部位には接触痛や圧痛が存在します。
また、頚部は 胸鎖乳突筋の拘縮を伴うため頭骨乳様突起と環椎後頭関節間を一辺とし、胸鎖 乳突筋および頚椎の延長線との交差点より形成される三角形のうち胸鎖乳突筋 のなす辺は当該筋の拘縮により辺の短縮の圧力が生じ環椎の上下の位置の前方 へのズレとなり、さらに症状が進行すると頚椎自体が胸鎖乳突筋との交差点よ り上は後ろに交差点より下は前にずれていく事になります。
したがって、頚部 のカーブは前方へ大きく張りだして顔面は上むき傾向となり、視野が足元を離 れるため躓き安くなる。顔面の上向きは記念写真の撮影のときに顎を引くよう に求められることで証明されています。
この事は、当然ながら環椎の上下の関節の間隔を引き締めるように働き、大 脳と小脳の機能が低下して全身症状が合併して起こっている。
外観上でも脳内 出血を起こした人の頚は太く頭髪も抜けています。胸鎖関節がズレている限り 程度の差はあれこの症状がある事を確認しています。
ここまでに述べた事は鎖骨関節のズレによって起きるとしていましたが、鎖 骨で起きる症状は実に複雑であるのです。
前節で述べた腕に係るものと全身症 状が起きるものとは関節のズレの形態が違っています。同じ関節でありながら 明白に違いがある事が分って来ました。
X,Y,Zの三軸によるものは腕や肩 の症状であるのに対して、全身症状の発生するズレは、仮にR軸としておきま す。
この第四のズレは矯正に非常な激痛を伴うことと、遥か離れた関節の支配 下にあるはずの筋肉を拘縮させ、更に二次的症状は全身かつ多岐に亘って起り 他の関節とは比べ物にならないことから胸鎖関節にあるズレを『悪魔のツボ』 と称しているが、この一点の矯正で前述していた激しい痛みは完全に消てしま うのです。
頭痛から足裏の痛みまで。 難聴も解消していることが確認されています。
ほとんどの人が感じている言 葉が不明瞭に聞こえるなどの軽い聴力障害は殆ど回復しますし、一例であるが 30数年前のストレプトマイシンによる難聴といっているものが回復していま す。
また、中耳炎による難聴までも治ったという患者が数例あります。
このことは重要な意味をもっていることを示唆しています。非行少年の体型 には猫背があり、これは胸鎖関節の狂いによる肋間筋の拘縮と胸椎の前落ちを 示しているのであり、必ず顎が前に突き出ており、ある範囲の周波数が聞こえ ないと言った程度の軽度の難聴が存在する事を示しています。
その事実はテレビを点けた時にボリュームを上げて声を大きくする事ではっ きりと分るのです。
正常な耳ではうるさい位の音量であるので争いの要因とな っています。
しかし一見健康体であり、対面した会話のときは近距離で自覚し にくい程度の難聴であり、この事実が医学自体において知られておらず一般常 識化していないので子供が難聴であるとは気付くはずもありません。
そのために呼び掛けに対して返事をしないことに対する大人の苛だちが、子 供に対する厳しい口調となり、感情的対立の遠因となっているであろう事を推 定させるのです。
呼び掛けに対して返事をしないのは聴力に欠陥があるためだ と分ったならば親の心の持ち様も違うであろうにと気の毒に思います。
子供自身は音が自分から距離をおいた遠くにあり、外部世界の存在感が薄く、 自分では生まれた時からの感覚であり、そんなものであろうと思い込んで、疎 外されていく子供の無念さが胸に突き刺さるのです。
胸鎖関節を矯正した子供達は目を輝かせて感動を込めて自分の実感を正確に 語ってくれます。
世界が自分の肌の際まで迫って来るのが分り、目で見ている 距離感と耳が聞く距離感とが一致するといいます。大人であろうと子供であろ うとこの実感に差がある筈がありません。
ただ、大人には年の性だろうかとい う諦めが存在しています。
吃音も関係しており、私が高校の時、近所の子供の吃りを治そうとしていろ いろ気を配った事がありますが、大人になって腰を痛めた時に治療していて確 認した事ですが、胸鎖関節の大きいズレがあり、矯正の直前まで自分の喋る言 葉が聞こえないためにいつも戸惑いながら喋っていたといいます。
唖になる原因も喋りが遅れていた3才の子供を何とかして治そうとした20 年昔の経験からして、耳が聞えないことが関係していただけにもしかすると治 るのではないかという微かな期待をもっているところであり、鎖骨というのは それ程に人体の宿命的な慢性疾病に関与する重要な関節を含んだ骨だったので す。
また、リュウマチの原因となる関節を特定できなかったため、対症療法に近 い矯正を行なっていたのですが、関節リュウマチを初め各種の形態のリュウマ チも胸鎖関節が原因であることが明瞭になりました。
今や、かつて副腎皮質ホル モンによる劇的な痛みの解消効果が発見されたときの興奮を超えるリュウマチ の根本的な原因の発見とその解決法が確立出来たのです。
胸鎖関節のR軸の矯正が完了するとその瞬間にすべての関節の痛みが消えて 動作能力は完全に復活するのです。1回の矯正治療で動作に伴う痛みは消えて しまいますし、変形していた関節もそこに起きているズレを矯正していきます と変形とみられていたものも消滅して元の正しい姿に復元していくのです。
人体のすばらしい力に感動させられます。
また、脳貧血を起した者にこの胸鎖関節R軸の激しい狂いが存在しているの を確認した事があります。色々な式や大会の開会式でスポーツ選手等が倒れる のもこれであろうと推定していますがとても信じられないものです。

3、胸骨結合のズレによる症状
正座すると足はなぜ痺れるのであろうか。下半身麻痺はなぜ起きるのであろ うか。歩く時親指が痛かったり、親指が曲がったりするのはなぜであろうか。 また、土踏まずがなくなる原因は。
こう問われてその原因を明確に説明出来る 人があるだろうか。
その原因が胸骨結合のズレにあります。従って、患者はこの事を座る瞬間に自覚しており、痺れが我慢出来なくなったらどう足を崩すかを意識しながら座っているのです。もちろん環椎の環軸関節部のズレに よる小脳機能の低下による身体管理機能の失調によるものもあります。
この場 合は、胸鎖乳突筋の拘縮を起こす胸鎖関節部のズレが根本的な原因となってい ます。
胸骨結合部のズレは胸鎖関節や仙腸関節とともに膝関節が悪くなる3大原因 関節の一つであります。
胸骨結合の胸骨柄が胸腔側にめり込む形でズレている と腓腹筋が内外共に拘縮し、正座した時臀部が浮き上がり上体はやや前傾した 姿勢となり、正座の瞬間において腓腹筋の圧迫感があり、長母指伸筋の拘縮に よる腱の緊張があり足首が伸びず親指が外反しているため圧迫感が強く不安定 になっています。
胸骨結合のズレが矯正されると腓腹筋の圧迫感が消え、足首が伸び親指が伸 び土踏まずのカーブが復活して、正座時の臀部の浮き上がりがなくなり、上体 が両足の上にどっしりと載るため安定した姿勢になります。
また、気管支炎、喉頭部の痰の詰まり、喘息、風邪の症状が速やかに解消す る事が明らかになっています。さらに下半身が麻痺している患者の胸骨柄は落 ち込みが大きく、このズレを矯正すると麻痺が軽 快していく事が確認されてい ます。

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ここに述べた事が信じられるでしょうか。
胸骨結合のズレが下腿の症状に現れると。胸鎖関節のズレによる全身症状に比べればわずかなものですが。 こう述べると脊椎関節の矯正で全ての病気は治せるのだと信じている目でみれば、この文の信憑性をすら疑われる事と思います。
しかし、西洋医学が脊椎矯正による治療法を許すべからざる論理であるとみている誤りと同様の誤りを犯す感覚が、自らに存在する愚を自覚されるべきであり、真実がここに開示されている事を読取り、せめて胸骨柄の矯正だけでも自らのものとされ、病いに苦しみ救われ得なかった人々に真の健康体の復活の喜びを与えてほしいと思うのです。
脊椎矯正を5回以上繰返す治療はどこかに問題があると考えなければなりません。
そうした患者には胸骨柄が関わる関節のズレがあるのです。 胸骨柄が接する関節のズレはそれほど人体の健康を左右している関節であるのです。
病弱を宿命と諦めている人々に『寂動正体療法』で完全な健康体を復活させ人生を全うしうる慶びを与えてほしいと願っています。

四、鎖骨および胸骨柄が接する関節のズレで拘縮する筋群
および能力が低下する動作ならびに外観的症状

1.鎖骨の関節
A 胸鎖関節部


イ 鎖骨の上方へのズレ(回転=体内方向への倒れ込みを含む)

(1)胸鎖乳突筋乳突筋 胸鎖関節のズレの象徴的筋であり、胸鎖乳突筋の拘縮の程度を調べる 事によってによって胸鎖関節のズレの程度を推定出来る。頭蓋底の後頭 顆中心と乳様突起中心を結ぶ線および胸鎖関節と第一胸椎を結ぶ線なら びに頭蓋底後頭顆と第一胸椎の間の頚椎の椎体後縁の線と胸鎖乳突筋の 交差点によって形成される二つの三角形のうち胸鎖乳突筋のなす辺の短 縮により、顔面が上向きになる。また、拘縮が重度になるにつれて環椎 が前方に押しだされる形になり、環椎後頭関節と環軸関節がズレるため 大脳および小脳の機能障害としての精神活動および自律神経系の異常と 神経機能の低下や麻痺が現れているX線写真における観察で頚椎線との 交差点から頭部側は後落ちが進み胸部側は前落ちが進んでいる事がみら れている。したがって嚥下の際に咽喉部に違和感があり、喉の詰まりを 感じている。

(2)胸骨舌骨筋 鎖骨の体内方向への捩れのバロメーターとなるものである。喉頭部と 舌に異常感がある。

(3)胸骨甲状筋 胸骨舌骨筋と同じく鎖骨の捩れのバロメーターである。喉頭部と甲状 軟骨の歪みが起きている。

(4)肩甲挙筋 胸鎖乳突筋と共に胸鎖関節のズレの程度の確認が明瞭に識別できる筋 であり、鎖骨の体内方向への捩れのバロメーターとなるものである。 拘縮が起きている側に顔面を向ける事が出来なくなり、また、頚を傾 ける事も出来なくなる。重度になると後頭部痛が伴う様になる。非常に 激しい拘縮の状態になり、あたかも骨があるかの様に触れる事が多い。

(5)鼓膜張筋(推定)、口蓋帆張筋(推定) 外部から触れる事は出来ないため患者の表現により推定するものであ るが、耳鳴りが消え、難聴が解消する事や極く軽度の聴力障害が即座に 解消し、その時耳の風の通りがよくなった感じがする事で推定している

(6)耳管咽頭筋、鐙骨筋 鎖骨の体内方向への回転により拘縮するものであり、矯正直後に耳の 内部で液体が動く音がする事を患者が証言している。

(7)半棘筋群(頭半棘筋、頚半棘筋、胸半棘筋) 体を伸ばす時や横に曲げる時に痛みがある。脊椎のズレは殆ど存在し ない時にも強い痛みが起きる状態に該当する。

(8)大胸筋、肋間筋 胸痛、肋間痛が広い範囲に亘って起きている。 胸鎖関節の鎖骨の体内方向への捩れの程度が重度になると腫脹が明瞭 となる。腕の前方挙上内旋、内転が出来なくなる。内外肋間筋と共に猫 背の原因となっている。胸椎の前落ちによる肺腔の拘縮と肋間の接近で 胸郭の可動性が失われているため息苦しさの自覚がある。胸鎖関節のズ レがすすむと胸椎下部の前落ちが進行し、心臓疾患が重度となる。バレ ーボールやバドミントン、テニスの選手、腹筋の強化のためとするタイ ヤ引きをした者には何もしていない者に比べて高い比率で胸椎の前落ち による心不全や病気と見なされていない心臓部の痛みや息切れ手足の冷 えを自覚しているものが多い。 一方の胸鎖関節だけのズレである場合は脊柱側彎症がその側だけに現 れ、両方にある場合は腹直筋との絡みもあり蛇行型となっている。胸椎 内の細かい蛇行もみられる。

(9)腹直筋 胸鎖関節の鎖骨の体内方向への捩れのバロメーターとなる筋である。 胸鎖関節にズレがある場合は必ず拘縮があり、圧痛がある。重度になる と軽い接触によっても激痛を感じる。また、随意性が失われ伸縮能力が 低下しており、仰臥姿勢から無反動で起床出来ない場合が多い。子供が 腹痛を訴えるのもこの状態であり、診察を受けてもどうもないといわれ るものである。また、冒頭に例示したように内臓疾患と誤診されるもの である。さらに細かいメカニズムが存在すると思われるが腹直筋の拘縮 がある場合は空腹感はありながら食事を始めると急速に食欲が喪失して しまうため痩せる者や食欲の喪失を補う工夫をしている者もある。 胸鎖関節のズレによる二次的ズレを起こす最大の筋でもある。腹直筋 の拘縮は骨盤全体のズレに繋がっており、特に仙腸関節のズレを引き起 こし、大臀筋、腸脛靱帯、大腿外側広筋、前脛骨筋の拘縮を引き起こし ている。この仙腸関節のずれは甲角を大きくする原因になっており上体 が前傾となり、臀部が突き出し、大腿外側の痛みや麻痺を起こし、X脚 の外観となり、膝関節障害の三大原因の一つであり、歩行時の下肢長母 指の内反のため躓きやすい原因となっている。 当然ながら腰の痛みが増悪する。大胸筋の項でも述べたように脊柱側 彎症の原因となる拘縮筋であり、腰椎の椎体の捩れや横滑りの原因とな っており、なかなか解消しない腰痛の原因である。

(10)内外腹斜筋 腹直筋と共に鎖骨の捩れの程度を確認する場合に腹直筋の拘縮が消え ても鎖骨の捩れが存在する限り最後まで圧痛が消えないので克明な矯正 には大腿の薄筋などと共に調べるポイントとなる筋である。

(11)大腿二頭筋、半腱様筋、薄筋、半膜様筋 鎖骨の体内方向への捩れのバロメーターとなる筋群であり、また、胸 鎖関節の捩れの度合いを克明に示す筋であり、この四筋の拘縮度により どの程度の矯正を必要とするか、どの位置にズレが残っているかを確認 出来る。従って、矯正に入る時に真っ先に触れて確認するポイントであ る。 大腿内側から薄筋、半腱様筋、半膜様筋、大腿二頭筋の順に鎖骨のズ レの位置が胸骨柄上端から内部に向かっている形で対応している。特に 薄筋は胸骨甲状筋、胸骨舌骨筋と共に鎖骨の上方向へのズレの程度を明 瞭に現わしている 腸脛靱帯、大腿外側広筋の拘縮と共に膝関節障害の三大原因の一つで ある。これら四筋の拘縮が原因となっている場合は膝の半月が関節腔後 方へ飛びだしている場合が多い。

(12)短指屈筋、長指屈筋、足の屈筋群 屈筋群が拘縮しているため歩行時に指の伸展が出来ず、膝の伸展時も 指は縮んだままであり、地面を掴む動作がなく、接地時も足首のあおり のおかしさのため歩行が正常でない感覚がある

(13)眼球の直筋群 眼球が内部に引き込まれる感じで目が非常に疲れやすい。患者は目の 奥に強い圧迫感(重いという。)を持っている。目の動きが滑らかでな い事を感じている者もおり上下方向の動きが完全でない事を自覚してい る場合が多い。

(14)口蓋咽頭筋、口蓋垂筋 喉が詰まった感じがあり、嚥下動作時に引っ掛かりを感じている。

(15)大後頭直筋 胸鎖乳突筋と共に頭骨を傾け、回旋範囲を左右非対称にする。拘縮が 大きくなると環椎の横へのズレや捩れを起こす原因となる。

(16)大腰筋、腰方形筋、腸骨筋、大腿筋膜張筋 足を伸ばして座った時上体を直立にして膝を伸ばす事ができない。無 理に膝を伸ばすと上体を後方に傾斜させなければ姿勢を維持出来ない。 このため足を伸ばして座る場合は手を後ろに支えて座る。重症の者は 正座以外は出来なくなる

(17)脊柱起立筋(最長筋群、頭棘筋、頚棘筋、胸棘筋、半棘筋群、胸腸 肋筋、腰腸肋筋) 体の伸展、屈曲、回旋、骨盤の側方移動といったものが困難になる。

(18)多裂筋 (17)とほぼ同じ

ロ 肩方向へのズレ
胸鎖関節の胸骨柄と鎖骨の間に隙間がある。

(1)烏口腕筋 胸鎖関節の肩方向へのズレのバロメーターとなる筋である。ただし非 常に細いので押さえる角度が微妙に違うだけで痛みを感じない。しかし 正確に触れている場合は完全な矯正が出来るまで圧痛が存在する。肩関 節の伸展と外転時に痛みがある。

(2)短橈側手根伸筋、総指伸筋 握力が低下している。軽症の場合は短橈側手根伸筋の拘縮のみが強く 握り拳を作った時、指が完全に曲がらず指先が掌丘を押さえる事が出来 ない。これは1〜3指にのみ起こる。ズレの程度が重症になると総指伸 筋側も拘縮が進むため全握力が低下する。この状態で握力の必要な動作 を継続すると尺側手根伸筋が疲労し、拘縮して痛みが起きる。この段階 になると下橈尺関節や手根骨群は正常な関節関係を失い、手首が正常な 関節運動を出来なくなり、静止時でも圧迫感や、痛みを感じる。

(3)手の短母指屈筋、手の母指内転筋、母指対立筋、手の長母指屈筋 親指は他の指との向かい合わせができなくなり、患者に軽く握っても らうと親指は伸びたまま他の四指と同じ向きになり、少し力を入れさせ ると第二指の中節骨を押す形となり、強く握り締めると親指が『く』の 字に曲がり、他の指を押さえる事ができずその末節骨の内側に滑り落ち る。これらの筋の拘縮による症状の実態は冒頭に例示した姿となってい る重要なものである。それだけにこのズレを治すだけでも患者の不自由 は相当に軽減されるものである。 胸鎖関節の鎖骨の倒れ込みがあるあいだ手の短母指屈筋と長母指屈筋 の腱鞘は拘縮している。さらにこの状態が長い患者ほど種子骨が大きく 胸鎖関節のズレが消滅すると次第に消滅する。

(4)短母指外転筋、長母指外転筋 母指が開かなくなると共に動作範囲が狭くなり、突指が多くなる。 手の船状骨と大菱形骨、小菱形骨の位置がズレている場合が多い。

(5)各屈筋 握ったり開いたりを早いスピードで繰返させると指の伸びが完全にな らなくなる。握る速度もすぐ低下する。

ハ 内側へのズレ
胸鎖乳突筋の後縁の鎖骨付着部に拘縮がある。鎖骨胸筋筋膜の滑りが 大きい。鎖骨下筋の腫脹がある。

(1)上腕二頭筋、上腕二頭筋、腕橈骨筋、尺側手根屈筋、橈側手根屈筋、 長掌筋 胸鎖関節のズレがあると上腕の力瘤が貧弱になり、肘の伸縮性が失わ れる。肘を体側から離すと手首や腕の力が入らなくなる。

B 鎖骨と烏口突起間の円錐結節部

イ 鎖骨の結節部への落ち込み
棘上筋に拘縮が存在する。

(1)僧帽筋、肩甲挙筋、棘上筋 肩凝りの原因である。棘上筋の拘縮の度合いによって肩凝りの程度が 判別出来る。僧帽筋、肩甲挙筋の拘縮が起きる。結節部の矯正の必要度 (肩凝りの消滅度)は棘上筋の拘縮が消滅した時であると見なせる。

C 肩鎖関節部

イ 体長線下方向へのズレ

(1)三角筋 手に負荷が掛かった状態で腕を横に上げる(外転)する事が出来ない そのため患者は肘をまげて手の動作を行う。

ロ 後方へのズレ

(1)烏口腕筋 前出 D

未確認のもの(矯正治療の結果拘縮が解消している事を患者が教えてく れるがどの関節面の矯正によって解消したのであるか確認が出来ていない もの)

(1)頭蓋表筋 頭皮が弛んで後方に禿げ落ちていく感じであったものがしっかりと張 った感じに変り眉がずり落ちそうな感じであったものがしっくりと落ち 付いた感じである。

(2)心臓、肺 重苦しいものが取れてほっとした感じで胸部全体が軽くなる。

(3)頭部、足の裏 頭の芯から詰まっていたものがすーっと抜けていった感じで、足の裏 で火花が飛び散った感じがする。(この感じは数秒間継続する。捩れが 完全に矯正された瞬間起きるものであるので矯正完了の目安となる。)

(4)網膜 目の芯が軽くなる事と、目のみえ方がはっきりとして来る。視力表で の検査ではよく見える事になっているが、実生活のなかでは目が霞んだ ようですっきりと見えなかったものが鮮明な映像が見える事を感激の表 現で話す。

2 胸骨結合部のズレによる症状
胸骨結合部のズレは殆ど陥没であるが、事故等により突出の状態になって いるものが極く希れに存在し、弛緩状態になっていた。

イ 内側への陥没
胸骨結合部にはかすかな陥没であっても圧痛がある。

(1)腓腹筋、ヒラメ筋、後脛骨筋 三筋とも脹ら脛の腫れとして感じる。ズレの矯正度がすすみ症状が軽 減するにつれて後脛骨筋だけが触れる様になり、完全に矯正されると存 在感が消滅する。

(2)長母指伸筋 長母指伸筋の腱の緊張硬化がある。長母指の外反が起きている。歩行 時に長母指の関節痛がある。胸骨結合の矯正により消滅する。

(3)第三腓骨筋 足首の伸展が出来ない。土踏まずが消える。正座した時に足首が伸び ないため足首を伸ばして座る事が出来ない。矯正すると土踏まずが復活 し、足首を完全に伸ばして座っても苦痛がない。

(4)輪状甲状筋 声の大きさの調節が出来ない。

(5)後輪状披裂筋、外側輪状披裂筋、斜披裂筋、横披裂筋 息が調節出来ず発声がスムーズに出来ない。声が掠れてちぐはぐな発 声になる。

(6)声帯筋 (3)の筋群と分類は困難で一群としての作用と思われるが声の微妙 な調節と声の艶が出て来る事で分る。

(7)上中下咽頭収縮筋 嚥下動作が滑らかに出来ず、嚥下の際に引っ掛けたり支える感じがあ る。

ロ 外側への突出

(1)腓腹筋、ヒラメ筋、後脛骨筋 胸骨柄が陥没している場合に拘縮していたものが弛緩するものと思わ れるが例数が少なく、触診によって触れ分けたものは以上三筋のみであ り、呼吸がスムーズに出来る様になり、息苦しさが消えた自覚を聞いた にとどまっている。
この例は、胸骨柄が接する関節の場合は拘縮のみが存在して弛緩は生 じないとしたのが誤りである事を示唆しているかもしれないが、陥没が 殆どの人に存在するのに比べれば、突出は例外的な事故が原因であり、 確認は出来ていない 以上が胸骨柄が接する関節のズレによる症状でありますが、僅か上下二個所のズレによって、また左右のズレのありなしによって非常に広範囲に複雑な症状を起こす関節である事がご理解頂けるものと思います。

胸鎖関節のズレによるものは、ズレの形によりイ、ロ、ハで分類した中の筋はそれぞれの筋について同時に拘縮が起きているものです。当然の事として、そのズレが矯正されるとそれぞれの分類内の筋の拘縮は消滅するわけです。 これらの分類はまだ不完全であり、勘違いも多いであろうと思われます。今後の諸氏の検証によって修正をして頂きたいと願っています。

1987年8月31日

著作権者 上村 巌


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