名医の条件(良い歯医者さんにめぐり合うために)
はじめに
歯科医療の発展は目覚ましく、最先端の治療技術も進展して日進月歩という感があります。
幸運にも、いま、患者さんはこのように進んだ歯科医術を受けられるようになってきています。
開業している歯科医師も、患者さんのより良き治療のために、これらの進んだ治療技術を日常の臨床に導入するために
真剣に研鑽するとともに、手先を絶えず鍛錬して技術を向上していくよう努力すべき責任があります。
このような考えで日々努力している開業歯科医の先生は数多くおられます。
しかし、患者さんにとっては、どの先生がこのような考えの先生であるかを知ることはほとんど不可能です。
そのために今回、皆様に少しでもお役に立てないものかと考えて、この項を設けてみました。
ただし、以下に紹介するものは、平成9年2月に発刊された主婦の友社の
「最新全国歯科名医ガイド(よい歯医者さんを選ぶために,賢い患者さんになるために)」という著書の、総監修を私が務めました。
名医2200人の歯科医師の選定作業は、主婦の友社が独自にし公開されましたが、私は、以下に紹介している、
「歯科名医の条件とは」、「よくわかる歯科専門用語ミニ事典」、「保険診療と、自費診療の違い」などの執筆を担当しました。
今回のものは、それを新たに校正し直して皆様にさらにわかりやすくしたものです。
さてここで、本来の歯科医療というものの原点にもどって、お互いに考えてみることにしましょう。
歯科医療とは、全身身体医療の中の大事な一部門を占めています。
歯科といってもそれには全身の医学的な基礎や科学的な思考と科学的な根拠に基づいた医療が極力求められていれます。
もう少し分かりやすく言うなら、これは、専門家の経験や勘に基づいた医療ではなく、
世界中の適切な方法で行われた最新の科学論文・研究結果に基づいて評価され、科学的に信頼できる
医療が提供されるべきであるということです。
歯科医療としての本来の一つの目標というものは、“歯が人間の一生涯と共に、その役目を務めるようにさせる”、
さらに言い換えれば“歯の不老不死を願うこと”を主な目標としています。
全身の不老不死とは違って、歯は、患者さんのいろいろな良き条件が重なること、
そしてそれに加えて歯科医師の卓越された技術が差し延べられたりすることで、
充分にその実現は可能となり歯は一生涯保つはずです。
そこで、本来の歯科医療・医術とは、口の中(口腔)に病気を作らないように予防することが主な目的です。
万一病状が出たとしも医術を駆使して健康を回復し、保持増進させることにあり、
みだりに“歯を抜いたり”“神経を取ったり”などの、歯を殺したり、歯を抹消したりするのではなく、
“確実な治療をして残す”ことを言うのです。
つまり、口腔を一つの器官・臓器として考えれば、全身の各器官・臓器を守り育てることができるものも
まずは口腔の働きからであり、その働きの大部分を占める歯の、1本1本の健康を考えて、
生涯にわたり健康を保持し続けさせるということです。
例えば、入れ歯を作ることは歯科医療の目的ではなくて、入れ歯を入れないですむようにすることが本来の歯科医療の目的です。
「いかにうまく入れ歯を作るか」ではなくて「入れ歯を追放するにはどうしたら良いか」、
「歯に傷をおわせないようにするにはどうしたら良いか」を考えるのが進んだ考えの歯科医療です。
つまり、歯科治療の補綴(ほてつ)や修復というものは、
歯科医療がその目的が果たせなくなったときに次善の策として行われる医療です。
読者の皆様も、このような考え方を持つ先生方と一生涯のお付き合いをして、むし歯も歯周病にもならない、
一度治療した所が再治療することにならないような名医の適切な指導の元で
一生自分の歯で噛めるように協力しあって欲しいと願っています。
そしてさらに、家族や親族、孫、そして親しい友人などの口腔衛生もこれらの先生方に任せ、管理を請うとともに、
さらに噛むことの大事さや栄養摂取方法なども指導してもらって欲しいと思います。
治療から食事指導までもできる良き歯科家庭医(デンタル・ホームドクター、または、かかりつけ歯科医師)
にめぐり合われ、歯科医院をとおして全身の健康のために大いに利用していただきたいと願っています。
名医の条件
歯科医院について
1.待合室が混んでいるからといって、良い歯科医院とは言えないのでは
昔は、歯が痛かったり、腫れたり何か問題があるときだけ歯科医院に行って治療してもらっていました。
それは、その歯が治れば終わりという“1歯単位の治療”であり、当然、歯科医院はそういう患者さんでごった返していました。
前にも述べたように、現在は良心的な手の込んだ治療をしたり、最先端医術で駆使したりして医療を行えば、
当然多くの時間が必要になるのです。したがって、患者さんの治療に充分な時間を当てるための
計画・時間約束診療の体系を取らざるを得ません。これを“1口腔単位の治療”と言い、現代の治療方式です。
計画も、時間の設定もなければ、当然患者さんも待されます。しかも治療回数も多くなるし、手の込んだ治療どころではありません。
患者さんに追われた歯科医師はモタモタして念の入れた治療はできませんし、さらに通院回数も増えてきます。
“先生は上手だから患者さんが多い”という考えは、今は間違った考え方になりました。
2.清潔な歯科医院(消毒観念)はまず信用できる
医院の入り口はその歯科医院の顔であり医院の内容を間接的に表示します。
ドアのガラスや入り口の掲示板が汚く汚れていたらどうでしょうか。入ったらいやな臭いが鼻をついたり、
玄関が掃除されてなく、患者さんの履物が散乱していたり、何年も使ったような汚れたスリッパが箱の中に
ひとまとめに入れてあったらどうでしょうか。
診療所を清潔に保つことのできない歯科医院は消毒に対する観念が薄いと言えるでしょう。
また、歯科医師や歯科衛生士、歯科助手が治療前に手を洗わないことや、絶えず髪の毛をいじったり、
血の付いたエプロンをそのまま使っていたり、血の付いた器具を患者の胸にかけてあるタオルで拭いたり、
院長やスタッフのズボンや白衣に血の染みがそのまま付いているのも考えものです。
3.待合室が整頓されていない歯科医院はしっかりした治療ができないのでは
鉢植えが水切れになっていたり、待合室の、外から内容物が見えるクズかごに、前の患者さんが捨てた血のついた綿花や
ちり紙が入っていたり、待合室に古い新聞、雑誌やパンフレットが散らばっていたらどうでしょうか。
また、待合室には子供にも見せられない写真が掲載されている週刊誌やマンガや、歯科とは全く関係ない雑誌が置いてあり、
歯科の啓蒙書は全く見当たらない歯科医院。
整理・整頓していない歯科医院は自らの不潔と医師の職業意識の欠落を表示しているようなものです。
4.“家から近い”“便利だ”“最近出来た歯医者だから試しに行って見よう”“親切だ”“豪華な作りだから”は、
歯科医の技術や良心的な歯科医院とは関係はないのでは
調査では、上のような理由で選んだ患者さんは約70%強で、「技術が優れているのを聞いた」、
「良心的治療をされているといううわさ」、「良く勉強をしている」というので選んだのはわずか10%にも満たないといいます。
目の前の事象だけで歯科医院を選択せずにじっくりと評判などを調べてみるべきです。
5.職員(スタッフ)が生き生きとして、にこやかに患者さんの世話をしている歯科医院は名医の条件にあてはまるのでは
受付の暖かい笑顔と優しい声で迎えられ、丁寧な言葉使いとテキパキとした応対がある歯科医院は、
院長が患者さんの治療に対して前向きであり、そしていつも暖かい優しい真摯な態度で職員や患者さんに接しているからです。
スタッフに話しかけても、いつもすぐに快い返事がかえってくる歯科医院です。
6.職員(スタッフ)が爪を伸ばしていたり、マニュキュアを塗っていたりしたら、
歯科医院の細菌に対する観念はゼロに等しい
また、汚れた診療着を着ていたり、髪の毛に触って手も洗わない、落とした器具も拾ってそのまま先生に渡す、
大きな音を立てて機器や器具を扱ったりする助手がいる歯科医院は考えものです。
7.治療室の管理が悪い歯科医院はだらしがないので治療にも影響があるかもしれない
治療室の床が、綿花や治療時に使った材料で汚れていたり、治療の器具を置く台(ブラッケットテーブル)の上に汚れやゴミ、
前の人に使ったと見える器具がまだそのままになって置いてあったりする。
治療室に異様な臭気が漂っていたり、口をすすぐ金属のコップが汚れていたりする。
そういう歯科医院はだらしがないし、清潔を保たなければならない診療室が汚れていて器具も整理されていない
無神経な歯科医院は、名医とは言えないのではと思います。
8.診療室、診療器械は古いと思われるが、手入れが行き届き清潔さが感じられれば良い
診療室が雑然としたり、器械器具、棚にホコリがたまっていたりすれば院長の腕を疑ってみる必要があるのではと思います。
長年、歯科医師の手と足となり分身となった良く手入れされている器械は、
いくら新しくて豪華な使い慣れていない器械よりも多くの価値があります。
医院のシステム、院長について
1.総合検査をしてくれる歯科医院であるかどうか
“口腔は全身の臓器・器官の一つであり、歯はそれを護る衛兵である”と例えるように、
口も全身の臓器・器官としてとして総合的に検査し診断を考える歯科医師は本物と考えて良いと言えます。
しかも歯の健康は全身健康に密接に関係しているので、このことに関しても説明をしたり
問題を指摘してくれたりする歯科医師は名医だと言えます。
問題が出た歯だけを治療しただけで、後は放置という歯科医院は、昔から言われている歯の大工さんとなんら変わりありません。
2.歯ブラシの使い方を教えてくれる歯科医院であるかどうか
歯みがきの仕方を、しつっこいほど指導する歯科医院なら信頼でき治療も安心であるということができます。
むし歯、歯周病のその原因は、手入れが悪く歯に蓄積した細菌塊(歯垢・プラーク)です。
それらの病気の回復が早まるのも、また再発させなくするのも歯ブラシの使い方しだいです。
自己流では悪化させるばかりです。
指導もなされない歯科医院で歯の根本的な治療を受けても結局は無駄とならないとも限りません。
以上に加えるならば、歯科医師やそこに働く全職員の歯がきれいであれば名医の条件の資格がある歯科医院だと思います。
3.緊急患者や、現在口の中に問題を持って困っている患者さんを大事に扱わないような歯科医院は名医と言えないのでは
歯が痛くて駆け込んでも、受付がすぐに、「うちはアポイントでやっているのですが・・・・」
「当院は完全予約制ですが・・・」と何よりもまず言うような歯科医院があります。
それは患者さんを全く無視している言葉だと思います。
医院側の都合ばかり言って、患者さんを思いやらない悪い歯科医院のシステムであると信じます。
反対に「お痛みですか。それはお困りですね」とまずこのような言葉が出るような歯科医院は名医の資格があると思います。
痛みや困ったことが、1回で解決ができたどうかも名医の判断ができます。
痛いときの緊急処置ではほとんどが1〜2回で止めることは可能です。どうしても痛みが続く症状のときには、
その原因と対策を詳しく説明し治療してくれて、さらに家庭でどのようにしたら良いのかを
親切に教えてくれるのは良心的な歯科医院と言えましょう。
4.患者さんにすぐに迎合しないで(例えば、「抜いてくれ」「神経を抜いてくれ」「痛い歯だけを治して欲しい」など
最初から言う患者さんに対して)まず緊急の処置をして、次に良く検査してから説明をして
診療方針をはっきりと示す歯科医師は信頼できる
迎合してすぐに歯を抜けば、もう二度とその歯は帰って来ないし、神経を抜けば歯は死んだことになります。
これらは取り返しがつきません。迎合してすぐに歯を抜いたり神経を抜いたりするというのは、
その後の全身の健康にとって大変なことになるということを知らない歯科医師です。
抜くか残すかを決定するのには、歯を触って、レントゲン写真を撮り、
歯ぐきの方のポケットの深さを測ったりしてから決定するものなのです。
急性の炎症が治まれば抜かなくても良い状態にもどる場合がかなりあるし、程度によっては神経を抜かずにすむ歯も多いのです。
反対に、ちょっと見て、「ああ、これは全部抜いて総入れ歯だわ〜」というような歯科医師は大いに考えものだと思います。
5.病気の現状、治療方針、治療内容、治療費用、治療日程などを総合診査の後に詳しく説明をしてくれたかどうか
じっくりと話をきいてくれ、以上のような説明を良くしてくれて、お互いの責任を確認しあう歯科医は
治療内容もしっかりとしていると思います。
まさにインフォームド・コンセント(情報提供と同意)が現れている歯科医院です。
しかも患者さんが満足いくように治療の進行状況も説明してくれたり、
患者さんの希望もしっかりと聞いてくれたりする歯科医師は信頼ができると思います。
6.定期検査(定期検診)をしっかりとしてくれる歯科医院は信頼できる
高度で最先端の治療方法で治療した場合、その結果を後日確認するためにも定期検査は欠かせません。
その際、むし歯になっている場所には削って詰めたりかぶせたり、義歯を入れたりします。
人工のものを口の中に入れるのですからそれには必ず耐用年数というものがあります。
ここで専門の学会で発表されている平均耐用年数というものを例に挙げてみましょう。
前歯や、奥歯に詰める保険のつめものレジン(合成樹脂の詰物)は約3年間であり、
保険の金属のかぶせもの(鋳造冠)は約5年7カ月ということが口腔衛生学会で発表されました。
しかしこれは平均の年数ですから、むし歯に再び侵されれば、それ以前にも早くだめになるということです。
保険の義歯も同じで、約5年が限界のようです。
そうならないように、つまり耐用年数を少しでも延ばすには定期検診が欠かせません。前以て患者さんに指導し、
歯科医院では定期検診を行っていることを伝えたり、定期検診日が近付けば連絡したりする歯科医院は
名医の条件にあてはまると思います。
☆ 定期検診のことで患者さんに一言お知らせしておきたいことがあります。
まず“自分の健康は自分で守る”ということです。言い換えれば“自分の歯は自分で守る”ということです。
外国の定期検診は、その時期が来たら、患者さん自ら自分や家族のかかりつけの歯科医師に連絡して
6カ月定期検診の予約をするのが普通です。
残念なことに日本ではこのことが普及していませんし、医院側から呼んでくれなければ怒ったり苦情を述べたりする患者さんもいます。
欧米人のほとんどは、かねてから歯を大事にして口腔ケアには手間も費用も惜しみません。
ほとんどの人がかかりつけの歯科医を持ち、年2回の定期検診と予防処置や
クリーニングを受けるための自らの歯科医院訪問は欠かさないのです。
ですからほとんどの人が大きな口を開けて笑っても“奥まで真っ白い魅力的な歯”がいつでも輝いているのです。
7.予防について熱心に指導をしてくれる歯科医院は良い歯科医院
むし歯や歯周病になった口は、早期発見、早期治療がぜひとも必要です。
その治療と処置は歯科医師にゆだねるべきです。
しかし、むし歯の治療で歯を削られて人工の詰物をするため歯は傷を受けた歯になってしまいます。
そして、たとえ歯周病が完全に治ったとしても、どちらも病気にかからなかった歯よりもそう長く保たないというのは当然です。
もうこれ以上悪くしてしまわないようにどうしたら良いのか、院長も職員全員までもその予防について
熱心に指導をしてくれる歯科医院こそ患者さんのためを思ってくれている歯科医院です。
8.患者ばなれの良い歯医者はかえって名医では
歯科医療はとても奥が深く、いろいろな専門があります。
また歯科医師も得意不得意の能力がそれぞれで差があります。何でも万能で卓越している歯科医師はほとんどいません。
歯科医師には自分の知識に照らし合わせても分からないことだってあります。
歯科医学に熱心で診断能力があり、患者さん思いの先生は、その時には
「私ではわかりません(出来ません)ので私のよく知っている専門の先生に紹介をしましょう」とはっきりと言う歯科医師は名医で、
自分にとても厳しい先生です。また紹介できる歯科医師だけではなくて、歯科医師以外の専門医と連携を取ったり、
その方面でも勉強を欠かさなかったりする歯科医師は信頼できます。
9.歯科医師、歯科衛生士、歯科助手、受付事務、歯科技工士の職業の分担がはっきりとして、
その業務がしっかり守られている歯科医院は信頼できる
スタッフ(歯科医院の職員)が決してしてはならない歯科医師の治療を院長からまかされている場合には
医事法違反として処罰せられます。
歯科医師は6年以上かかって歯科医学・医術を学び、その後も歯科医師である限り絶えず勉強をしなければなりません。
専門の診療を行うにはそのくらい長期間、そして休むことなく歯科医学の発展と共に新知識を学ぶこととその訓練が必要です。
歯科医師は、だれもができない専門の知識と国の免許を持った人です。
さて普段の歯科医院では、患者さんには職種も業務の区別もわかりません。
そのために歯科医院ではそれが分かるようにと待合室に全スタッフの職種と名前の紹介板が掲示してある所もあるし、
全員が職種の入ったネームカードを胸に付けているところもあります。
これらの歯科医院は、院長の歯科医療に対する責任の現れで良いことです。
10.予防やアフターケアに熱心な歯科医院かどうか
むし歯や歯周病にかかってしまったのは、ほとんどが歯を丹念に掃除しなかったり、
食事や食べ物を考えて食べなかったり、良く噛まなかったりしての生活習慣の乱れで起こったものです。
歯科医院でその病気の場所を、時間をかけて治療され、ブラッシングの仕方など、予防方法の指導を受けたり、
家庭での悪い食環境も指導を受けたりしたとしても、それらを習慣化して一生懸命に実行しなければすぐに再発してきます。
むし歯を治して歯に詰物をしたり冠をかぶせたり、継ぎ歯や入れ歯を入れたり歯周病を治したりしても、
定期検診でチェックを繰り返さなければ健康で最適な状態を保つことはできません。
長い目で歯の健康をいつも考えてくれる歯科医師こそホームドクターにふさわしい先生と言えます。
11.患者さんも“目先の快さ便利さ”にとらわれずに、いろいろと歯科医院の実情を知る必要がある
まず大切なのは技術の問題です。
痛くしない、粗暴な治療ではない、真剣に取り組んでくれている姿勢が伺える、
器具の取り扱いや消毒をとても気にしている、良く説明をしてくれる、
気を紛らわしてくれるための方策があったり楽しい言葉をかけたりしてくれる、
一度治した歯がよくもつ、予防やアフターケアに熱意をかけているなど、これらは名医の大切な条件です。
もしも患者さんが良い歯科医院を知りたくて他の人に聞くときには、その人が、
その先生にどのくらいかかっているか、どのくらい前に治療を受けたか、以上のことをやってくれているかが問題です。
目先のことにとらわれないようにすることです。
12.入れた金属などの高さが高かったときの対応の仕方で違う
「すぐなれますよ」という歯科医にはかからないほうが良いと思います。
歯に入れる金属は非常に硬いものを利用して作られています。
高いまま調整をしてもらわずに放置していたら歯が緩んでくる咬合性歯周外傷か、
あごの関節か痛んでくる顎関節症になってくるかもしれません。
ひどくなると不定愁訴や偏頭痛、肩凝りいろいろな全身症状が現れて来ないとも限りません。
高かったとき何度も良くなるまで調整をしてくれる歯科医師は信頼できます。
他の歯よりも背の高い歯が入った場合も同じことが言えます。
「気のせいですよ」という歯科医師は患者さんのことを案じていませんからもっと悪いと思います。
入れたのが高いからと反対のあごの歯をどんどん削ってしまうのも感心しません。
13.入れた後しみる場合。そのとき歯科医師はどのような対応をしたか。
また良く説明をしてくれる先生
むし歯で生きている歯に、金属の詰め物やブリッジの橋の柱の部分になっている歯が、
入れた後しみる場合、冷たいものに軽くしみるのは良くあることです。
というのは、金属は熱の伝導率が高いので最初は反応が高かったり、
削ったときの刺激でこのような現象が短期間起こったりする場合があります。
それは、人によって差がありますが約1,2カ月以内に解消してしまいます。
しかし、しみがひどくなったりお湯でもしみるようになったりしてきたら歯の神経(歯髄)が侵されだした信号ですから、
入れた先生に良く診察してもらうことです。
良心的な歯科医院ではそのような現象を前以て話をしておくし、治療時にそうならないよう、
最小限にくい止められるために慎重な処置をするものです。
14.詰め物もかぶせものもブリッジも、そして入れ歯も清掃が簡単にできやすくしてくれている歯科医院は名医の条件
普通の清掃法で歯垢(プラーク,細菌塊)がきれいに、しかも容易に取り除けるような形の物を入れて、
その部分の清掃の仕方をていねいに教えてくれる歯科医院は信頼でききます。
@ 段差がついて入れてある金属の詰物
A 横にはみ出した銀アマルガムやレジン(合成樹脂)の詰物
B 土手の上にまたがって橋の下が全く掃除ができないようなブリッジ
C すその方が広がったり開いたりしている不適合な冠のかぶせもの(バケツ冠という)
D 歯が残っているあごにいれた義歯が容易に外れなくて掃除ができにくい。以上のものには問題があります。
15.患者さんに対して誠実に対応しているか
患者さんの訴えを充分に聞いて、親身になって心配してくれて、しかもその場所の解決に真剣に当たっているかどうかということです。医療は医師と患者さんとの信頼関係の上で成り立つものです。
歯科医師の何げない会話の中で不信感が出てくるようでは、良い治療やホームドクターは芽生えません。
「ここは予約制です」、「ちゃんと時間を予約して下さい」、「いま予約の患者さんでいっぱいです」などのように対応するのではなく
「予約した診療日に限らず痛くなったらいつでもいらっしゃい。痛いのは待てませんからね。
どうにかします」、「痛いときにはまずこうしなさい」と親身になって声をかけてくれる歯科医師は思いやりがある先生です。
16.歯科医師の説明と、スタッフの説明が違っていてまちまちであり、どれを信じて好いのか分からない
そこは、院長が職員を指導しない、全部の職員といつも一緒に勉強をしていない歯科医院だと思います。
治療方針や患者さんへの予防の指導もまちまちですから完全な治療も先ざきの健康管理も危なくなります。
17.歯科医師が女性のスタッフと余りにも馴れ馴れしく話していてニツクネームや名呼びをしている。
診療所に先生の趣味を持ち込んでいる(ゴルフパターを振って練習をしている)なども考えもの
これらの行為は、日々の歯科医療を真剣に考えて患者さんのために尽くしているのだろうかと疑いたくなります。
18.外に出て一般の人達とボランティア活動をしている歯科医師
歯科医師どうしでいつもかたまって行動をせずに、世間に出て一般の人と付き合い、特にボランティア的な活動をしている先生。
そして先生は会う人ごとに歯の磨き方などや他の予防方法や、相手の質問に対して親切にいろいろな貴重なアドバイスを、
熱心にそして分かり易く話してくれる歯科医師。
19.他の患者さんのことを批判したり不平をもらしたり、悪口をいつも言っている先生。
そして説明は分かりにくい専門用語ばかりで、世界一の名医と言わんばかりに威張っている先生。
その歯科医師の教養と人格が疑われます。
20.話をするときに、いつもタバコの臭いがしている歯科医師。
タバコを吸った後に、指を消臭剤で清潔にしない歯科医師。
診療室でガムを噛む歯科医師。診療室で髭を剃っていた歯科医師。
汗臭い、息が臭い歯科医師。マスクが汚れている歯科医師。
自分自身の歯が汚れている歯科医師。酒の臭いがした歯科医師。
以上は名医の資格があるかどうか疑わしい
「健康を守るべき立場にある歯科医師がタバコを吸っているとは」、「信じられない。歯科医師とあろうものが」、
「時たま先生は酒の臭いがしている。私の歯の治療は大丈夫だろうか?」、「もうちょっと先生らしくしてくれれば・・・」
以上は最近聞いた患者さんからの言葉です。
保険診療か自由診療かを決めるのは患者さん自身。
治療計画の説明によく耳を傾け、わからないことは質問すべき
保険診療は、健康保険支払い制度で決められた枠内での治療です。保険診療でも治療はできますが、限界があります。
保険診療を希望する場合、それを承知のうえで依頼すべきです。
そして保険診療ではまかないきれない方法が、自由診療になります。
なぜ、すべての治療が保険の枠内に入らないのでしょうか。
最新の歯科医療の技術や材料が保険の枠内になるには、健康保険の財政上の問題や法律上の手続きなど、いくつかの規定があり、
すぐには保険診療で行えるようにはならないのです。
保険診療と自由診療、いずれを選択するかは、患者さん自身の問題です。
歯科医師は、初診の際に患者さんを十分に診査して最善の治療計画を立てます。それを患者さんにくわしく話すのが普通です。
患者さんは先生の説明によく耳を傾けるとともに、自分にとっての歯の価値をよく考え、希望を話すことが必要になります。
わからないことは先生やスタッフに質問をすべきで、それに答えなかったり、
あいまいな応対されたりしたら自由診療をお願いすることは疑ってかかりましょう。
特に自由診療は費用がかかりますから、医院側がよく説明をし、患者さんが納得してから治療に入ることが重要です。
加えてそれにかかる費用、支払い方法などを事前に説明してくれるのがほんとうです。
説明後、治療計画を了解したら、次回の診療日時を約束します。
治療計画に不満がある場合、たとえば自由診療ではなく保険の範囲内での診療を希望するなら、
保険診療内での計画を先生に再度立て直してもらい、次回の診療日時を約束します。
その日に決めかねるのでしたら、家庭に帰ってから家族と話し合い、返事をするのでもよいでしょう。
ここで患者さんにくれぐれもお願いすることは、
いくら自由診療の最善の治療をしたからといって、再び虫歯にならないわけではないということです。
やはり歯みがきなどの、口の中の手入れを十分にし、定期検診を受け「健康管理」をしなければすぐに悪くなります。
しかし、自由診療での最善の治療のほうが、長持ちし、最善の口腔状態へ導くことは明らかです。
さて、個人的な意見で非常に恐縮なのですが、私は外国に出かける機会がよくあります。
そこで現地の方によく尋ねられる質問があります。「なぜ日本からの旅行者は歯が悪いのですか?どうして高級品の買い物に殺到するのでしょうか? 高級品を買うことよりも歯をちゃんと治すことのほうが、第一ですのに……」。
私も同様のことを常々思っています。
シャネルやグッチ、ルイビトンなどの高級品を、長時間の行列に加わっても外国の有名店で買い
グルメを食べあさるよりも、まずは自分の健康のため、歯に投資してみてはいかがでしょうか、と。
歯痛地蔵尊
保険診療と自由診療についての、もっと詳しい解説
歯科の治療には、保険診療と自費で払う自由診療があります。
保険に加入しているほとんどの患者さんは健康保険で治療を済ませたいと思うのは当然ことと思います。
なぜ、歯科の治療にはこのような2つの診療方法があり、なぜ、患者さんはその2つの方法を選択しなければいけないのでしょうか?
健康保険での治療は、早く言って枠内の治療方法(制限治療=枠内治療)と言います。
それは、健康保険支払い制度で決められている枠内の治療方法で治してもらうということです。
この保険診療でもほとんどが治療できて噛めるようになります。
しかし、これにはいろいろな治療方法での限界があります。
保険の範囲内で治療を希望するときにはそれを十分に承知の上で先生に依頼すべきです。
絶え間ない歯科医学の発展のために研究を積んで考え出される多くの最良の技術、
それに要する時間と高度な材料やその他を必要する治療(先端技術、最先端技術)を、
すぐに保険に入れることは健康保険の財政上には限界があります。
それが適用できるようにするには健康保険法の、そのための法律が新しくできなければ不可能です。
それには非常に時間がかかりますし、健康保険財政問題が絡んできます。
また歯の治療で仕方なく人工のものを口の中に入れるのですから、それには必ず耐用年数というものがあります。
ここで専門の学会でも発表されている治療したものの平均耐用年数というものを例に挙げてみましょう。
前歯や、奥歯に詰める保険のつめものレジン(合成樹脂の詰物)は約3年間であり、
保険の金属のかぶせもの(鋳造冠)は約5年7カ月です。しかし平均ですからむし歯に再び侵されれば、
それ以前にも早くだめになるということです。保険の義歯も同じで約5年が限界のようです。
適確になされた自由診療は倍から3倍以上の耐用年数やそれ以上の利点があります(後述の参考の項)。
その保険では政府の保険財政を賄いきれない枠内から外された治療法が自由診療です。
患者さんは、これらを正しく理解する必要もありますし、歯科医院ではこのことをわかりやすく説明する責任もあります。
その後に、どちらかを選択してどの治療方法を決めるかは患者さん個人しだいなのです。
(参考)保険治療と自由診療治療の比較例(多くある診療の中での一部分)
<レジンジャケット冠とポーセレン冠の比較>
どちらも、前え歯などの外から見える部分の歯に、プラスチック(合成樹脂)だけで作る冠(かぶせもの)、
または裏は金属で表面はプラスチックで作られた冠。
これらは保険診療で出来ますが、陶器で作るポーセレン(セラミック)冠は全て自由診療となります。
これらの二つのものをもっと詳しく解説しましょう。
◎レジンジャケット冠
レジンというと、プラスチック(合成樹脂)のことです。
ジャケットというと、洋服の種類でいう、すっぽり上から覆う“ジャケット”のことをいいます。
この治療法は、見た目には、元の健康な時の自然な歯の色に作ることができますが、
プラスチックなので脆く壊れやすし、早期に表面の艶がなくなりやすく、時がたつと変色して汚くなります。
そしてすり減りやすく、次第に中の濃い色が透けるようになり早い時期に変色します。
また、プラスチックは、もともと石油製品であるので、歯ぐきになじみにくく周囲組織に害を起こさせやすいのです。
歯科に使用されるレジンは水を吸収しやすく、しかも常に唾液の中、
つまり水分の中で使用されているので接着力が減少して外れ易くなります
。平均耐用年数は約4年です。ですから長くは使えず、同じ治療の繰り返しや時間の浪費になり、
結局は治療費が高くつくし、もろいがために、もし土台にまで害が及んだりしたら、歯をなくす結果となります。
要するにプラスチックはプラスチックしかありません。それはいつも家庭で使用しているプラスチックやポリ製品のようにです。
◎ポーセレン冠(陶材ジャケット冠)
陶材(セラミック)を使って形を整えてから高熱で焼いて作られた、
自然の歯にそっくりと焼かれた丈夫な陶器製のジャケット冠のことです。
全体を陶器だけで作る冠と、外から見える部分は陶器で作り中は丈夫な金属で作る方法があります。
陶器であるので、歯ぐきに刺激を及ぼすことがなく歯肉になじみやすく歯周病を起こさせにくいかぶせ物です。
レジンのように後で材質が変わったり色が変わったりしないので、いつまでも美しいきれいな状態が保てます。
また、すり減ることはなく長持ちします。
<保険診療の鋳造冠と、自由診療の貴金属冠の比較>
保険診療の鋳造冠は、保険で適用できる金属が決められています。
自由診療の鋳造冠は、歯の性質を十分に取り入れた、歯科専用に作られた金合金の金属冠のことで、
これには優れた点が多くあり高度で精密な技術にも可能です。
この二つの金属冠をもっと詳しく説明してみましょう。
◇保険診療の鋳造冠
国際的にみて外国では、歯科専用の貴金属が普通に使われていますが、
日本だけ、保険制度というシステムの中では、対象になる金パラジウムという代用合金の使用だけが決められています。
というのは、歯科専用として作られた高価な貴金属では、全部の保険に加入している患者さんに賄うだけの
保険の財源がないので無理なのです。
◎保険がきく、金パラジュウム(金パラ)冠の特徴
貴金属よりも精密に出来にくく出来上がりにはむらがあります。
そのため歯ぐきの回りの合わせが不十分にできたり、冠の縁が粗密にできたりすることがあります。
そこに歯垢が溜まりやすくむし歯が発生しやすいのです。
また、金属が不安定なためにサビが出たりして、そのサビや金属電位差による歯科金属アレルギーを起しやすいのです。
◎ 保険がきかない、国際単位の貴金属冠
金や白金を使った貴金属であるため、精密で柔軟性に富む冠が作れます
(たとえば、純金1グラムをたたいて引き伸ばしていくと、畳み2枚分に広げることができるように、金には柔軟性があります)。
口の中で長期に使うため、貴金属の方が安定していてサビや体にとって悪い物質がしみだす心配はありません。
そのことで金属アレルギーの心配も少なく、また、すり減ったりかたすぎたりすることにより、
隣の歯や相対する歯に負担をかけないためにあごの関節のトラブルも防止できます。
<自由診療の義歯と保険の義歯>
義歯には、保険義歯と保険がきかない鋳造床義歯があります。
以前は、総義歯だけの鋳造床には保険が適用できませんでしたが、最近、政府から補助金が出るようになりました。
良いものは良いからです。
保険義歯と、鋳造床義歯のもっと詳しい説明をしてみましょう。
◎保険の義歯
上顎(あご)の天井はプラスチックであり、薄くすると割れるのでそのぶん分厚くしなければならないために、
違和感が大きいし口の中が狭まってきます。
鋳造床義歯の天井の部分と比べて、プラスチック床義歯は熱の伝わりは悪く喉(のど)の方で初めて熱さを感じたり、
やけどをしたりするという患者さんもあり、そのため食事やお茶のおいしさも減退します。
さらに、プラスチックは時がたつと水分、食物の臭いを吸収して、細菌の発生を促して不潔になりやすいし、
口臭の原因となってしまいます。また時がたつとプラスチック自体も疲労を起こしてもろく弱ってきます。
歯が残っている方の保険義歯は、針金や金属板のそれぞれが付け足しであり、
また、それらの端が、プラスチックの中に組み込んで作られているためにすぐに壊れやすく、
またガタがきやすくなります。そのため針金で把握されている歯が揺さぶられたりして傷害を受けやすくなります。
◎鋳造床義歯
上あごの天井(口蓋部)にはいろいろの感覚器官が散在しています。
そのため、金属床であれば熱の伝導性がプラスチックよりはるかに優れているので、食事やお茶のとき、
熱を直接感じ食事がおいしくいただけます。しかも、丈夫で長持ちでき、万一かたい床に落としたとしても破折はしにくいのです。
しかも、口の中という様々な悪条件を考慮された金属床義歯なので薄く丈夫につくることが可能で、
口の中が広く使え安全・衛生的であるので違和感もあまりありません。
歯が残っている義歯の場合、粘膜に接触する床の極端を小さくできるし違和感が少なくなります。
また、丈夫で薄い一体になった金属で作られるために義歯の安定は良くガタ付きもほとんどありません。
そのために残った歯に無理な力と負担がかからないために歯は長持ちします。清掃もすぐにでき清潔度も高くなります。
総入れ歯
保険の入れ歯 |
自費の入れ歯 |
上の入れ歯の天井はプラスチック なので分厚く、口の中がせばまる。 違和感が大きい。割れやすい。 |
天井は金属で薄く作れるので、口 の中がひろくなり、違和感が少な くなる。割れにくく長持ちする。 |
熱の伝わりが遅いため、のどでや けどする場合がある。昧やおいし さが減退。 |
熱の伝わりが早く、食事やお茶が おいしい。 |
プラスチックに水分や臭いがしみ 込んで細菌の発生を促し、口臭と 不潔の原因になりやすい。 |
金属なので水分や臭いがしみ込ま ず、清掃が簡単にできる。 |
不潔な状態が続くと、入れ歯の乗 るドテが早く吸収して低くなり、 入れ歯が不安定になりやすい。 |
清潔が保たれるのでドテも吸収さ れず、入れ歯が安定保持される。
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時間がたつと、プラスチック自体 が溺って、もろく割れやすくなる。 |
丈夫な金属なので、万一、硬い所 に落としても割れたりしない。 |
部分入れ歯
保険の入れ歯 |
自費の入れ歯 |
設計は、保険の枠内の技術しか適 用できない。 |
残った歯を長持ちさせるため、先 端の技術を駆使して設計や型どり ができる。審美性も高められる。 |
針金や金属部分がプラスチックの 中に入れ込んであるので、折れた り外れたりしゃすい。割れやすい。 |
針金や金属部分が体になった丈 夫な構造になっているので、壊れ にくい。 |
ガタつきやすい。そのため残った 歯に無理な力がかかりやすい。 |
ガタつきにくく、残った歯に無理 な力と負担をかけない。 |
汚れがたまりやずい。耐用年数が 短い。 |
清潔を保ちやすい。義歯も長持ち する。 |