【ホームページへ戻る】


bP 正月に門松を立てるのは
名瀬市 ウラジロとユズル
 門松の材料は、地域によって多少変わるが、松竹のほかにユズリハ(ユズル)があり、ウラジロも飾るところがある。
 あるシマ(集落)に一人暮らしの大工がいた。「飯を食わない妻をもらいたいもんだ。」と、いつも思っていたら、ある夜きれいな女が訪ねて来た。「私は飯を食べない。あなたの妻にしてください。」と言うので、その女を妻にもらった。本当に男のそばでは物を食べなかった。ところが、隣の人が、「あなたの妻は、あなたが仕事に出かけたあと、いつも高倉(米倉)から米を降ろして、すぐ精米して大釜に御飯をたいて食べている。」と言うので、男は仕事に行くふりをして、隠れて妻のすることを見ていた。女は、男が仕事に行ったと思い、高倉から米を降ろして来て、たちまち精米して、大釜に御飯を炊き、髪を振り乱し、頭の中の口に御飯をおしこんで食べていた。
 男は夕方にいつものような振りをして帰って来た。その夜、女に「別れよう。」と告げた。「あなたが別れようと言えば仕方がないから別れましょう。その代わり、大きな臼を一つ作ってください。」と言った。それはやすいことだと、大工の男はすぐに大きな臼を作ってやったところが、女が「その臼を私に担がせてくださいな。」と頼む。男が臼を持ち上げて担がせょうとすると、女はたちまち鬼になって、男を臼に乗せたまま山へ走った。何とか逃げようと思っていると、山道にユズル木が杖を張っていたので、男はその枝に跳びついた。鬼は気づかず走って行った。枝を降りると下にウラジロがいっぱい茂っていたので中に隠れた。鬼は、山奥まで行ってから男がいなくなっているのに気づき、探しに戻って来たが、ついに見つけることができず山へ帰って行った。
 男は、ユズルとウラジロのおかげて危うく命拾いした。それで正月には必ずこれを飾るのだという。

(原話『奄美諸島の昔話』)

 この話は「食わず女房」として県下で二十五話ほど採録されている。5月5日に軒にショウブを差す由来話もある。
ウラジロの画像        ユズリハの画像
名瀬市のホームページ