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[第 分科会]
数学教育に関するインターネットの利用 堂 薗 幸 夫鹿児島県立笠沙高等学校1 学校におけるコンピュータ環境新指導要領で数学A,B,Cの科目において,コンピュータを活用した教材が取り入れられるようになって5年ほどたった。センター試験においても,賛否両論ありながらもBASICの出題は,依然として続いている。ところが,実際のマシンパワー等のハード面から見てみると,5年前は一昔前と言わざるを得ない。現在のインターネットに接続するのが当然のような状況は,当時では予想できないものであった。最近の情報としては,文部省が「すべての学校をインターネットに接続する」と提言しており,今後5年間は更なる飛躍の年になることが予想される。こういったことが,受験に対してどのような影響を与えるかという懸念はあるものの,教育の場として考えておかねばならないのは,「どのように有効利用するか?」という課題である。
2 ネットワークの実際 インターネット網の広がりは,現在止まることを知らずに全世界へと広がっている。起源はアメリカの軍事利用のネットワークであったが,大学等で学術利用へと転化された。WWW(World Wide Web)と呼ばれる全世界を網の目のように結んだコンピュータネットワークの総称である。日本においては,コンピュータリテラシーへの不安感やコストの高さから,まだまだためらう人は多いのが実際だが,インフラとしての整備は着実に進んでいる。プロバイダ(接続業者)は全国数千社を数え,大学にいたっては新入生全員にメールアドレス(インターネット上の住所のようなもの)を与えるところもあり,24時間研究に活用できる環境を整えている。小中高校でもHP(ホームページ)を持ち,学校間の交流を行っている話はよく聴くようになってきた。高等学校ではほぼ100%が,校内にWindowsのパソコンが導入され,教室内だけかも知れないがLAN(Local Area Network)が組まれてきた。今後,校内全体にLANを回し事務室・保健室・各特別教室等がネットワーク化されてゆくことになろう。既に,企業においては社内メールは当然のこととして扱われている。
3 ネットワーク環境を利用した学校の変化
さて,インターネットというネットワークであるが,授業への活用としては,この宝の山をどの様に扱って良いのか分からない,というのが実情のような気がする。調査研究を主体とする場合であるならば,大変有効であろうが,一斉授業としてはそこまで必要とされないといったところであろうか。現在言われている「個性を伸ばす教育」や「多様な価値観」に対応してこの有効な武器ともなるインターネットを活用しない手はない。インターネットが整備されることにより,様々な恩恵が受けられることが考えられる。例えれば活版印刷が発明されたことにより,多くの人が同時に同じものを読むことが出来るようになったような,一種の革命的な事とも言われている。簡単に思い付くだけ,学校での利用法をあげてみる。
4 実際の活用法のアイデア
【生徒に対して】(1)EメールやHTMLのブラウジングにより,印刷物を伴わない,グラフィカルで即時的なアプローチ。また,省資源としてのエコロジカルな観点からの活用。
【教職員に対して】
(2)電子掲示板等の利用により,例えば生徒会・特別活動・部活動などへの連絡として利用。
(3)興味関心ある授業展開のための活用。特に主体的な調査研究型の学習への利用。(4)職員朝礼,職員会議などの連絡・回覧物等の電子化。年度変わりの引継文書などの総括的な管理。
【外部に対して】
(5)成績・出欠状況等の一元的な管理。総合学科などで,数多く導入されている選択授業に対しての生徒把握。
(6)事務室との連携による教務や証明等の事務文書等管理。(7)保護者への案内状やPTA関係の連絡。各種アンケート等。
など,今までの学校のあり方までをも問われるような変化をもたらすと思われる。そしてこれらは,近い将来には実現されるものであろう。
(8)志願者等の学校案内などのサービス。
(9)同窓会など卒業生間の連絡。
(10)外部発注の書類等の送付,校正。それでは実際に数学教育において,インターネットはどのように利用すれば良いのか。また,どのような特徴的なことがあるのかを紹介してゆきたい。これらは,現時点において当然のように実行されているものもあるし,まだまだ夢物語のようにしかとらえられないものもある。しかし,ネットワークの加速度的な広がりやコンピュータの進化に対応して,あっという間にごく普通の日常的なこととしてとらえられる日がくると思われる。
(1)ホームページの制作・検索
インターネット=ホームページとして認識されるほどポピュラーなものである。今や企業はもちろん個人でさえも,名刺にHPのアドレスを印刷するのが当然になってきた。不特定多数が,いつでも覗くことが出来るもので,即時性には少し欠けるものの,積極的な活用が見られる。また,文部省などの公的な機関においても情報公開を意識して,これまでは大きな図書館でしか見ることが出来なかった資料などを,居ながらにして検索することもできる。ふとした疑問も,検索により簡単に答を捜し出すと言うことは,手元に巨大な百科辞典をおくような,あえて言うなら自宅に国会図書館を持つような感覚になる。
(2)メールの活用
数学的な利用としては,過去の入試問題の検索・興味あるテーマの研究・JavaやGIFアニメーションからの視覚的なアプローチ・参考文献の調査・各種統計資料の入手などに活用できる。今までだと手にいれて利用するまでに数日かかりそうな事が,瞬時に出来る利点があげられよう。
また,大学入試情報の検索も現在のところ,予備校等を中心として行われている。センター試験の各教科の点数を入力すると,データベースとの照合により合格可能性の判定ができるHPは,多くの進路指導部で活用のことと思われる。上記のHPにおいても,一方的に見るだけでは,情報の双方向性を保つことができない。メールにより,作者と積極的に連絡を取り合うことによって,リアルタイム性や正確さなどを増してゆける。数学のHPでは小中学生対象に,大学入試問題を解いてみようというページがある。ここなど作者宛にメールを出し,解答を公募している。メールの役割で今までのメディアと違うところは,参加が可能という部分である。
(3)LANの活用コンピュータが初期のCAIとして活用されていた頃は,それぞれがスタンドアロンで,単体で利用されていた。そうすると効率的ではないし,データの共用ができていなかった。また,コンピュータ室を指導のために走り回るという光景もLANにより,モニター上でほとんどの指導が可能になるので,スマートなものに変わった。また,簡単なアンケートなどの調査には非常に便利である。
(4)フリーソフトの使用Visual Basicなどを使って,個人でソフトウェアの作成が可能になっている。また,それらのソフトは,作者の好意により無料でネット上で提供されている。ベクターソフトウェアのHPなどがその代表だが,各自のコンピュータにダウンロードすることができる。数学関係のソフトウェアもグラフ作成など優れたものが多数あり,授業でも活用できる。また,作者とのメールのやりとりにより,バージョンアップ等もリクエストに応じる形でしてもらえることもある。
(5)ニュースグループの活用電子掲示板のようなもので,fj.sci.mathが有名である。ジャンル分けが厳密になされており,最新のニュースはここから流されることが多い。質問なども出して(掲示して)おくと,近い間にプロ(大学教授など)からの解答がもらえたりする。小中高校のレベルでは,最先端の話題まで必要とはされないかもしれないが,大学においては必見とされているそうだ。
(6)NetMeetingによる指導Microsoft社の開発したソフトウェアで,無料で使用できる。その特質として,遠隔地との意志の疎通が簡単にできることがあげられる。メールのように文字だけでなく,絵を描いている過程までを含めて送ることができ,例えば地図や,数学教育においては作図など応用範囲は広いと思われる。同時に音声や画像もやりとりすることができ,電子会議として,複数人数で活用もできる。
※具体的な図表や資料は当日配布予定HomePage http://www.synapse.ne.jp/dozonoE-mail dozono@po.synapse.ne.jp←戻る 進む→