科学教育研究生国内短期留学(鹿児島大学) 報告書
 

 三次方程式の解法について
 

 数学は方程式の解を求めることで,発展してきたといってよい。未知のxの値を
どのように求めるか,あるいは一般化させるかで,大きな努力を払ってきた。

 そういった中で,一次方程式は,なんなく,何の問題もなく解くことが出来る。

 しかし,二次方程式になると,人々は一般的な公式と言うものを求め始めた。
その中で,平方根の中が負となる場合,つまり平方して負になる数=「虚数」が
必要であるということが理解され始めた。しかし,これによって,それまで知られ
なかった数「虚数」が一般に認められたわけではない。というのも,二次方程式だけ
では,実数解か虚数解のどちらかしか表れない。つまり,「虚数」など「存在しない」
と言ってしまっても,数体系にはなんら影響が無いからである。

 更に一次・二次の方程式の一般的な解法を見いだした数学者たちは,興味の対象を
三次方程式に移して言った。ごく自然な発想であるが,三次方程式の一般的な解法に
なると,そう簡単には行かなかった。しかし,カルダノは下のように一般的な解法を
見つけ出した。
 
 カルダノの公式

 というものであるが,この方法には,単に解くだけでなく重要な意味があった。
それは,この方程式によって得られた解が全て実数解だとしても,解を求める
途中の段階で,一旦虚数を使わなければ,求めることが出来ないからである。
これによって,二次方程式では「虚数解など存在しない」と言うことが出来たが,
三次方程式の中では,以上のような事で,虚数の存在を無視することが出来なく
なってしまった。これから,虚数の実存性が論議の対象となり,複素関数論へと
発展してゆくことになる。