平成17年度 研修講座 分かる授業のための中学校・高等学校数学講座 資料

現在の取り組み・研究課題

 

平成17年10月27日

鹿児島県立奄美高等学校

数学科   幸夫

 

現在,研究・課題としていることに関して

1.コンピュータを活用した動的な(アニメーションを利用した)数学への理解

2.数式処理ソフトウェアの活用

以上のようなことを,個人的にテーマとして研究・実践している。

 

1.アニメーションでの動的な理解について

 

 個人でインターネット上にホームページを開設している。初めてデータをアップしたのは,1997年で約8年前である。趣味と仕事を兼ねて,数学をテーマにWebを更新し続けて現在も続いている。タイトルは「活動大写真動的数学」というウェブサイトである。URLは,以下のとおり。

http://www.synapse.ne.jp/dozono/ または,Yahoo!でdozonoと検索するとヒットするはずである。

 

 同じ教科書であっても,自宅で予習として見ていても今一つピンと来ないのに,授業中に教師の解説を聴くと,すんなりと分かるということがある。その理由はなぜかを考えたときに,動的な刺激と漢字を書く際の「書き順」のような順序が,完成物を見るか,完成されつつある段階を見るかの違いではないかと考えた。そうなると教科書のような印刷物では出来ないことが,コンピュータ上ではあたかも黒板のように動的にメッセージを伝えられるのではないかと,そういったテーマを中心に据えて,当時流行し始めたインターネットを活用しながら,試行錯誤的にここまで続けてきたものである。

 しかし,実際に授業の中で示して指導を展開してゆくのは,装置の関係や準備に対する効率(実際に提示するのは僅か5分程度)から考えると,なかなか実現できないのが実際である。これらの素材は,インターネット上においてあるため,生徒に「今日のグラフはここにアップしてあるから暇な人は見ておくように。」と,URLを示したところ,自宅で確認してくれたようで,次の日,「先生,あれは分かった!」と嬉しいことを伝えてくれる生徒もいた。

 もちろん自らの手で作図して本当の理解につなげなければならないが,瞬間的な理解や俯瞰して世界を見ることもまた学習だと思い,続けている。まだまだこれからのメディアであるため,可能性を探りたい。

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2.数式処理ソフトウェアの活用について

 

 数式処理ソフトというものがある。前述のアニメーションと同じくコンピュータを活用したものであるが,簡単に言うとコンピュータ上で数学の計算が出来るソフトである。例えると電卓では分数計算が出来ないが,こういったソフトウェアを活用するとできるようになる。しかし,それだけならば関数電卓でも可能だろうが,ソフトウェアを使うとコンピュータ上ではもう少し自由度が高く,例えば,因数分解,展開,微分,積分,グラフの作画などまでも可能である。私が,現在最も頻繁に活用しているのが,Mathematicaというソフトウェアである。この分野のシェアとしては,No.1である。(価格もNo.1?)機能も豊富で,科学技術計算や数学研究の目的で,大学等の最先端施設での利用は述べるまでもない。高等学校の数学においては,その汎用性の高さから力を持て余す部分が多く,また残念ながら価格等の問題から本格的に授業に活用というところまでは行っていないようである。

 

補足だが,ほぼ同じ機能を持つ数式処理ソフトウェアMuPADというものもある。教育目的に限っては,フリー(無償)のソフトウェアであり, Mathematicaにも勝るとも劣らない強力なグラフィック処理機能など,教育現場で使えるものである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Mathematicaの実際の入力と出力状態は,下図のような感じである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Mathematicaを活用した授業展開ということも考えてはいるが,やはり効果的な活用という点では,まだためらいを感じるのが実情である。高価という理由もあるが,こういったことを原稿に起こしながら書くのも変な気はするが,高校数学の基本は,自分の手で試行錯誤しながら,時には消しゴムでノートを破りながらでも,「時間をかけたから分かった。」ということが,本当にやらねばならないことだと確信している。例えば,上記のグラフは,本来ならば,微分して(2分),もう一回微分して(2分),増減表を書き(2分),増減と凹凸を調べ(2分),極限を求めて(1分),座標を取り描く(1分)と,急いでも,10分近くかかるはずである。これをソフトで描かせると,式の入力のみで,わずか1分で終わってしまう。本質的な理解とは程遠い世界になってしまう。ただし,それが効果を持つときもあるのも事実である。描くことそのものを目的とした時ではなく,瞬間的にグラフが得られればそれを見て,その後に展開される新たな世界に思いを馳せるとき,それまで感じていなかった新しい疑問が沸いてきたり,創造的なアイデアが沸いてくることがあり得るという点である。

教育目的としての数式処理ソフトウェアの活用には,以下のような意義がある.       

 

1.数式を素早く即時的に計算できる.(面倒な計算が不要となる)

2.学習とはいえ,ソフトウェアの操作のように,数学と戯れつつ興味を深めることが出来る.

3.グラフィックの表現で,その式の持つ深い意味が試行錯誤的に理解できる.

4.数学的な考察・表現を考えることにつながる.

 

 以上のようなメリット・デメリットを考慮しつつ,教室での運用はさておき,教材研究の段階ではより深く捉えることが出来るため,私にとって手放せない非常に有効なツールとなっている。

※以上の2点に関しては県数学教育大会での発表レポートが,私のWebSite上に置いてある。詳細はそちらをご覧いただきたい。