10 実際の授業で

 6月末に実施された,鹿児島県の県数学教育大会でもこの発表をしたが,その
際,実際の授業の中で生徒に対してフラクタルを紹介してみてはどうか?という
アドバイスをいただいた。そこで,4(1)(2)での複素数での表現を,反復代入で
計算させ,実際にコッホ曲線を描かせてみた。ついでに私が友人からもらった中
国の大学入試(?)用の問題集を見せ,考えさせてみた。その際の授業の流れと,
生徒たちの感想・意見を以下にまとめる。

(授業の流れ)
         1   浮R    浮R   1
   f1(z)=(--x+----y)+(----xー--y)i
         2    6     6    2

       1    浮R    1      浮R    1   浮R
 f2(z)=(----xー----y+----)+(ー----xー----y+----)i
       2    6     2       6     2    6

に初期値(x,y)=(0,0)を代入する。これを繰り返すと座標は,
  第1世代は,初期値が1つ
  第2世代は,f1(z),f2(z)で2つ
 第3世代は,2世代目をそれぞれ代入するので4つ
  第4世代は,同様に8つ …… と計算によって求められる。

   これを,点をプロットしてゆく。最後にf1(z),f2(z)の成り立ちを説
  明し,印刷したコッホ曲線とコンピューターによるコッホ曲線,その他代
  表的フラクタル図形を見せる。話題として,コンピュータープログラム,
  次元論,カオス理論などにも触れる。
  同時に中国の問題集をあたえ,考えさせて見る。


(生徒の反応)
  ・反復代入の計算は一生懸命やっていた。
  ・計算の時点は良いが,その成り立ちの複素数平面の理論の話になると,
   興味のある生徒とそうで無い生徒では,下を向いたりなど差が表れた。
  ・コンピューターの画面を見せたが,これには全員がもっと詳しく見てみ
   たいという反応を示していた。
  ・教育課程上,まだ無限の考え方は何一つ指導されていないので,極限に
   触れるのは避けたが,数学の答えはただ1つと意識されていたようで,
   無限までという奥の深さに驚きを持っていたようであった。
  ・理論的なことには興味が無かった生徒も,なんとなくではあるが,不思
   議な図形,かっこいい図形,面白い図形と感じているようだった。
  ・ごく数名,フラクタル,カオスといった知識をもっている生徒がいた。
   カオスについては,映画「ジュラシックパーク」で聞いたことがあると
   いう生徒もいた。
  ・こういった問題が解けたからといって何の役に立つのか?コッホ曲線が
   世の中の何の役に立つと言うのか?という疑問も出された。
  ・シダや海岸線など,自然界に普通に存在するものが数学的に考えること
   が出来るとも紹介したが,現実的なものを複素数平面という概念的な考
   え方で言えるというところに興味を示す生徒がいた。
  ・こんなものは,数学ではないと言う反応を示す生徒がいた。
  ・中国の問題については,苦手な数学の上,分からない中国語を…という
   反応と,数学の言葉は世界共通だ。と感じる生徒との2つに分かれてい
   たようだった。

(生徒の感想から)
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 無限は
  ・なにか無限という言葉にはひかれる部分がある。数学は楽しい。
  ・数学と言うのは,無限な世界のものなんだと思いました。
  ・「無限」を数学の式で表せるということがすごい。
  ・無限の計算を一瞬で解くコンピューターもすごい。
  ・数学の答えは1つだけで終わりだと思っていたが,実はずっとずっと奥ま
   であると感じた。
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 図形的に
  ・永遠に続く計算を図形に表すと,ギザギザした図が出来るのは面白い。
  ・図形のどこをとっても同じなのは面白い。とてもきれいな形に見える。
  ・どうして私たちがよく見るような三角形から,複雑であんな変なグラフが
   出てくるのか不思議だった。複素数は奥が深い。
  ・自分たちの習っている計算が発展していくとあんな面白い図形になるのか
   と驚いた。少しの計算式で細かい図が描けることに驚いた。
  ・スギの形まで描けるなんてスゴイと思った。
  ・シダとか海岸線とか身近なものとの関係に興味がある。
  ・こんぺいとうみたいなのが,たくさん合体したって感じだった。
  ・不思議なんだが,納得させられてしまったような気がした。
  ・今までとは違った,複雑な図形だけど一つ一つの細かい点をとって,面白
   い図形が出来るのですごい。
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へえーー
  ・数学の世界にこんなものがあるとは知らなかった。
  ・数学の世界にはまだ面白いものがあるかもしれないので見つけて欲しい。
  ・難しかったといえばそれまでだが,複素数の変身のように思えた。
  ・まあ,こういうグラフがあるということを知れたので,それだけでいいん
   じゃないかなあ。
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 ??
  ・コッホ曲線やフラクタル幾何については,今読んでいるカオスの本で知っ
   ていた。自然界を支配する無秩序の秩序,この認識と量子論などの理論や
   技術との融合によって科学は,飛躍的に進化することになるだろう。
  ・腹が痛くて授業どころではなかった。でも下を向いていたらいつの間にか
   寝ていた。パソコンが目覚しのような音を出したので目がさめた。パソコ
   ンには変な線が映っていた。すごかった。腹痛も治っていた。
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 難解だ
  ・計算したけど全然分からなかった。これが理解できる人はすごいと思った。
  ・レベルが高すぎるぞ。理解しにくい。
  ・コッホは何のためにこんなのを見つけたのか?いったい何の役に立つのか?
  ・複素数はもともと存在しないものなのに,なぜ平面で表されるのか分から
   ない。ぼくには難しすぎた。
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中国の問題
  ・自分たちが日頃解いている問題と変わらないと思った。
  ・先生が,数学の方式は全世界共通だと言ったのもうなづけるなと思った。
  ・計算は世界共通だというけれど,やっぱ字が読めないと見たことのある公
   式でも分からないような気がすると思った。少し記号が違っている。
  ・問題文は全然分からないけれど,数字や記号を見るとなんとなく意味は分
   かった。とても身近に感じた。
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11 参考文献
   現代数学で遊ぶ本(JICC)
   フラクタルと数の世界(海文堂)
    フラクタル数学(東京図書)
   フラクタルの世界(山海堂)
   複素数とフラクタル(東京図書)
   Fractals(PRINSTON SCIENCE LIBRARY)
   カオスとフラクタル,カオスの素顔(講談社)



最後まで見て下さってありがとうございました。

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