(東京大学 理系 2010-4) 2010.11.17
 
仕事上,最近は大学入試問題の研究がちょっと増えています。(^.^)
頭の中にもやもやとあったのだけれど,河合塾の分析会に出会して形がはっきりしてきたので,作ってみた。東京大学の問題ってやっぱ奥が深いんだなぁと感心してます。今回は2010年の理系4番の問題です。

こんな問題でして,

模範解答はこちら

ま,模範解答を見ると,結論そんだけなんですが,中身を追究すると面白いです。関数や双曲線の性質がよく活かされています。

以下,アニメが5本という,近年まれに見る大き目のページになってしまいましたが,上記のとおりの解答(確か代ゼミのもの)を見ただけでは,はいはい。はい?という何という面白さもないものが,動き出すと生き生きと背景を語り始めるところが,イイですねぇ。。。。

 

キーワードとして,

「反比例,双曲線,斜交座標系,線形変換,領域面積,積分,行列の固有値」

ってものがある気がします。

 

GRAPESで描いてみたのが,下の図やアニメです。以下,解説を加えながら進めていきます。

【アニメ】

直交座標系では,双曲線について,例えばxy=1という式は,

ご覧の長方形の部分の面積が1である事を示す。中学生が知っている事実。

 

 

【アニメ】

斜交座標系においても同様に,平行四辺形の面積は一定になる。

これは見方に注意が必要で,もともともの90°の直交座標軸のx軸,y軸を使うのか,
それとも,横方向x軸は使うが,斜めの緑ラインを新軸とみなすのかで違ってくる。

これは追究すると大学の数学になる。
さきほどの直交系の面積と比較すると,緑の新軸との交角θを使いsinθ倍になる。
ここでは踏み込まないが,行列の固有値の話題も出て,|detA|倍とも言える。

 

 

【アニメ】

上記の直交座標系から斜交座標系への変換が行われているアニメ。

どちらも面積一定のまま斜めへ変換されている事が分かる。

 

 

【アニメ】

念のために,直交座標系での面積一定の状態を追跡してみた。

 

 

【アニメ】

同様に,斜交座標系において面積一定を追跡してみた図。

色の黒の部分とピンクの部分の面積は,平行四辺形の半分となり同じである。

 

 

【アニメ】

この東大の問題にあわせて,時間がずれた関係のものを同一アニメ内に記載した。

これら,△OPHと△OQKはどちらも等しい面積を持つ。

 

 

【アニメ】
いよいよ東大問題の本格的解説に入る。

上記のアニメは,求めるべき図形の面積には,これまで述べてきたように面積一定の関係があり,

更に重なっている同一部分が存在しているため,(2)で求めるべき囲まれる部分(この図ではOPQ)は,

実は,PQKHと同じ(x軸と平行な直線PHとQKと,PQの曲線,HKの直線と囲まれる部分)とみたら簡単である,

という結論に達する。(つまりアニメ最終段階の,黄色部分紫部分は同じ面積である。)

 

まともにこのCを見ると,大変な積分が待ち受けているが,見方を逆転させ,同一部分を探ると,

簡単な積分で済んでしまうところに,この問題の本質が潜んでおり,面白い。

 

 
【アニメ】

 

 

つまり,これら4つの状態がイメージできなければならないわけである。

 

 

 

 

【解説】

振り返ってこの問題のポイントとなる部分はこの辺であるとまとめて良いだろう。

 

【ポイント】 1.反比例とは,面積一定である。

2.線形変換で,双曲線においても面積一定の性質は変わらない。

3.つまりその2等分の三角形の面積も一定である。

4.共通部分の領域を考える事で,難解な計算を避ける事ができる。

 

【おまけ】

 いかがでしょうか?東大の入試問題って難しいんでしょうが,反比例の面積一定,変換,積分という発想は,作問者の頭の中が見えた気がしますが,問題を正しく読み取り,イメージを沸かせ,(いつものとおり,脳内イメージが難しいのかもしれませんが,アニメーションが役立ってくれれば,と思います。)簡単な発想から,じわじわと転換していく事で,素直に高みへと連れて行ってくれる良い問題であると思います。

さてさて,最後に,そのアニメーションの作成について書いておきます。

GRAPESで作図する。(ファイルは4つあります。その1その2その3その4です。どうぞ)
パラメータを変えながらBMPで出力する。
GiamでGIFアニメーションへの処理をする。
別のアニメは,ディスプレイキャプチャーあれでAVIファイルとして書き出し。
Giamでアニメ処理。

いつものとおりこれだけでしたが,今回は数が多かった。

 

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