(テイラー展開とマクローリン展開) Taylor expansion & Maclaurin's expansion  2008.1.30

サインカーブをマクローリン展開で近似したグラフを次々かくと,,,,

っとなるお話。

テイラー展開,マクローリン展開というものがあるが,高校数学では「ちら」っと触れるだけで,
そこまで入り込む時間も,余裕も無いのが現実である。
更に言うと,「ちら」見が出来るのは,それなりの学力の高い学校で
それなりの理解力を持った生徒でなければ,かえって微積分の混乱を深めるだけかもしれない。
興味と関心と,ちょっとした勇気大胆な発想と,繊細な集中力があれば,
テイラーさんもマクローリンさんも,そう難しい事ではない。

さて,前置きはこの程度で。

【問題】

y=sinxにおいて,次のxの値のときに,yの値を求めよ。
(1) x=π  (2) x=π/2  (3) x=1

【解答】

ラジアン表示されたxにおいて,sin(正弦)の値を求めよという問題なわけである。
ちなみにラジアン表示とは,360°=2π,180°=πの形で角度を表記したものである。
つまり(2)のπ/2は,90°ということになる。
(1) y=sin180°=0 である。
(2) y=sin90°=1 である。ここまで簡単。
では,(3) y=sin1 ??

1はラジアン表記された角度なので,表現方法を□°の形に変形すると,
180°:π=□:1となるので,
□=180°÷π=180°÷3.141592・・・=約 57.295…°となり,
y=sin1
 =sin57.295…°
 =???となって三角比の表が必要になりますね・・・。

妙な感じするでしょ?

でも値はちゃんとあるわけですよ。
これって,どーやって計算したのか?っちゅーところが問題のモンダイなのです。


ちなみに表によると,
 sin57°=0.8386705679454239
 sin58°=0.848048096156426
のようです。

しかし,次の計算をすると,近い値が出るのですよ。
y=sin1
       1      1    1
 =1−----+----−----
      3!   5!  7!
 =0.841468254 (エクセルで計算)
近そうでしょ?sin57.295…°って言われても,どーしようも無かったわけですが,
この計算だったら,手と紙と鉛筆と出来れば電卓を持っていれば,根性で出ちゃうわけです。

逆に言うと,πについても,近似値π=3.14とするならば,
y=sinπ
 =sin3.14
        3.14     3.14  3.14
 =3.14−-----+-----−----- 
          3!      5!    7!
 =-0.073292015 (エクセルで計算)

となって,ほぼ0に近いですよね。
手で計算できるところが,テイラー展開,マクローリン展開の良さなのです。
この,マシンではなく「手で」というところが肝心ね。

さて,そのグラフを書いてみると一目瞭然。
あら不思議,y=sinxのグラフと,それをテイラー展開したグラフは,
かなり一致しますね。精度を上げていけば,より正確になるわけです。

     さて,上の「妙な+−の式」の数学的解説です。

微分可能な曲線y=f(x)上の点,(a,f(a))における接線の方程式は,
x=aにおける微分係数,f'(a)を利用して,
y-f(a)=f'(a)(x-a)より
y=f(a)+f'(a)(x-a)とかける。

これは,x=aの近傍で,もとの式y=f(x)と非常に近いことが言える。
つまりこれを一次近似と言い,
f(x)≒f(a)+f'(a)(x-a) を意味する。(一次式で近似したという。)

======================================================

この精度を上げて,二次式で近似しようとすると
f(x)≒f(a)+f'(a)(x-a)+p(x-a)2…@

となる。

このpを求めると,
@の左辺を微分して,
 (左辺)=f'(x)   x=aとすると   (左辺)=f'(a)
@の右辺を微分して,
 (右辺)=f'(a)+2p(x-a)   x=aとすると   (右辺)=f'(a)
(左辺)=(右辺)となり,成り立つ。

もう一度微分すると,
 (左辺)=f''(x)   x=aとすると   (左辺)=f''(a)
であり,
 (右辺)=2p   x=aとしても   (右辺)=2p 
(左辺)=(右辺)となるために,
f''(a)=2p でなければならず,
よって, 
      f''(a) 
p= ----- となる。
     2!

更に,同様に三次式で近似しようとすると,
                f''(a)
f(x)≒f(a)+f'(a)(x-a)+-----(x-a)2+q(x-a)3
                2!
とおき,同様の計算をして, 
     f'''(a)
q= ------
     3!
となる。

これを4次,5次と続けていくことで,次のテイラー展開を得る。

          f'(a)        f''(a)             f'''(a)     f''''(a)
f(x)≒f(a)+-----(x-a)+-----(x-a)2+-----(x-a)3+-----(x-a)4+…
          1!       2!                3!              4!

更に,a=0の特殊な場合について考えた次の式を,マクローリン展開という。

          f'(0)    f''(0)        f'''(0)    f''''(0)
f(x)≒f(0)+---- x+----- x2+----- x3+----- x4+…
          1!     2!           3!           4!

である。

   さてさて,更にエディタで美しく数式を表現すると,以下のようになります。

最初に戻って,三角関数をマクローリン展開すると,,,,

 

いよいよ,仕上げで,動くグラフをどうぞ。サインカーブが,3次式,5次式,7次式,9次式・・・・・とどんどん近似されていきます。

 

いやぁ,長かった。

微分もちょっとした勇気と,ちょっとした時間をかけて攻め込むと,このような面白さがあるのですよ。。

ちなみに,大学入試ではどのような扱いを受けるかというと,,,

(1999.高知女子大学)

このような証明問題をからめた(数学的帰納法で処理する)出題が散見される。

 

【解説】

マクローリン展開を,数学Vの知識で何とか理解できるような説明をしたつもりですが,

そういった背景を知っているだけで,見ず知らずの問題を解くのと,とっかかりが違うと思うのです。

入試を通過するという目標だけでは,そのぎりぎり通過ラインを超えるだけかもしれません。

しかし,目標とする到達点が遠くにあるならば,余力を残したまま,入試を超えていける事でしょう。

それを世の中では,「あまり勉強しなかったのに通った」というのかもしれません。

 

今日は妻の誕生日でして,なんとなく記念的にゴリゴリと書き上げてしまいました。(2008.1.30)