コンサートレポート
村治佳織コンサートレポート村治佳織  初来鹿!
日程
平成11年10月11日(月)振替休日 午後13時30分会場   午後14時開演
会場
鹿児島県姶良郡牧園町  みやまコンセール
金額
前売り 2500円 当日 2800円(なお前売りでsoldout状態)
イラスト
村治佳織 演奏中の村治佳織。 

右ひじには,ギターとの接触部分のクッションのため,腕カバー(?)をしている。 ドレス(いわゆる女性=赤系の既製概念を打ち破る鮮やかな青一色)と同じ色でまとめている。 
そのドレスは,ノースリーブの肩出しの爽やかな物である。 
若さ・爽やかさ・疾走感をかもし出すカラーである。 

また,髪もかなり茶髪のようで(最近染めたのかな?),肩までは届かない長さである。

プログラム
プログラム 

<村治佳織> 
ロドリーゴ:古風なティエント 
ロドリーゴ:小麦畑にて 
ロドリーゴ:祈祷と踊り 
タレルガ :アルハンブラの思い出 
アルベニス:アストリアス 
アルベニス:コルドバ 
トゥリーナ:セビリアーナ 
  
 ※ 祈祷と踊り(難あり)  
   →一般的には祈りと踊り または 祈祷と舞踏  
 ※ タレルガ(誤)
   →一般的にはタルレガ または タレガ

 プログラム
インプレッション 一日の時間経過とともに,お楽しみ下さい。 

 会場であるみやまコンセールへの到着が12:10ごろ。会場が13:30,開演が14:00と言うことを考えると,早すぎる到着だったかな?と思いながら,数台車の止まっている駐車場から,会場への坂道を上がってゆくと,既に20人ぐらいの人の列。職員の方が,「最後尾」の看板を持って立っておられた。急いで列の最後に加わったが,その時点であと1時間半近くの時間をいったいどう過ごすのかを考えておらず,本でも持って来るべきだったと反省!幸い早かったため,建物のすぐ脇に立つことが出来,日陰で助かったのだったが。 
 
 その後,人の列はどんどん増えてゆき,会場直前にはその数は,100人から200人はいただろうか?かなり前であったので,「最後尾」の看板はもう見ることが出来なかったが,いわゆるディズニーランドの整列(ぐねぐねと折り返しながら詰め込む!)方法だったので,人の波は10列近くに曲がりながら,さっきの坂道まで続いていたことであろう。あとで職員の方に伺ったところ,「ここでのギターのコンサートは比較的客足がいいんですよ。鹿児島には潜在的なギターファンが多いようですね。」とのことであった。 
 
 更に佳織人気(=野菜ジュース人気?)が絶好調の昨今,こうなることはある程度予想できたことであろう。なのに,全席自由席と言うのは,疑問でもあった。みやまコンセールの自主文化事業と言うことで,低価格に押さえられ,そうせざるを得なかった事情でもあるのでしょう?それから,書き忘れていたが,当日券がある予定だったのだが,前売りでSOLDOUT状態だったようで,「本日の当日券はありません。」という看板がすでに駐車場入り口に出ていた。にもかかわらず,「最後尾」のお兄さんに近づいて,当日券は無いでしょうか?と申し出があったようで,お兄さんも困って,「どなたかチケットの余ってる方はいらっしゃいませんか?」と呼びかけて下さったり,会場1時間前から既にヒートアップしている状態であった。 

 さて,前置きが長くなってしまったが,いよいよ13:30になり会場である。チケットをちぎられて中にはいると,最前列中央からみるみるうちに埋まってゆく。最前列の左右を取るか,中央のちょっと後ろを取るか,0.5秒の瞬断を下し,中央の4列目に座ることを決めた。結果的に前列の方の頭の隙間から良く見ることが出来,至近距離(3〜4m?)で指の動きまで,眉の動きまで見ることが出来,ラッキーであった。さて,やっと座って落ち着くと,収集活動の開始である。先ほどの並んでいる際に,別の職員の方が,「本日はCD・写真集の販売があります。購入いただいた方はサイン会があります。但し,写真撮影や握手などは出来ません。」というアナウンスをされていたので,うーむアイドル並だな・・・などと感慨にふけりながら,チケットを譲っていただいた方へのお土産に,パンフとCDをゲットしなければ・・もちろん私の記念にもCDを・・と一人考えていたわけである。ホールを出ると,目の前には十字屋クロスの方々が,手ぐすねひいて(^_^;)お待ちかね。パンフ2000円(これは一般書店等では販売しないとの事)とCD(3000円ちょい)を数枚購入した。サイン会はコンサート終了後の予定で,あとで記述しましょう。そうこうしているうちに,14:00になり開演だ。・・・・あぁ前ふりが長かった! 

---ここからは一気にお読みください--- 
  
 舞台左袖からさっそうと出てきた佳織嬢は,目もさめんばかりの濃い深い青のノースリーブドレスに左手にギターを持ち,あれはサンダルか?つっかけか?という履物での登場だ。鹿児島初登場の緊張感をものともせず,満席の会場に向かいにっこりとそして深々とお辞儀し,もちろん左右の2階席のお客様にもご挨拶を忘れずに,中央椅子にさっと腰掛けた。帰国後染めたのか,茶色の髪を2,3かきあげ,精神を集中した。同時に観客もそれまでの割れんばかりの拍手をぴたりとやめ,一気に緊張感は高まった。鹿児島初の第一音はどんな音が飛び出すのか?とホール全体の動きが一瞬止まった。 
 
 プログラム1曲目は,ロドリーゴの「古風なティエント」である。その最初の音が出ると一種の不安にも似た気持ちは吹き飛んだ。始まった・・流れるように始まった・・・。早いアルペジオの曲だが,指はためらいなくフレット上を動く。止まることの無い,安定した運指は心地良い響きをホール一杯に満たしてゆく。ここで多少脱線するが,このみやまコンセールは,鹿児島が全国に誇れる日本でもトップクラスのホールである。その昔,故セゴビアの初来日の際,音が頭を越えて遠くまで届く。と形容されたことがあった。今回ももちろんPAを使っていないのだが,超一流の演奏家と,超一流のホールとの見事なコラボレーションとさえ言える,包み込むような,そして確実に行き渡る音である。近い将来には日本を代表する演奏家が,ここで録音したCDを届けてくれる事であろう。1曲目は比較的馴染みの薄い曲だったということと,始まって1曲だけで息をつくのも演奏上の流れが中断されることを嫌って,挨拶もなく拍手もなく,すぐに2曲目の「小麦畑にて」に続いた。ロドリーゴとの出会いの思い出を,パリの思い出を振り返りながら,それでいて,ロドリーゴ自身が感じたであろう思いを忠実になぞると言った演奏ではなく,彼女自身の感じたロドリーゴ像を演奏していたようにも思われる。ロドリーゴの作品は3曲準備されていたが,この2曲の演奏の後に立ち上がった。そして会場からの盛大な拍手。無事スタートを切ったという安堵感も手伝って,にっこりとはにかんだ様な笑顔で挨拶した。 
 
 再び演奏が始まった。「祈りと踊り」である。拍手の中,会場着が遅れてしまったお客様の着席を待ち,静かにそして張りのあるハーモニックスで空気が動き始めたが,惜しむのは,あと5秒待って最後の最後のお客様の着席後に始めることができたならばと思えた。我々からみて左上(彼女からは右上後方に当たり,視認は出来なかったようである。)の2階席にお客様が入ってこられたが,視界の隅では動く人影がありながら第1音が鳴り初め,僅かではあるが,集中をそがれた面も否定できない。ともあれ,「祈り」のテンションあるハーモニックスは,絶品であった。女性らしさのある優しさや柔らかさが,十分伝わる演奏であった。刺々しさの無い演奏は,彼女の天性のものかも知れない。「踊り」では,リズミックに首を振りながらという場面もあり,初めて聴く観客も多かったはずだが,同時に流れに乗せるような一体となった好演であった。師である福田氏の演奏スタイルの直系の流れを連想させる演奏は,好き嫌いの分かれるところでもあろう。彼女のオリジナリティを出して,女性らしい柔らかさが欲しいという願いもあれば,福田氏のようなエネルギッシュさを出し,そして品の良さ・高さを追求し続けてほしいという,背反する願いと言ったものであろうか? 
 
 ロドリーゴの3曲が終わった。拍手の後,次は「アルハンブラの思い出」である。パンフレットをめくり曲順を確認する方が前後にいらっしゃった。やはりアルハンブラはギターの代表曲であり,楽しみに待たれていたのだろう。集中して弾き始めようと言う時に,指は7フレット近辺に置かれている。運指が違うのか?一体?何だ??と思っているまもなく,曲が始まった。その曲は「アストリアス」だった。これは,印刷の時点ではアルハンブラを予定していたが,プログラムの進行上,変更したものと思われる。まさか,予定の曲を飛ばしてしまったと言うことはないであろう。周りからも,一瞬だが「あっ」という声が聞こえた。さて,その「アストリアス」だが,CDにはまだ入っていない曲である。もちろんあぶなげない演奏で楽しめた。緊張感の高まるアルペジオに,時折入るラスゲアード気味のストロークが比較的優しく流すと言うような,やや印象を控えめに取った演奏にも思えた。 

  続いて,「コルドバ」である。アルベニスを2曲続け,タイトルでもある〜スペイン音楽への誘い〜を充分に感じさせた。演奏が単に音を綴るだけでなく,私には聞きながら,メスキータの赤白のアーチの風景を思い出された。イスラムの味を充分に引き出した彼女の演奏で特筆すべきは,「祈りと踊り」のハーモニックスもそうだし,「コルドバ」のそれも同様であるが,非常に繊細でテンションも高く,それでいて情緒ある静と動の響きを聞かせる事であろう。”動”も同世代のギタリストには比較の出来ないものだが,”静”は,3歳から英才教育を受け,ギターに囲まれて育ってきたと言う特異な環境も手伝って,既に独自の世界観を確立した感もある。 
 
 プログラム上の最後の曲は,「セビリアーナ」である。この曲は非常に強烈なラスゲアードで始まる。それまでと違って,内に秘めた情熱を爆発させるかのような演奏である。最後の曲にふさわしい演奏であった。他の曲と同様にピチカートとラスゲアードの繰り返されるイントロ部分などは,静と動のせめぎあい,そして,彼女のみずみずしい若い心の訴えと,プロ演奏家としての冷静さを伴った気品とを,一見矛盾するようなものを解き放つのに充分であったと思えた。 
 
 大きな拍手に答え,舞台左袖に下がった彼女だったが,すぐに出てきてアンコールの曲を演奏してくれた。「アルハンブラの思い出」であった。プログラム上にはあり,演奏していなかった曲と言うことで予想が出来たが,これを聞きたくて・・というお客様も多かったはずである。「森に夢見る」などで彼女のトレモロについては粒の揃った歯切れの良い音を出すと言う印象を持っていたが,正にそのとおりの演奏であった。流れるような演奏はそれまでの1時間の演奏をゆったりと振り返らせる効果もあった。この効果を求めて,またタイトルの〜スペイン音楽〜のまとめの意もあり,最後のアンコールとしての順序になったのであろう。ホール職員からの感謝の意を込めての大きな花束を抱きかかえながら,更なる大きな拍手が会場を包んだ。惜しみない拍手は,袖に下がってからも大きく続いた。 
 
 と,彼女は再度出てきてくれた。もちろんギターを持って。ここで始めて彼女自身の肉声が聞かれた。「どうもありがとうございました。アンコールとして私の好きな曲で,タンゴアンスカイを演奏いたします。」と,はきはきとした声で最後の曲を自分自身で紹介した。演奏そのものは師の福田進一を思わせる演奏であった。テンポの早い曲であり,また,最後の演奏曲であり,感情の高まりが指をコントロール出来なくなってしまったとは思いたくないが,僅かながらミスがあった。意図したものよりも弱く出てしまった音が数カ所あったように感じたが,それだからといって減点されるものでは無い。むしろ,ノリに乗った演奏ゆえぐいぐい引きつけるものを感じさせた。福田氏もライブでの演奏は,バッハなどの古典的で一音も無駄にする事が出来ない音楽ならいざ知らず,ノリでゆける現代曲(ヨーク作品など)では,時として実験的であったり,勢いに身を任せたりする現実的な演奏がある。一期一会とも言えるライブ演奏では,繰り返し聞く録音媒体と違って,空気に音を乗せて行くような演奏の方が,かえって印象を深める場合もある。そう言った意味では,この若さにして,人々の記憶にとどめられるコンサートを演出した,本当の意味でのプロ演奏家がそこにいたと思われる。 
 
 僅か時間にして1時間ちょっとの演奏会ながら,充実した内容であった。ザビエルの上陸を記念した演奏会であったため,彼女のギターは前半の半分しか聞く事が出来なかったわけだが,鹿児島という地方の地においても,もし彼女1人の演奏会でも満席にすることは出来たはずである。今回の演奏会は,超一流の演奏会は都会でなければならない理由などどこにもなく,良いホールとスタッフに恵まれるのであれば,鹿児島も立派に世界に通用するということの証明にもなったのである。鹿児島初の彼女の演奏会であったが,120点の超合格点を出せるものであった。 
 
 さて,演奏終了後にはサイン会である。100人以上の列ができたであろう。当日購入されたCDや写真集にサインペンで丁寧にサインし,「ありがとうございます。」と言う彼女の姿があった。もちろん私もCDにサインをいただき,頑張ってください。の声をかけた。隣に立っている,セキュリティを兼ねた,ちょっと怖そうな事務所の方がいらっしゃらなければ,並んで写真撮影をし,握手をしたところだったのだが・・・それは無理であった。30分以上はかかったであろうサイン会であったが,見守るファンに花束を持ったまま会釈をしながらロビーから楽屋へと向かう彼女の姿が,本当のコンサート終了を告げるものだった。 
 
 

パンフレット
パンフレット
コンサート正式名称 
  
みやまコンセール自主文化事業
〜ザビエル上陸450周年記念〜
スペイン音楽への誘い
「村治佳織&柳貞子」
その他資料
プロフィールプロフィール チケット 
チケット
写真集
写真集 表 
 
写真集 裏 
写真集 表紙 

下図の腕にかかる文字が,直筆サインである。 

肖像権の関係から,モザイク処理してある。 
でも, 
著作権の問題は残る。m(__)m

 
 
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