■防衛庁首脳が名護市民投票を批判

 衆愚政治…やるべきでなかった

 防衛庁首脳は17日、沖縄の米軍普天間飛行場に代わる海上航空基地の建設の是非 をめぐる沖縄県名護市の住民投票について、「やるべきではなかった。日本で直接民 主制を取っていないのは、衆愚政治は国を滅ぼすという考えからだ」と述べ、住民投 票実施そのものを批判した。市民投票は昨年12月に実施され、ヘリポート建設に反 対する票が賛成票を上回り、大田昌秀知事が建設反対を表明する流れをつくった。住 民投票の結果を「衆愚政治」と関連づけた首脳の発言は、反対の意思を示した名護市 民を批判しただけでなく、民主主義のあり方にさえ問題を提起したことになり、今後 論議を呼びそうだ。

 首脳は、さらに「多数の利益のために、少数の反対があっても押しつけざるを得な いことはある。それは、間接民主制だからこそ可能だ。例えば、ごみ処理場をすべて 住民投票で決めたら、どこにも造れなくなる」とも語り、住民投票は政策決定に悪影 響を与える場合があるとの見方を示した。

 首脳の発言に対して、名護市民投票実施を呼びかけた宮城康博・名護市議は「住民 投票は反対運動の手段ではなく、米軍基地が集中する沖縄の現実の中で、住民がどの ような町づくりを選択するかを問うたものだ。沖縄の問題を理解していない発言だ」 と厳しく批判する。

 市民投票では、告示前から政府が沖縄防衛施設局の職員を中心に戸別訪問を展開、 住民団体などから抗議を受けた。沖縄県のある幹部は「市民投票前に、政府あげて基 地賛成の運動を展開した事実をどう説明するのか」と不快感を示した。

 防衛庁首脳が住民投票を批判したのは、沖縄の基地問題に進展がみられないことに 対するいらだちがあるとみられる。市民投票で日米合意に反対する結果が出たことか ら、最近各地で広まりつつある住民投票そのものに矛先を向けたとの見方もある。

 ◆民主主義への挑戦
 小林良彰・慶応大学教授(政治過程論)の話 我が国の法律においては、住民投票 などの直接民主制を排除していない。住民投票を整備して、もっと有効に活用するよ うにすべきである。これを、初めからすべて否定するようであれば、民主主義、民主 政治に対する挑戦になるのではないか。