フリムン徳さんの波瀾万丈記

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「フリムン徳さんの波瀾万丈記」表紙  最近、このサイトでもにわかに人気を集めている米国在住の大工の徳さんこと上園田徳市さんの本がついに出版された。題して「フリムン徳さんの波瀾万丈記」。これが、アナタ、めっぽう面白いんである。
 本人の口調を借りるなら「おもろいなぁ、おもろいなぁ、こんなおもろい話があるかいな?」という感じだろうか?

 いや、単に面白いというのではない。正直に言えば、驚き、呆れ、ハラハラ心配させられないでもない。
 喜界島を振り出しに、大阪から片道切符でアメリカへ、所持金も底をついて宣教師の弟子になり全米を渡り歩いたかと思えば、やっとの思いで帰国してからも破天荒な日々。やっと安定したかと思えばパラグアイへ移住して辛酸をなめ、ジャングルで文字通り「泥水をすする」。いい加減日本に帰ったらどうや?と思うのだが、家族ともども旅行者ビザでアメリカへ渡り、石にかじりつくような思いで、「食いついたら離れず」に永住権を得てしまう。
 きっと、誰が聞いたって「やる前に、もう少し考えたらどうなん?」と言いたくなるようなことの連続だ。徳さん自身、親友からは「自分で問題をこさえて自分で困っている」という意味の諫言をもらったと述懐している。

 だが、徳さんは、それ以外に生き方を知らない、とでも言わんばかりに前へ前と進んでいく。諦めることなく、そして常に新しい自分を開拓していく。その勢いが、パワーが、何とも言えず「おもろい」のだ。
 病を得て大工として働けなくなった徳さんは、それでもへこたれず、エッセイを書き始める。気取らず、構えず、嘘もなく、ただただありのままに、自分の言葉で、自らの来し方と日常を綴っていく。空想や絵空事のお説教なんかではなく、地に足をつけた人間の、くらしの実感に根ざした言葉を紡いでいく。その集大成が本書である。だから「おもろい」のだ。

 ぜひ、御一読をお勧めしたい。特に、徳さんよりも若い、私よりも若い人たちに、この本をお薦めしたい。
 何とも先の見えない難儀な昨今の世相に、行く手を阻まれたような気持ちになっている若い人たちも多いだろう。だが、頑張れば何とでもなるし、頑張るしかない。いま頑張っておけば、君たちがオッサン・オバハンになる頃には、また違う世界が拓けているに違いない。
 少年時代、いじめっ子からいじめられっ子に転じて、辛い思いで島を出た徳さんが、自分の力で前へ前へと進んでいく様を、じっくりと読んで、パワーをもらってみてはどうだろうか?

フリムン徳さんの波瀾万丈記
上園田徳市

文芸社 刊
ISBN4-8355-6123-6
1,200円(税別)


「フリムン徳さんの波瀾万丈記」書評 追記:ちょうど、このページをアップした2003年10月26日、南日本新聞の読書欄(15面)に、左のような短い書評が載っていた。無断転載なのだが、ちょっと嬉しかったので。ごめんなさい。(Nov. 3, 2003)