店主のつぶやき 平成以降に、アナログメディアに書いてきた分を収めています。
その他もれてるものも随時補充していきます。
更新は少ないかと思いますが、バックナンバーを読まれた感想などもお寄せください。
2001年は、地元紙・「南海日々新聞」の「リレーエッセー・つむぎ随筆21」に1年間(8回)連載の予定です。

「つむぎ随筆」十二月十九日付け

                        「無能の人」            森本眞一郎 

…ミイイ――ンンン………。

昭和最後のなちぐち(初夏)、沖縄のロマン書房が名瀬で古書展を開いた。
読みたい本がなかった。カマチにきて代表者に一言。
 「ハゲー奄美をナめてない?」
 「アッサ!あんたがしたら?」

あうん(阿吽)の息で、紬のカツギ屋から古本屋へトラバーユした。
高校時代の悪友いわく。
「念が通じたや!」
「…念?」
聞くと、「将来は古本屋に!」と彼にもらしていた。
こわっ!記憶にない。

マンガ家つげ義春の『無能の人』に、「古本屋とか骨董屋とかで最低食って
いければ、そのほうがラクだと思うんですね」とあった。
…ン?古本屋は無自覚者のメシの食い方だったのか?
確かにフーテン時代、古本屋とジャズ屋だけはまめにまわっていた。

さて、動かぬ本たちの背中をみつめて十年一日。
本を読まなくなった。
いつでもそこにあり、読んでも無能の一知半解、ぬがふがぬわからんからだ。

たとえば「あまみ(阿麻彌)人」(六百八十二年)を、「日本国」の「縄文(人)」
・「原日本(人)」・「南(西諸)島(人)」・「琉球弧(人)」・「ヤポネシア(人)」……
という国民国家的な版図でくくられるのだろうか。
列島ビトのカラクリはもっと複雑怪奇なものではないだろうか。

十二月九日の地震で本が散乱した。
整理しながら、床にしきつめられた「奄美」という名のじゅうたん(絨毯)をくるくる
めくってみた。すると、その下から、野生の生き物やケィンムンや「日本人」以前
のうやふじ(先祖)たちが話しかけてきた。

……クリィ!イャーヤ大和ヌ天皇ヌワキャ島ヌ命ヌ象徴チ思ユンニャ?
ナマヌ奄振ヤODA、アッタンタムドォ!鹿児島県ヌ明治ラガヌ独立経済、とから(吐火羅)
トゥ奄美ヤ非県民!…一六〇九年ラガクマヤ大和ヌ植民地…ウンムェヤ那覇ヌ…ナマダ
カ島バ売トゥンヤワキャ島ヌちゅ(人)ンキャ…アッタヤ昔ラガさば捌クリヌ上手アンカナ、タバ
カラランニッシハムィチキリヨォ…マァレブユリヤ育チブ…人間ヤイキ方…シマグチシマウタ
シマヲゥドゥリ…忘リンナヨォ…メンガジャガ、ボックヮ…又クーヨォ…トォトォガナシ……

「民主主義の旗手」で「世界の警察」、アメリカからのクリスマス復帰が今年も君が代の皇国
の島にやってくる。山にはアシャシャ、家にはガジャン。 

…ブウウ――ンンン………。














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