郷土誌5千冊品揃え

あまみ庵、1階部分閉鎖へ

 

「奄美の郷土誌の品揃えなら宇宙一」を誇る奄美市の名瀬末広町の古書店「あまみ庵」が今月で1階店舗を閉める。今後は2階の「メディア利再来ル」と合併し、5月から規模を縮小して営業をスタートする予定だという。

 

店主の森本眞一郎さん(60)は、「自分の読みたい本が島にない」という思いから1989年に「奄美古書センター」をオープン。奄美、琉球関連の歴史や文化、伝承、自然などを取り上げた郷土誌を収集し、現在は郷土資料45千冊(重複除く)を扱う。12階を合わせた総冊数は約6万冊で、店内には郷土誌のほか小説、雑誌、ビジネス書、美術書など幅広い分野の本が所狭しと並べられている。

 

週に12回は同店を訪れるという奄美市名瀬の男性(40)は「(縮小で)本の量が半減するのはさみしい。『あまみ庵』の一番の魅力は森本さんの人柄。今の時代インターネットでも本は買えるが、森本さんがいることが足を運ぶ大きな理由になっている」と話した。

 

規模縮小の理由は、来店者の減少。森本さんは「島外からの大型店進出で人の流れが外に行ってしまった。この店も観光客が増えたが、反対に研究者が減った。市の商店街整備も、ハードだけの整備でソフトが伴わなければ活性化につながらない。商品券も一時的効果はあるが、市民の購買力を高める恒常的な施策を進めてもらいたい」と、中心商店街の課題を指摘した。

 

一方で郷土誌に関しては、鹿児島市の南方新社が奄美関連の郷土誌発行に力を入れるなど、近年は充実してきたという。また奄美群島広域事務組合は現在、薩摩侵攻を含めて古代、中世から近現代まで取り上げた奄美の歴史副読本作りを進めている。

 

森本さんは「20年前は、なかなか奄美について書かれた本がなく、難しい学術書ばかりで、どこに行けば手に入るのかといった情報もなかった。特に奄美の子どもたちにも分かりやすい副読本の作成をずっと呼びかけていたのでひとつの仕事を終えた思い」と語った。

 

一階閉店に伴い、同店では今月末まで一般図書を平常価格より5割引、郷土誌は2割引きで販売。問い合わせは☎0997-54-1611へ。