コラム酒池本林 怪しい店主の近況報告です。


「酒池本林」2000年12月13日記

「奄美I&Uターン者たちの落成・忘年会」

12月10日は、珍しい忘年会だった
奄美大島北部、打田原(うったばる)の裏山の夜明け前
冷涼な杜の空気の固まりがシローのミーヤドリ(新小屋)にはってきた
野鳥や鶏たちがかまびすしい
「なぁ、すかま(朝)だりょっか、ひっく(早く)ふ(起き)りんしょうれ!」

薄い綿布をぐるぐる巻きつけながら俺は寝返りをうった
10畳ほどの円錐の小屋の中央に掘られた地炉では
きぬ(昨日)の宴の燠火がちょろちょろと
ツブした国鶏・二羽分の鍋や皿が転がって
大熊の宝勢丸で買いこんた鰹と鮪(しび)のスえた香が鼻をつく
多くの血と肉と酒をいただいてシン夜まで祭ったのだった

合掌造りの柱が円錐状に十二本
萱葺きの壁は同時に丸い屋根となって連続している
壁と屋根はちょうど魚や俺たちの皮膚のように仕切りなどない
木と草の線と面が織り成すひとつのウチ(内・中・家)空間
制作実費、約10万円!!!

シロー、26歳、四国出身、19歳から旅に出た
きらきらした瞳は少年そのもの
アジア・日本・宇宙をあちこち歩きまわってきたという
今年の夏、トカラの旅で知ったのだが、タダ者ではない

「あちこちで生きるワザを貯金してきた
カネの貯金はなくなるだけだからね
1月から3月までのキビ刈りだけで1年間の生活費は大丈夫
電気や水道などもヒかないつもり
その支払いのためにムダな労働をしたくないし
貴重な時間も費したくないからね」

村人たち(手花部校区)のボランティアで先週、萱を葺いたという
昨日(10日)は村人たちが祝いと忘年会のために朝から陸続と訪れた
50〜60人もだ
中でも、赤いお鼻のタカオ兄(区長)が一番うれしそうだった

「老人ばかりのシマに若者はありがたいちば
シローたちはみんなにとけこんで明るいからいい
婦人会も昨夜の会でみんな(Iターン者たち)を応援することに決めたちば
ここであたらしいシマの文化をいっしょに育んでほしい
シマッチュは実は他人をきびしく見てるのよ
オームかどうかもすぐわかるっちょ
優しくするのは3日間だけよ!ハハ…」

環境ネットワーク奄美の、薗 博明代表
4年前に鹿児島県知事に立候補した、新元博文
「しまがたれ」(年2回)の刊行を続ける、義 富弘
シローをはじめ多くの「奄美Iターン者」を受け入れてきた、藤井勇夫
俺たち5人の奄美Uターン者たちは、(縄文風の)奄美のヤドリ(小屋)
あるいはインディアンのティピィ風ハウスに別れを告げて山を降りた

いのちの種をつないでくれよ
12月の風がナマあたたかい
シマの風土に根ざした暮らしむきと風景もここちいい

三匹の仔ハブも出たという
神々たちは健在だ
電線がないからケンムンも……
奄美に「新ヤチャ坊」の物語が……

E-Mail: amamian@po.synapse.ne.jp

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