芸能

用語解説

出典:沖縄大百科事典 沖縄タイムス社 1983年4月30日

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琉球弧

 九州島から台湾島まで弧状につながる島弧。  琉球列島とほぼ同義に使用されるが、厳密な定義によれば、琉球弧では九州・台湾の二島を含むが一般に琉球列島には含まれない。  南西諸島という行政上の名称と異なり地理・地学上の名称のため、琉球弧には沖縄県の大東諸島は除外される。  地底地形の調査により沖縄舟盆の確認のあとは、琉球弧から地学上では尖閣諸島も除外された。すなわち、琉球海溝と沖縄舟盆とのあいだの、弧上をなして細長く連なる地形的な高まりが琉球弧といえる。  琉球弧は、アリューシャン弧からはじまる太平洋の西縁をふちどるような島弧群(花綵列島)の一つであり、西日本弧とフィリピン弧にはさまれた位置にある.また千島弧・東日本弧・西日本弧・伊豆小笠原弧とならぶ、日本のなかの島弧の一つである.
<目崎茂和>

 もともと地理学上の呼称であるが、1960年代初めに島尾敏夫(小説家)が、文化的・思想的概念を盛り込み、日本見直しの手がかりとして用いる.
 日本の歴史や文化は<倭>中心に画一化されてきたものであり、その裏側には見捨てられてきた東北や琉球弧の歴史、文化がある.
 その意味を正当に位置づけることで、空間の広がりと時間の遡及を深めたヤポネシアへ展開していけるという発想.
 復帰運動の高まりのなかでいっそう強まった奄美・沖縄諸島の中央志向にたいする根底的な反省を促す思想として、この呼称はとくに両地域で大きな刺激となり、個人誌や機関誌の題名にも用いられた.
<川満信一> 出典:沖縄大百科事典 沖縄タイムス社 1983年4月30日

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しまうた

 自分たちのシマの歌というほどの意。  奄美では奄美民謡をさしていうことが多いが、なかでもとくに歌遊びでうたわれる歌をさす。  遊び歌と同義。  八月踊歌や仕事歌をいうことはまずない。  ふつう<島歌>という字があてられるが、<島>は奄美大島・徳之島といった島嶼というより、部落単位の集落をさすといった方が正確であろう。  それほどシマジマによって曲節や味わいに違いがあるということでもある。
[小川学夫]

 沖縄本島では、戦後とくに古典にたいして新民謡などの歌謡を<しまうた>とよんでいる。
 また、八重山地方でかなり以前、沖縄本島の歌謡にたいして、八重山方言で歌う三味線歌謡のことを<しまうた>とよんで区別した。
<池宮正治>
出典:沖縄大百科事典 沖縄タイムス社 1983年4月30日

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八月踊

 奄美大島・加計呂麻島・喜界島の各集落で旧暦8月に踊られる集団舞踊.  かつて旧暦8月は、一年の折目と意識されていた月で、大島・加計呂麻ではミハチガツといって、<アラセツ><シバサシ><ドンガ>とつぎつぎ祭日が続き、喜界島では<シチオンメ><シバサシ><ナンカビ>といった行事がある.  とくに大島での八月踊は、それぞれの祭日の前夜から、3晩にわたって踊られるのがしきたりだったようである.  踊りの形態は大きく二つに分けられ、<ケブリ>とか<家回り>と称して、部落中の家を、豊年感謝の歌である<オボコリ節>を歌いながら一軒一軒回って踊る場合と、部落の<ミヤ>などといわれる広場で終始踊る場合とがあるが、<家回り>をすることは近年きわめて少なくなった.  踊りは、円陣を作り、男女半々に分かれて歌を掛け合いつつ踊るのが一般的な形である.  用いられる楽器は昔から伝わる鼓(チジン)で、踊り手自らが持ち、三味線は用いない.  持ち手は女性と決まっている地域も多い.  踊歌の種類も部落によって違い、多いところは30曲近く、少ないところでも数曲は持ち歌を伝承している.  はじめに踊るのは、土地によって<祝付け><祝おえ><くん殿地><島ぬいび加那志>などといわれる儀礼的なものであるが、曲名は違っていても曲種のうえでは同系統なものであるが、ほかに<赤木名観音堂><でっしょ><今の踊り><ほべなべ><浜千鳥>などが全域的によく知られている.  いつごろ、何を目的に始まったかは不明.徳之島の<夏目踊>とは姉妹芸能である.
<小川学夫>
出典:沖縄大百科事典 沖縄タイムス社 1983年4月30日

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