今月の一押し

[1999.04]

『地方自治 利権と諦めに終止符を』

地方議員と市民の政策研究会編 1998.11.1
四六版 179Page 定価 \1,500(税別)
 ぼく(生物)たちの遺伝子の中には「死の遺伝子」というものも同居していて、その遺伝子が自らの死を決意した時、黄色いボタンのようなところから酵素をだしてその細包は死にいたるのだ、という映像を先日テレビでみた。破滅へまっしぐらのぼくたち人類は、実は地球(宇宙)内に生息する最強の「死の遺伝子」だったのだ。

  「利権の横行する地方政治の担い手たちへの不信、そして諦め。本書は、そのような現状から、地域社会の再生への道筋を探るための一つのテキストである」

 これが本誌のテーマだ。

 序章・「貧困な地方政治の現状」(平井一臣)。一章・「官僚制と地方議会」(五十嵐敬喜)。二章・「情報公開制度」(坂東義男)。三章・「産廃が田舎を襲う」。四章・「地方議会体験記」(続 博治)。終章・「政治の扉を開けよう」(平神純子)。

 いずれも鹿児島県内の講演を編集しただけに読みやすく、「地域と自治体」の理論と実態を知るうえではいい勉強にはなった。同時に、たとえば奄美という地域で、実際に「利権と諦めに終止符を」うつ方法を考えてみた場合、やはりそう簡単にはいかないだろうと思わざるをえない。これは、きっと人類共通の永遠のテーマなのだ。

 行政・議会・住民運動・訴訟・選挙などややこしいことは、あなたまかせでいいとする無責任な金太郎飴の地域社会。ぼくたちの地域社会のメカニズムに組みこまれてきたこの「死の遺伝子」の酵素をおさえて、住民参加型の「生の遺伝子」が活性化するために、シマ島をシステム化していこうという草の根の活動論こそが、本書の最大の問題提起だろう。そこから、それぞれの地域の「民主主義」を脱構築化していくしかないと思う。

 「地方自治は民主主義の小学校」といわれている。結局は、それぞれの小学校で住民ひとりひとりの自治能力の育ち方と、自治体行政をになう首長・職員・議員の民主的な政策力量とが、どれだけ向上するのかが今後の地方分権化社会に問われている、ということなのだろう。地球とぼくたち生き物の存続のためにも。

(本処あまみ庵代表:森本眞一郎)


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