今月の一押し
['96.12]
南島文化叢書16
「琉球の王権と神話」『おもろさうし』の研究
末次 智著 第一書房 3708円
表紙
(目次)
はじめに
T 王権の言語表現
  1. <おもろ>表現の発生と展開
  2. <おもろ>というジャンル
  3. 王と初穂儀礼と創世神話<おもろ>
U 王の即位
V 王の行幸
W 王と水
X 王と太陽
  1. 太陽の王権儀礼
  2. シャーマニズムと<太陽王>
Y 王権と外部
Z 王と天皇
[ 注釈・資料・研究史
  1. 創世神話<おもろ>解釈の問題点
  2. 「あきみよのとまり」考
  3. チェンバレンの『おもろさうし』
  4. 南島神話研究の可能性
あとがき
初出一覧
琉球王権関係研究文献目録
索引
 友(遊)人、智ちゃんは、「DX伏見ミュージック」の前に住んでいるので、頭も薄く、人間も柔らかいのだが、本書の大筋はまるでDXのお客さんのようにすごく硬い。題名からして硬そうな本書の背後には、実はうるわしい琉球弧に寄せる彼の熱いラブラブがホウハイとしているのだ。  「オウ」も「クニ」も持たず、「カミ」と「シマ」いのちに生きてきたワキャ奄美のシマンチュたち。本書は、読み方によっては、「リュウキュウ(オウ)」と「ヤマト(テンノウシン)」という古代国家共同社会の形成をとおして、奄美人が継承している重要な位置をも逆照射してくれているのだ。著者は若い。だから精力的だ。巻末の研究文献目録と人名、事項索引などは琉球弧を視野にいれておきたい方々の基礎資料となっている。あまみ庵に常備したい文献ばっかり。おかげでぼくの目標もできた。  「日本」と「琉球」と「奄美」を三重に相対化し、解体して、いつの日か思いっきり再構築などしてみたい過激なお方にもおススメ!のリキ作です。

(本処あまみ庵代表:森本眞一郎)


(帯より)
 青い海、碧い海、蒼い島々。その南海に君臨した王権の諸相を、琉球古典文学<おもろ>の中にさぐる。大和人としての内なる痛みを胸に俊英がライフワークをここにまとめる。
(本文・「はじめに」より)
 琉球の王権を論じることが、自己の文化と同根の大和王権の相対化につながる、そのような方法を意識し、模索するようになった。南島論やヤポネシア論を身近に感じたのもこのときである。本書では、大和王権への直接の言及は少ないが、とりあえず琉球の王権を論じておきたかったからでもある。よくあるように大和王権研究の一比較資料として琉球をとりあげるのではなく、まず琉球王権を論じ、そこから大和を照らしだしたかった。だから、このような方法(意識)によって書かれた本書は、つたないながらも、わが南島論であり、その中間報告なのである。

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