こんな本入りました!
[1998.11.17]
歌,唄,詩,うた,ウタ,UTA・・

音楽からみた日本人

音楽からみた日本人

歌や音楽の民族と暮らしに息づくすがた

著:小島美子
NHK出版・1997年7月20日発行
新書版・P236・\870

 奄美の民謡は島唄といわれます。唄者(うたしゃ)と呼ばれる歌い手と囃子が一人、それと三味線一竿。実にシンプルですが、他の地方の民謡と異なる点が多々あります。
 まず、裏声を使うこと、短調な曲が多いこと、歌掛けの形式をとる唄が多いことなど、三味線も沖縄と似ていますが、弦と奏法、音階が異なります。

 と、ここまでは高校を卒業して一度島を離れるまで見向きもしなかった島唄について、帰郷してからのほんの2・3年の知識で知ったかぶりしてみました。
 島を離れたものにとって島唄、三味線の音というのは”懐かしい”の一言です。そして今も島唄に興味をもって接するときに、島唄を評価して”懐かしい”唄い方、”懐かしい”三味線の音”という表現をよく聞きます。
 それで、帰郷してみて島唄について当店でいろいろ調べてみましたが、いちばんわかりやすく、お客様にもお薦めしているのが、『琉球弧の民謡入門「しまうた」流れ』(仲宗根幸市、ボーダインク、1995)です。この本ではタイトル通り琉球弧(奄美・沖縄・宮古・八重山)の民謡について解説していて日本の琉球弧以外の民謡との違いがすごくわかりやすいのです。特に最初の全般の文化圏と音楽の文化圏の分布図など、いつも島唄の説明に利用させてもらってます。

 本書はさらに広く日本人にとって音楽とは何か、歴史のなかでどのように変容してきたのかをわかりやすく解説してくれ、奄美の音楽の特性もあちこちに登場します。
 「日本人にリズム感がないのではない、稲作農耕文化では静かな二拍がリズムなのだ」(ちと乱暴な要約かもしれません)というところなどは”なるほど”と思ってしまいました。
 当然ながら歴史をさかのぼっていくと、琉球(奄美を含めて)が日本ではなかった(支配をうけていなかった)時代とその周辺からの影響があるわけですが、読んでいるうちに”日本の・・”という言葉が意味を失っていって、同様に外国と日本との”国”という区切りがなくなり、各地域、琉球が奄美が、東南アジアのある地方が文化圏として明確になっていく感じがします。
 特に後半で、フエ(あえてカタカナになってます)、太鼓、コト(これもカタカナ)の歴史・変遷を解説していますが、そのことを強く感じます。
 今、奄美の島唄でも”昔の島唄らしさがない”とか耳にしますが、何がそうなのか、さらに”日本の・・”とか、”奄美の・・”というのが何なのか、ちょっと考え込んでしまう、そんな本でした。
(mizuma)


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こんな本はいりました![98/11/17]