こんな本入りました!

[2000.07.29]
『とからへ―島へ海と人のなかで@』 
清水哲男・今村治華著
淵上印刷株式会社出版
2000年2月1日発行
320頁・
1238円+税





アマミという地域は経済的には貧しそう(実際マズシイ!の)だが、風土・文化は琉球(沖縄)圏、行政・経済は大和(鹿児島)圏だから両者の波が混在していて、総合的には地球一豊かな島ではないかとボクはソーゾーしている。一極集注の東京や都会にはモノと情報はあふれているが、自然や文化やヒトの幸せや豊かさなどの情緒の世界は計量化できないところにこそ深く潜んでいるからだ。

では、アマミよりもそのマタ間にあるトカラは一番奥深〜い「日本の恥部」ではなかろうか?
そんな素朴な疑問を30年分もかかえて、この五月、ボクは「あこがれの十島航路!」にコワゴワと乗船したのだ…。(「酒池本林」)にて同時掲載中)

「ここには公衆電話はないのですか」「あるわけないだろ。そんなもん」(口之島の温泉センターで)
「生まれたところがいちばんいいから……」(平島のおばあさん)
「刺身なんてそんなに食べたいものですかねぇ。肉や鶏肉なんかの方がぜいたくだとおもうけどなあ」(中之島の若主人)
「なんだ、島でゆっくり、のんびりするために忙しく仕事がんばるんだったら、俺はそうしている。それに俺は好きな仕事をしてるぞ……」(諏訪之瀬島の若者)
「どうせここで生きていくんだから、無理なものを歎いたってしようがないじゃないか。それなりに生きていくしかないんだ。笑うしかないのよ。」(小宝島の女将)

上の引用は本(書)の一部だが、「トカラ」というおクニの雰囲気がすこ〜しわかってもらえるだろうか。そう、ここにはぼくらが忘れてしまった暮らし方や考え方が生きていて、まるで「祖国」…。昔歩いた東南アジアやネパール・印度などにも通じるおおらかヒトのイトナミが波打っていて、ボクはぎっくり腰になってしまったくらい驚いた!!「百聞は一見にしかず」です。

ついでにトカラに関する本を二点ほど。

T・『幻の琉球トカラ列島―異色の紀行集』

   尾竹俊亮著
   まろうど舎・1997年発行
   274頁・2200円+税

「トカラ=この異国的な響きのある地域は鹿児島と奄美に挟まれた島嶼群。トカラは亜熱帯のやすらぎ、琉球を秘める島々だった。」(帯より)
椎名誠氏評――「なんとなくぶっきらぼうな放り投げるような書き方をする人だけれど、なにかこういう書き方が日本の中で、厳密に言えば日本でないようなこうした島の現実をむしろあからさまにしていくようで、ぼくはとても息詰まるような面白さがあった。」(「本の雑誌」1997年.9月号「ゆったりのんびり旅の本」より)


U・『トカラの伝承』

  稲垣尚友著
  私家版300部・1973年発行
  49頁・1800円

著者は東京人だが、1960年代から平良島に棲みついていた。自家製の「ガリ刷り通信」を始め、たくさんの著作があるが、現在はほとんど入手不可。数年前、本人がリヤカーを引きながらボクを訪ねてきて、宿泊したのが縁で、数種類送ってもらった中のひとつ。そのうち、「竹大工・稲垣尚友の世界」で一挙に公開していきたい。まさにプレミア本ばかりです。(お問合せには応じます。)

  

(本処あまみ庵代表:森本眞一郎)


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