そもそも,テトラハイドロバイオプテリンは神経伝達物質であるカテコラミンやセロトニンの脳内での合成を促進することを理由に,自閉症児に対する投与が始められました(文献3).テトラハイドロバイオプテリンは,免疫系における役割も多彩ですが,神経伝達物質や窒素酸化物の合成過程における補因子としての機能を持ち,これとは別に神経伝達物質を直接あるいは間接的に放出させる機能も指摘されており,いろいろな臨床応用が想定されていました(文献4).しかし,自閉症に関する応用については,異論もあり,Etoらは,自閉症児で血液中および尿中のテトラハイドロバイオプテリンに異常がないことを報告し(ネオプテリンとmonapterinは低い),自閉症児への投与に対する疑問を指摘しています(文献5).一方,上記の論文の著者らは,1994年の論文で,自閉症児の髄液を検討し,脳内でのテトラハイドロバイオプテリンの減少を指摘し,本剤による治験の根拠のひとつとしています(文献6).この髄液のデータに関しても反論がありますが(文献7),オープントライアルでの効果は50%で有効と一致しております.
成瀬先生と中根先生も共著者になっているTakesadaらの著書(文献8)での投与量と上記の論文の投与量は同じで,3mg/kg/dayのようですので,中根先生が二重盲検法で「有意な効果はない」と結論した時の投与量と一部同じです(1mg/kg/day群と3mg/kg/day群で検討).二重盲検法での臨床評価法に客観性があったかという疑問も残りますが,自閉症を,テトラハイドロバイオプテリン内服が有効な自閉症と無効な自閉症に分類すべきなのかもしれません.いずれにしましても,テトラハイドロバイオプテリンは異型フェニルアラニン血症の特効薬としては入手できます(ビオプテン)が,日本では自閉症児に対しては投与することができませんので,結論は外国での再検討待ちということになります.