タバコの害(タバコはこんなに恐ろしい!)

  世界中で、喫煙での死亡者が増加しています。WHO(世界保健機関)は警告を発しています。日本では、特に、未成年の喫煙者の増加と健康被害が危ぶまれます。未成年者の喫煙問題のありのままの姿を紹介します。



口内におよぶタバコの害

医療法人市来歯科 理事長 市来英雄
鹿児島大学医学部 公衆衛生非常勤講師


喫煙がもたらす口腔(口内)健康への悪影響

 口の中はタバコの煙が最初に通過する、臓器(ぞうき)の一つです。

タバコの煙が口内の健康におよぼす害、すなわち悪影響は今や国際の歯科学会の分野でも明らかにされ、
タバコの煙などから起きるその症状も数多くあげられています。

喫煙、すなわちタバコを吸うことによって起きる、口内のさまざまな場所におよぶ悪影響として、
死にもつながる口腔がんの発生の危険性の増加のみではなくて、歯周病の発生や、
それの進行の大きな原因の一つになっています。

さらに、その悪影響は不快な口臭の発生源となったり、顔や歯ぐきに現れてくる褐色や黒色の変化や
シミ
(スモーカーズ・メラノーシス症)が発現したり、
タバコの煙に多量に含まれるタ一ルの歯面沈着による口内の不潔、
それの有害物質が舌に着いて味覚の麻痺や鈍麻など発生します。

その他、口内の粘膜や歯、歯の周りの歯周組織への影響、歯が抜けてくる(歯の喪失)、
生命に関わる重篤
(じゅうとく)な疾患(口腔がん)などと、
タバコを吸うことが、口内の健康や、さらに進行した全身の健康への悪影響は実に幅広いのです。


 1 喫煙と関連した口腔内の症状



口腔癌 (口の中に出来るがん。7種類ほどもある)
・白板症 (がんになる前の症状で、粘膜が白く硬くなる)
・ニコチン性口内炎 (ニコチンから起きる口内粘膜の病気)
・歯肉のメラニン色素沈着(歯肉に現れる褐色や黒色のみにくい変化)
・歯周炎
(歯ぐきの下の歯を支える骨の病気。ひどいと歯が抜ける)

・急性壊死性壊瘍性歯肉炎
(歯ぐきが腐る、とてもひどい病気)

・白斑 (色素脱失による白色のまだら模様)
・毛状舌 (舌に、黒い毛髪が生えたような状態になる)
・正中菱形舌炎(ベロの真ん中に特別な炎症が起こり痛くて臭い病気)
・口内創傷治癒の遅延
(口の中の傷や、手術後の治りが遅くなる)

・歯面の着色 (白い歯が、黒いタールで汚れて見苦しくなる)
・口臭 (吐く息が特別に臭くなる。他人から嫌われる)
・味覚、嗅覚の異常 (舌や、鼻の感覚が低下して食物がまずくなる)
・慢性増殖性カンジダ症
(ベロに細菌が住み着き、汚くなり悪臭発生)




喫煙は、歯科治療にも大きな悪影響を起こす


タバコを吸うこと(喫煙)は、歯科医院でする外科(抜歯や歯ぐきの手術など)
外科はしない普通の治療でも、その後の治りにも悪影響をおよぼします。

喫煙者の治療成績はかなり悪い場合が見られます。
そのことによって治療期間が長くなったり治療回数増えたりすることを覚悟しなければなりません。


タバコの煙に含まれているニコチンの作用で、
歯の治療のときの痛みは、吸わない人よりも強力であるということが言われています。


歯科医学はますます発達していますが、
その中の先端歯科医療の、人工の歯を植え込む「インプラント治療」というものがありますが、
この治療はタバコを吸わない人に行われます。
喫煙者は、人工歯根は植わりにくく、また失敗しやすいからです。


口腔ガン

 (口の中に出来るがん。7種類ほどもある)



症例は、56歳の女性の患者さんで、上あごに発生した上顎がん。



症例は、頬部粘膜がん(口内の頬っぺた側の粘膜に発生したがん)


口唇がん 

 56歳の男性。見てのとおり、唇にできた「口唇がん」である。タバコを、いつも右側でくわえて吸っていたので、右側の唇にがんは発生した。


舌癌

舌(ベロ)の右横側に発生したがん。

毛様舌

 (舌に、黒い毛髪が生えたような状態になる) 
ヘビースモーカーでは、舌表面の小さな突起物(舌乳頭)
みにくい毛様の過剰発育を見ることがある








白板症

 (がんになる前の症状で、粘膜が白く硬くなる)

舌に出来た白板症の重症 まだ、がんにはなっていないが、
前がん症状とみなして治療を行う。


  







歯肉のメラニン色素沈着

歯肉に現れる褐色や黒色のみにくい変化

歯ぐきに現れてくる褐色や黒色の変化やシミ
(スモーカーズ・メラノーシス症)

奥歯はすでに抜けている。前歯も継ぎ歯で治療してある。

「タバコを吸えば歯が抜ける」と諸外国では言われている通りである。






全国の、中・高校に掲示された「少年写真新聞」

以下の「保健ニュース」は、以上の写真などを元に作られ、
200758日に全国の中・高校に配布された「少年写真新聞」と、
教諭の手引きとして発行された解説書
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今、子どもたちの口の中に
何が起こっているか

めまぐるしく変化する現代社会の中で生活している子どもたちには、ひと昔前には考えられなかった
さまざまな身体の変調が見られるようになりました。
口の中は、全身を現す鏡そのものです。身体に起こりつつある変調、
つまり病気の兆候をいち早く発見できるのは口の中からです

イギリス・マンチェスター大学のハロルド・ジョンズ教授も、
「ガンや病気の早期発見は口の中から。
つまり、口の中の変化から」と言明しています。
このように、病気の兆候は、以外と口の中に現れることが多いのです。

そのため歯科医師は口の中の異常を発見し、専門の医師に連絡して
病気の進行を軽度に食い止めたという実例が数多くあります。

一方、歯に連なる神経は大脳の最も重要な位置を占めていますので、
口や歯だけを単一のものとして体から切り放して考えることは妥当ではありません。
昔から「口は健康の入り口」と言われているように、口は健康を生み出す源です。
それは命全体、健康な体そのものを育て、健全な精神面も育み、そして守っているのです。
言わば、消化器官の第一関門に立っているのは口であり、歯はその衛兵です。
さて、現代社会の中で生活している小児(ここでは未成年を対象にしています。
アメリカの小児科医では18歳までを小児と呼んでいます)を取り巻く生活習慣の変化は著しく、
それが子供たちの健康に悪影響をも及ぼしているといっても過言ではありません。

日本は、戦争を中心とした困窮時代には乳幼児死亡率が激増しましたし、
そして結核、伝染病、栄養失調症,寄生虫病、皮膚病などで多くの小児が罹患し死亡者も増えました。
しかし、時代の流れと共にそれらが去り、物質社会、贅沢社会の到来と共に、
成人にとっては脳卒中、ガン、高血圧症、糖尿病、心臓病(心筋梗塞や狭心症)などの死亡が
上位を占めるようになってきました。

小児には、成人病への早期罹患、皮膚疾患、眼科や歯科疾病の異常増加、食中毒、
薬物乱用(シンナー、麻薬)
・飲酒や喫煙問題、
精神異常、環境破壊物質などによる暴露などを指摘できます。

そこで、今回は、現代社会生活から惹起されると思える口の中の変化を取り上げ
“今、子どもたちの口の中に何が起こっているか”を多くの症例写真で紹介し、
ここに,子どもたちを取り巻いている,家庭、学校、地域社会の人々に問題提起をしてみたいと思います。

いま,気になる小児の口腔内の変化

現在、私たち歯科関係者が非常に気になっていることが三っほどあります。
それは、清涼飲料水の多飲とタバコ、薬物を乱用から現れた口の中の変化です。
子供たちは裕福になりました。

少数の未成年かもしれませんが、外出しては自動販売機で
飲食物を買って飲み食いしたり、喫煙したり、あるいは薬物乱用して自由奔放に
時間を費やしている現状もうかがえます。
グラフは、小児の清涼飲料水消費の現状です。
私の診療所は繁華街にありますが、近所はカラオケ店が数件開業しています。
周囲には頭を黄色く染めた、あるいは異様な格好の青年や少女たちが多く集まってきます。
さらに夜には、彼らばかりの世界になってしまいます。
地べたに座りこんだり、袋菓子や清涼飲料水を抱えたりして深夜までたむろしています。 
もちろん,見るからに中学生と思える者も多数います。

さて、彼らは、夜間は何を食べているのでしょうか?
スナック菓子類や自動販売機で買った飲料水で腹を膨らまし、
恐らく、栄養になる主食はしっかりとは食べてはいないのではないでしょうか。

「驚きました。客待ちの時間に見ていたら、中学生の彼らも、喫煙はするし、
自動販売機の飲料水をハシゴしながら次々に飲みまくっていますよ。大丈夫でしょうか?」と
タクシーの運転手さんも心配そうに話しをしていました。しっかりとした生活習慣を送れない彼ら,
彼女らはきっと、歯も身体も精神面もボロボロになっているにちがいありのせん。
そこで、清涼飲料水の取り過ぎから生じたと思われる、
あるいは、シンナー中毒者と思える20歳代前の若者の、むし歯が極端に悪化している二つの症例を紹介します。

喫煙シンナーやドリンク剤・清涼飲料水の多飲によるむし歯

 (症例1)16歳の無職少年が、奥歯が痛いということで私の診療所を尋ねてきた。
診察すると、全部の歯が重症のむし歯である。まず、痛みが発生している上の奥歯の鎮痛して応急処置を終えた。
喫煙は、1日30本も吸っているという。診療中は、いつもたばこの異臭と、ときどきシンナーの臭いもしていた。
他日、他の歯の治療もはじめたが長続きせず、とうとう来院しなくなった。
自分でアルバイトして生活していて、親の援助も途切れているという。
これだけ多数ある歯の治療のための治療費も大変なことだっただろう。  

 

(症例2)生活習慣の著しく乱れている18歳男子学生。
多量喫煙、スポーツ・ドリンク剤や清涼飲料水の常用などで
重症のむし歯、重症の歯周病で前歯は抜けるし、歯ぐき(歯肉)の変色が見られた。
診療中,タバコ臭で目が痛かった。

 

 40歳で総入れ歯に
  

15歳からタバコを吸い始め、40歳には1日80本も。
口の中は歯垢で汚れ、生活習慣も著しく乱れていた。精密検査の結果では強度の歯周病のため
グラグラで助けられる歯はなく、ついに、全部の歯を失うことになった

 喫煙で歯周病は悪化、歯ぐき(歯肉)は黒変

WHO(世界保健機関)は1990年代にはタバコが原因で、世界で毎年300万人が死亡すると予測しています。
現在、その予想はずばり的中してしまいました。さらにWHOは30年後の予測、つまり2020年〜30年には、
中国など発展途上国の喫煙者の増加により年間約1千万人に増える恐れがあると発表して世界中に警告しています。
そして、今も“予防可能な最大の疫病”と位置付け、加盟各国が禁煙対策に積極的に取り組むよう勧告しています。
また、5月31日にはWHOが主催する「世界禁煙デー」を制定して啓発に努めています。
しかし、我が国のタバコの消費は一向に衰えを見せていません。


一方、喫煙が原因と推定される我が国に日本での死死亡者の数は
2007年の統計では11万4千人を数え、総死亡数の12%を占めるに至っています。

これは、現在の日本の交通事故死の約14倍を超えたタバコによる死亡者数です。

我が国の、タバコの売れ行きの内容を分析してみますと、成人男性は微増ということで、
さらにその内情を突き詰めてみると、それは若い層の喫煙が増えていることです。
タバコを吸った経験を持つ割合は、高校生で7割、中学生5割、小学生3割と巷でささやかれていますが、
喫煙を止められない、つまりニコチン中毒になっている青少年(未成年や高・中学生)の割合は
さらに増加をたどっている事実もあります。

さらに、女性に、特に若い女性の喫煙が増加しているというのも大きな問題です。
ちなみに、20歳代前後の女性喫煙率は20年間で3倍に増えているという報告もあります。
それは青少年・少女に悪影響を与える我が国だけの野放し広告、彼ら、彼女らが手っ取り早く買える自動販売機の横行、
生徒の模範になるべき学校教師の喫煙、喫煙防止教育の不徹底などがその悪の根源を育てていると言っても過言ではありません。

 鹿児島市中央地区と奄美大島地区に属する小学5,6年生の喫煙の実態を、
養護教諭の協力を得てアンケート調査の分析がなされました。両地区もほとんど同じような結果が出て、

約20%近くの児童生徒がタバコを一度でも吸ったことがあると答えていることがわかりました。
吸い始めたのはいつ頃か?の質問に対して、早い生徒で1年生が約4%、3年生が約3%もいました。

そのきっかけは、5年生は「何となく」、6年生は「好奇心から」が最多でした。
驚くことに、6年生では「親がすすめたので」と4位を占めています。
              タバコを吸っていることを知っている親は約半数いましたが、そのうち注意した親は半数にも満たなかったのです。           タバコの害について知っているかの質問では、肺がんになるの解答が俄然多くありました。
しかし20%近くの生徒が知らないと答えていました。
家族の喫煙者では父親が約60%、母親が約15%、兄が11%であり、
それを見ていてどう思うかの質問には種々雑多の感想がありましたが,
その内、「健康に悪いので止めて欲しい」、「長生きできない」、「自分も苦しい」、「気分が悪くなる」、「迷惑だ」などの答えが多かった

一方、「なんとも思わない」が約5%もありました。
しかも「魔法みたい、ある意味で尊敬する」、「早く吸いたい」、「私も大人になったら吸うのかな…」というような答えもありました。

このような現状の中で、タバコによる口の中の害は、歯周病と歯ぐきの黒変や着色が上げられます。
これらの現象は、低年齢にも見られるようになりました。

 
なぜ歯ぐきが汚く変色するのか?
その原因と作用機序は、研究によると以下のようなことがわかってきています。
  喫煙は、皮膚や粘膜にタール分やメラニン色素を呼び、それらを沈着しやすくする。
また、自分の体や歯肉を清潔で健康に保とうとする浄化機能が失われてきたため色素が溜まり、
また自浄機能の減退による歯肉への色素の沈着が促進される。
タバコに含まれているニコチンや一酸化炭素(CO)の作用で、ニコチンでは末梢血管が収縮され、

歯周組織の血流を悪くし、その血流阻害のため不純物や色素も沈着する。
一酸化炭素(CO)は、本来のヘモグロビンの酸素供給能力を奪い、歯周組織の活性化を阻害し、
害毒物質の排除も阻害する。そのため、歯周病の回復に必要な組織再生細胞の働きや新生を妨げるから。
タバコ1本につきビタミンCが25mgも破壊される。そのため、血中のビタミンCの濃度が低くなるに従って、

皮膚や粘膜の細胞の新生や回復を阻害したり、細菌感染を起こしやすくする。

   1)22歳の女性会社員 
18歳から喫煙を始めて、現在25本を常用している。

起床後30分以内にタバコに手を出す。起床後30分以内にタバコが欲しくなるということは
ニコチン中毒症状の特徴だし、断煙が難しい。特に下顎に黒変が広がってきている。


 2)女子大学生
歯周病の発生と歯肉部が黒変している。 
患者さんはやがて学校の先生になる21歳の国立大学教養学部女子学生。

17歳の時から喫煙を始めて、本数が増えていった。
少しずつ減らしているが、現在1日に20本。起床時すぐにタバコを吸ってしまう。
何回も断煙を試みたが失敗している。歯肉部の黒変は指摘されるまで気付かなかった。


 3)19歳会社員女性
15歳から吸い始めた。1日20本喫煙。奥歯にもむし歯も多く、

歯垢がいっぱいでブラッシング(歯垢清掃)が悪し,歯周病も進行している。
歯ぐき全般にわたって黒変が始まっている。



4)29歳主婦

 喫煙を始めてから10数年も経過しているという。1日本数は15本位という。
以外にも、本人は歯肉の黒変には気付いていなかった。
ショックですぐに断煙を試みている。


5)親が喫煙している家庭の、児童の歯肉の黒変(清水央雄歯科医提供)

北海道かもめ歯科の清水央雄院長は、幼稚園児、小学校低学年生への歯肉着色の調査で、
両親の喫煙により、受動喫煙を受けた小児に、はっきりとした歯肉着色のあることを究明しました。
1:能動喫煙と歯肉の着色
かもめ歯科の、来院患者のうち19歳〜35歳の調
喫煙者で歯肉着色の認められる率 98.1%
非喫煙者で歯肉着色が認められる率 11.9%

2:受動喫煙と歯肉の着色
清水院長が園医をしている幼稚園園児と、校医をしている小学校低学年での調査
両親とも非喫煙者で歯肉着色の認められる率 17.4%
片親または両親が喫煙者で歯肉着色の認められる率 79.0%

      1.小学校低学年の黒変してきた歯肉   


  2.小学高学年の黒変してきている歯肉 


親からたばこの煙を吸わされている子どもには虫歯が多くなる

 C. Andrew Aligne, MD, MPH; Mark E. Moss, DDS, PhD; Peggy Auinger, MS; Michael Weitzman, MD
                   :JAMA. 2003; 289: 1258-1264

 親や、他人からたばこの煙(副流煙・受動喫煙)を無意識に吸わされている子どもは、
むし歯になる確率が高いことがアメリカの歯科医師を中心とした専門家の研究で明らかにされました。
 この論文は米学会誌に発表したもので、米ニューヨーク州ロチェスター大学児童健康研究センターの研究チームが行ったものです。

研究は、4〜11歳の子ども3531人を対象に調査を行ったところ、副流煙を遮断すると、
約4分の1の子どもの乳歯に虫歯の発生が見られなかったことが確認されたからです。
 副流煙を吸わされる環境にある子どもは、たばこに含まれるニコチンの副産物であるコチニンというものが血の中でさらに濃くなるからです。
研究チームの関係者によると、これによって乳歯が虫歯になる危険性はほぼ2倍以上に増しているのだといいます。
 この結果から、そうなると、副流煙が感染への抵抗力を阻害し、子どもが虫歯の原因となる細菌に犯されやすくなるものとみられているからです。
 この他に副流煙は、風邪や中耳炎など幅広い病気を引き起こす可能性も指摘されています。

 (シカゴ発 ロイター通信は、このニュースを2003年3月11日にニュースとして世界中に流しました)


おわりに

      最初に説明したように、口の中は、全身を現す鏡そのもので、身体に起こりつつある変調、
つまり病気の兆候をいち早く発見できるということです。
          喫煙、薬物乱用、スポーツ・ドリンク剤や清涼飲料水の多飲などにより,以上に紹介した症例のように、         小児の、口の中の変化が現れてきているということは,平行して全身の健康にも非常に大きな影響が
       現れているのだということが想像できますし、さらにこれ以上の最悪な事態も考えられます。 
喫煙が及ぼした口腔内粘膜の、つまり歯肉の変色や黒変や歯周病の進行一つの例を取ってみても、

恐らく肺臓では、歯肉以上の病変が起きたり,タバコに含まれているタールが肺胞いっぱいに蓄積された上に
“タバコ病”の病状が静かに進行しているものと思われます。
また、喫煙は,老化現象が早まり、女性では10〜20歳早く年を取り、
顔のしわやシミも早期に出現するというデータもあります。
恐らく、その他の臓器でも、一生涯を左右する遺伝子にも最悪の事態が起きているかもしれません。

今年、4月6日には、アメリカのカリフォルニア大学のジョン・ウィンスキー助教授は

米国立がん研究所ジャーナルに、「10代で喫煙を始めると,後に禁煙しても肺がんの要因になるDNAの損傷が消えず、
そして残りやく、喫煙を経験しなかった小児に比べて4〜5倍も損傷が多い」と発表したばかりです。

24歳の喫煙を長年続けてきた若者男性

この症例は、私が、昭和42年に、鹿児島大学病院の口腔外科に勤務しているときに、
自分で実際撮影したものです。患者さんは、24歳の喫煙を長年続けてきた若者男性で、
上の奥歯に扁平上皮ガンが発生していました。奥歯は、増殖するガン細胞で隠されていますが、
前の小臼歯2はガン細胞に押されて位置が著しくずれています。
ガンの進行は若年者ほど早いですので、ガン細胞は増殖を続け口の中をふさいでしまったり、
他にも転移してしまったりして2年後には死亡されてしまいました。
タバコに手を出してしまったばかりに、この青年の死は早まりました。


56歳の働き盛りの男性

                 この症例は、同じく鹿児島大学病院の口腔外科で撮影したものです。
             患者さんは、56歳の働き盛りの男性でした。見てのとおり、唇にできた口唇ガンです。
                   タバコを、いつも左側でくわえて吸っていたので、左側の唇にガンは発生しました。
             口の中にも下顎ガンができていて、最善の治療がなされ下顎と唇は切除されたり、
                ガン細胞撲滅の療法がなされたり、治療が続けられましたが、
              結局3年後には他の臓器にもガンの転移が見つかり、まもなく死亡されてしまいました。
                                       家族5人を残して

 
 小児が、喫煙者の近くにいることで損害を受ける「間接喫煙」ということもあります。
小児の喫煙問題は、三者連携(学校・家庭・地域社会)の力で早急に解決されなければなりません。

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